第18話

土曜日、恋の続きは。②
2,107
2022/09/20 23:00
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(今、何時だろう)
待ち合わせは、朝10時。
でも、きっとまだ、時間には程遠いはず。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(だって、まだ好きだから)
私は駅までの道を急ぎながら、そんなことを考えていた。
土曜日の駅は、平日とはだいぶ雰囲気が違う。
制服やスーツ姿の代わりに、
子ども連れの家族や、私服同士のグループなどが目立って見える。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(岩下さん……)
キョロキョロと辺りを見渡す。
もしかしてと思い、いつも待ち合わせをしていた駅のホームへ向かった。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
あ……
時が止まったような気がした。
見慣れたベンチに、私服の岩下さんがいた。
慌てて、柱の陰に隠れる。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(……なんで?)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(ドキドキする……)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(まだ、好きな気持ちが消えない)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(こんな気持ち、ニセモノのくせに)
口を両手で押さえる。
こうでもしていないと、心臓が口から飛び出してしまいそう。
一日会わなかっただけなのに、ずっと離れていたような気持ちになる。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(会いたかった)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(ずっと、会いたかった)
どれだけそうしていただろう。
ずっと同じ場所に立っていて、足の底が痛い。
駅の時計が目に入る。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(10時5分……?)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(あれ?)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(とっくに、時間切れ……?)
岩下亮平
岩下亮平
ゆまちゃん?
フッと、目の前に影が出来る。
岩下亮平
岩下亮平
やっぱり、ゆまちゃんだ
岩下亮平
岩下亮平
来てくれたんだ
野々宮ゆま
野々宮ゆま
岩下さん……?
ベンチに座っていたはずの岩下さんが、いつの間にか目の前にいた。
岩下亮平
岩下亮平
あっちから、前にゆまちゃんが着てたワンピースと似た服が見えたから
野々宮ゆま
野々宮ゆま
えっ……
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(前に着てたワンピース?)
確かに、今日選んだワンピースは、以前から持っていたもので、一番のお気に入り。
休日に出かける時にも、何度か着ている。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(でも、岩下さんとは制服でしか……)
岩下亮平
岩下亮平
ごめん。強引に誘ったりして
岩下亮平
岩下亮平
フラれたのに、諦め悪いよな
岩下亮平
岩下亮平
今日は、何時間でも待つつもりでいたんだけど、来てくれてありがとう
野々宮ゆま
野々宮ゆま
そんな、あ……謝るのは、私の方で
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(ダメだ、諦めよう)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(好きな気持ちが消えるなんて、きっと無理なんだ)
顔を見たら、声を聞いたら、それだけで気持ちが全て奪われてしまう。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
ごめんなさい……、わたし……、岩下さんに話してないことがあるんです……
心臓の音が、大きくなる。
『お兄ちゃんが作った惚れ薬で、あなたを好きになりました』
……こんなことを明かしたら、どう思うだろう。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(呆れられる?)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(……嫌われる?)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
実は……
岩下亮平
岩下亮平
それって、ゆまちゃんが博司の作った惚れ薬を飲んだってこと?
野々宮ゆま
野々宮ゆま
え……?
打ち明けるはずだったことを先回りされ、言葉を失う。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
どうして……
岩下さんは苦笑いをして、申し訳なさそうに私を見た。
岩下亮平
岩下亮平
ごめん、知ってたんだ。最初から

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