翌日、ボーッとする体をベッドから起こして、窓から射し込む眩しい朝日に目をやった。
強い光に、目を細める。
一睡もしていない。
昨日、岩下さんからは何度も連絡があった。
『迷惑だったらごめん』
『話だけでも出来ない?』
『せめて、理由を教えてほしい』
そして、最後には着信が。
もちろん、出ることは出来なかったけど。
通知音が鳴るたびにビクついて、スマホを遠くに置いたりして。
だけど……。
突然告白をして、突然別れを告げて、自分勝手な私を責めることもなく。
胸が、ぎゅっと締め付けられるように痛い。
涙声で呟いて、目を閉じる。
まぶたの裏に浮かぶのは、やっぱり彼の笑顔だった。
*
さっさと制服に着替えて、いつもより一時間以上も早くリビングへ降りていくと、
ポットに水を入れていたママが、驚きで焦った声を上げた。
朝ごはんの準備を始めたばかりのようだ。
ママに、手にフルーツケーキをひとつ握らされる。
個包装されていて、スーパーのお菓子コーナーで買えるもの。
苦笑いで受け取り、かばんに入れる。
だけど食欲がなくて、それは結局しまいこまれたままになった。
*
早朝の電車は、不思議なほどに空いていて、すんなり座席に座ることができた。
眠っていないせいか、ボーッとする。
明日の今頃には、こんな気持ちも消える。
好きじゃなくなる。
明日の私は、恋をしていない。
その事実に、また涙が出そうになった。
ここにいるはずもないあなたを、探してしまった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。