岩下さんが真実を話し始めてから、私はずっと、開いた口が塞がらなかった。
まず、兄が私に“惚れ薬”だと言って飲ませたのは、コンビニでも普通に買える栄養ドリンクだったこと。
胸がドキドキしたり顔が熱かったのは、飲み慣れない栄養ドリンクに含まれていたカフェインの影響らしい。
岩下さんをターゲットとして選んだのは、以前から私を好きだったことがわかり、
さらに、私に変なことはしないだろう、と信用できる友達だったから。
……らしい。
(ほんっとうに、あのバカ兄!)
(ろくなことしないな! 知ってたけど!)
ゆまちゃんは騙されやすいから、惚れ薬だって嘘をついても、すぐにその気になって暗示にかかる。……って、博司が言ってたよ
岩下さんは、申し訳なさそうに目を逸らして言う。
だっ、騙されやすい……!?
うん。小さな頃から、博司の発明品はインチキだって分かってても、結局は上手く丸め込まれて実験台になってくれるから、って
(あいつー!!)
ただ、それについては、ぐうの音も出ない。
確かに、お兄ちゃんの発明なんか全部失敗するって思っていたのに、今までずっと実験台になっていた。
ご……ごめんなさい。岩下さんまで、お兄ちゃんの実験台になっちゃって
いや、それについては、俺も同罪だよ。知ってて、ずっと黙ってたんだ
今日だって、博司がゆまちゃんに言ったニセモノの惚れ薬の期限だって分かってて、デートに誘ったんだ
この五日間で、本当の意味で俺を好きになっててくれれば、来てくれるかもしれないって思ったから
本当に、ごめん
人の気持ちを……、それも、ずっと好きだった女の子の気持ちを試すようなことをして、最低だったと思ってる
岩下さんが、深く頭を下げる。
……
元はと言えば、お兄ちゃんのせいだし。
だけど、巻き込まれたとはいえ、知っていて黙っていた岩下さんも、ひどいとは思う。
(でも、私、ホッとしてる……)
(私の気持ちは、作られたものじゃなかった……)
岩下さん
え?
私のことを、前から好きでいてくれたって、さっき……
ああ、……うん
好きだよ、ゆまちゃん
俺はずっと、ゆまちゃんを見てた
初めて正面から告げられた、好きな人からの告白に、顔が熱くなる。
これはもう、薬の力なんかじゃない。
ど、どうしてですか? 私は、同じ電車に乗っていただけで
違うよ
それだけじゃない
ゆまちゃんは、俺を……、俺たちを助けてくれたんだ
俺……“たち”?
そう
ゆまちゃんは、もう覚えていないかもしれないけど
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