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第1話

プロローグ
1,220
2022/11/09 16:14
あなた
松野先生、失礼します
コンコン、と扉をノック、少し待っては
「どうぞ」と聞きなれた声
一松先生
一松先生
また来たんだね、あなた
コーヒーを片手ににんまりと笑う
松野先生、「どんだけ転べば気が済むの?」
と軽々しく笑われた
一松先生
一松先生
…あ、もしかして、俺に会うために
わざと怪我してる、とか?
あなた
ありえないです現実見て下さい
「相変わらずお堅いこと」と立ち上がっては
絆創膏を取り出す松野先生を見つめ
目が合えば「ファンサだ」と手を振られる
一松先生
一松先生
ほら、じゃあ怪我したとこ見せて
あなた
…はい
椅子に腰掛ければ怪我した右足を差し出す
膝がじくじくと傷んでは
しゃがんだ松野先生の消毒液をかけた
ガーゼが当てられ少し顔を歪めた
一松先生
一松先生
ヒヒッ…この角度から見ると……
興奮するね
あなた
傷者にかける言葉じゃないです
「ありえない」とそっぽを向くと
「そんな怒るなって、あ、生理?」
なんて。デリカシーの欠片も無い
一松先生
一松先生
…ほら出来た
ぱ、と立ち上がる松野先生
ご丁寧に絆創膏の真ん中に
ねこちゃんが描かれてた
あなた
…かわいい
一松先生
一松先生
怪我が治るように、おまじないだよ
満足気に笑う松野先生は、
こういう時、ちゃんと先生をしてくれる
あなた
…じゃ、私戻るので
一松先生
一松先生
あ、あなた
あなた
はい?何でしょう
突然のことに振り返る
長話に捕まらないといいのだけど
一松先生
一松先生
放課後、付き合ってよ
あなた
放課後…ですか
「やましいことじゃなければ、全然」と
答えては、扉を開けた
一松先生
一松先生
しないしない、………多分
閉まる直前になにか聞こえた気がしたけど
気の所為ということにしとこうか。
あなた
…さて、早く行かないと

小走りに廊下を進んだ、授業中のこと。

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