第6話

1冊のノート
70
2020/08/30 01:53
家に帰ってきて棗の部屋に入る
ほとんど使われてない教科書
ほとんど書かれていない授業ノート
おもむろに机の引き出しを開ける
そこにまた別のノート
叶人
なんだ...
1ページ開くと
なおったらやりたいこと
そうひらがなで書いていた
読んでいくと
水族館に行きたい
動物園に行きたい
学校にちゃんといきたい
友達たくさんつくりたい
お兄ちゃんと普通のお話したい
みんなをやさしいみんなにもどしたい
次のページをめくると
ぼくのせいでお母さんお父さんお兄ちゃんは怒りっぽくなっちゃった。こんなに僕だから嫌われちゃった。お兄ちゃんの将来も潰しちゃった。死ぬのが怖い。死にたくない。
次のページには
お母さんが僕に保険をかけた。それでお母さんの手助けになるなら僕は構わない。でも、もう1回お母さんから好きって言われたい
まためくると
お父さんがあまり帰ってこなくなった。ぼくの治療費を稼ぐ為。お父さんに直接言われた、お荷物って早く消えてと。またお父さんと公園で遊びたい。はしゃぎたい
次のページには
お兄ちゃんがぼくのせいで塾に行けなくなった。ごめんなさいって言いたくても、お兄ちゃんがぼくの事を避ける、無視する。沢山話しかけたから嫌いって言われちゃった。もう1回お兄ちゃんと普通のお話したい、一緒にお勉強したい。
またページをめくる
みんなと、食べるご飯が違う。みんなはチキンカレーだけど僕は野菜カレー味がしないみんなと同じものが食べたい。僕もお話に入れて欲しい。
次のページには
また皆でたくさん笑いたい。遊びたい。僕は大好きなのに皆ぼくのこと嫌う。みんな僕のこと無視するよ。辛いよ。悲しいよ。
またページをめくる
余命宣告された。もう、学校に行けない。高校生になれない。僕が早く死ねば、お母さんもお父さんもお兄ちゃんも楽になるかな。なら、早く死にたい
次のページには
明日、朝イチで病院に入院する。このノートとはバイバイ。この部屋からもバイバイ。戻って来ることは絶対にない。辛い思いするよりいいのかも。体調がすごく悪い。
叶人
まだ、何か次のページに
ペラッ
大好きな家族へ
ここまで、育ててくれてありがとう。会うことももうないと思う。これを見てくれるとは限らないと思う。でも、ぼくの全部を書くね。
小学1年生の時に倒れて不治の病だってわかってみんな泣いてくれたよね。でも、だんだん皆が僕に向けてくれてた好きは嫌いになって、僕達は家族なのにだんだん距離が遠くなったよね。
お母さんには、早く死んでとか嫌いとかお兄ちゃんは僕の事無視したり暴言言ってきたり、お父さんは消えてとかお荷物とか言われたりして辛かった。治療法もなくて手当り次第やるしかない僕はとても辛かったなのに、そんな事言われて苦しくて寂しくて、学校でいじめられてることも言えなくて、いつも思ってたんだ。僕はなんで生まれてきたんだろうって僕さえいなければお母さんもお父さんもお兄ちゃんも何も悩まずに楽しく暮らせてたのにって、工藤さんにも沢山迷惑かけて自分が嫌になって死にたいって考えるようになってた。
もし、僕の夢が叶うなら、また、大好きって言われたい。抱きしめてもらいたい。また、一緒に笑いたい。
皆から笑顔を取ってごめんなさい。迷惑かけてごめんなさい。我儘言ってごめんなさい。辛くさせてごめんなさい。幸せ奪ってごめんなさい。悩ませてごめんなさい。
でも、ありがとう。
僕知ってるよ、好きでいてくれた頃お母さんが僕が寝た後に沢山泣いてた事、僕の病気について探してくれてた事。
お父さんも、僕が十分に治療が出来るように沢山働いてくれてたこと、色んなお医者さんのところに行ってお話をしてた事。
お兄ちゃんは僕が体調が悪い時救急車を呼んでくれたり僕の為に悩んでくれたりしてた事。
ありがとう。本当にありがとう。
ここまで育ててくれて。
また、一緒に美味しいご飯食べて、沢山話して、お出かけして笑えたらいいな。
1人、孤独に死んじゃうのは怖いな。でも、僕が居なくなることで、皆が幸せになるなら、怖くないかも。
でもね、たまには僕が居たってこと思い出して欲しい。ひとりぼっちは寂しくて辛くて苦しいから。嫌な思い出でもいい。みんなの中に僕がいればいいから。
最後に、今までありがとう。
死んでも大好きです。
叶人
あぁッ!
叶人
ごめんっ...棗ごめんっ!
お母さん
ちょっと叶人何してるの?
叶人
ああぁぁッ!
お母さん
なんで泣いてるの?
叶人
棗ッ...棗ぇッ
お母さんがノートに目を向ける
気になったのか手に持って読む
読み終わったのかてからノートを落とす
お母さん
棗ッ...
お母さん
ごめんッなさいっ...!
お母さんと泣きじゃくった

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