岩下さんが真実を話し始めてから、私はずっと、開いた口が塞がらなかった。
まず、兄が私に“惚れ薬”だと言って飲ませたのは、コンビニでも普通に買える栄養ドリンクだったこと。
胸がドキドキしたり顔が熱かったのは、飲み慣れない栄養ドリンクに含まれていたカフェインの影響らしい。
岩下さんをターゲットとして選んだのは、以前から私を好きだったことがわかり、
さらに、私に変なことはしないだろう、と信用できる友達だったから。
……らしい。
岩下さんは、申し訳なさそうに目を逸らして言う。
ただ、それについては、ぐうの音も出ない。
確かに、お兄ちゃんの発明なんか全部失敗するって思っていたのに、今までずっと実験台になっていた。
岩下さんが、深く頭を下げる。
元はと言えば、お兄ちゃんのせいだし。
だけど、巻き込まれたとはいえ、知っていて黙っていた岩下さんも、ひどいとは思う。
初めて正面から告げられた、好きな人からの告白に、顔が熱くなる。
これはもう、薬の力なんかじゃない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。