第17話

土曜日、恋の続きは。
2,131
2022/09/13 23:00
学校が終わって、岩下さんに会わないように、帰りも電車の時間を二時間も遅らせた。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(こんな気持ちも、あと少し……)
ドッと疲れて、家の玄関を開ける。
野々宮博司
野々宮博司
遅かったな、ゆま
野々宮ゆま
野々宮ゆま
野々宮ゆま
野々宮ゆま
なに、ずっとそこにいたの?
野々宮博司
野々宮博司
帰りが遅い妹を、心配するのは当然だろ
野々宮ゆま
野々宮ゆま
お兄ちゃんは、そういう優しいお兄ちゃんじゃないじゃん……
野々宮博司
野々宮博司
そう思いたいなら、それでもいいけど
野々宮ゆま
野々宮ゆま
……?
野々宮博司
野々宮博司
お前、亮平になんかされたのか?
野々宮ゆま
野々宮ゆま
!!
野々宮ゆま
野々宮ゆま
い、岩下さんに、何か言われたの?
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(まさか、別れたこととか、メッセージを無視してることとか……!?)
野々宮博司
野々宮博司
いや、何も
野々宮博司
野々宮博司
お前が最近ひどい態度なのは、どうせ亮平が原因だろうと思って
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(なんだ……)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
だから、全部お兄ちゃんのせいだって言ってるでしょ
野々宮博司
野々宮博司
人のせいにしたいなら、それでもいいけどな
野々宮ゆま
野々宮ゆま
……
本当は、自分でも薄々感じている。
お兄ちゃんの薬は、ただのきっかけでしかなくて。
……あとは、私の問題だってことを。
答えずに、部屋に向かおうと、階段に片足を乗せる。
野々宮博司
野々宮博司
明日だな、効き目が切れるのは
野々宮ゆま
野々宮ゆま
っ!!
野々宮ゆま
野々宮ゆま
……もう、放っておいて
前日に眠れなかったこともあって、この日は気絶するようにすぐに眠りに落ちた。
そして、朝がきて……──
野々宮ゆま
野々宮ゆま
……
野々宮ゆま
野々宮ゆま
……あれ?
寝ぼけまなこで、声を漏らす。
スマホで見る時刻は、朝の七時。
おかしい。
薬の効き目が、少しも弱くなっていない。
私は今も、岩下さんが好き。
兄に薬を飲まされたのは、確か朝の九時くらい。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(あと、二時間?)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(時間が来れば、ぷっつりと効果が切れるの?)
スマホのメッセージアプリを開く。
昨日から何度も見返している、岩下さんからのメッセージ。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(今日の10時に……待ち合わせ)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(その時間には、もう……)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(でも)
私はベッドからおりて、クローゼットを開けた。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(こんなことなら、可愛い服を新しく買っておけばよかった)
色んな服を何度も見ては、クローゼットにしまう。
頭の中にはずっと、岩下さんの笑顔が浮かんで、消えてくれそうにない。
この気持ちが、なくなるなんて思えない。
野々宮博司
野々宮博司
ゆま、どこか行くのか?
自室から階段をおりている途中、階段を上がる兄と鉢合わせた。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
……デート
めずらしく驚いた顔が、私を見た。
野々宮博司
野々宮博司
へぇ。頑張ってこいよ
野々宮博司
野々宮博司
惚れ薬、追加分いるか?
野々宮ゆま
野々宮ゆま
いらないよ
野々宮ゆま
野々宮ゆま
そんなのなくたって、大丈夫だから
野々宮博司
野々宮博司
そうだよな。お前は俺の妹だから、俺の発明品が成功するなんて、本気で思ってたわけじゃないだろうし
野々宮ゆま
野々宮ゆま
野々宮ゆま
野々宮ゆま
なに笑ってんの
野々宮博司
野々宮博司
別に
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(なんか、全部知ってますって顔で、ムカつくなぁ)
すれ違って、階段をかけ下りる。
野々宮博司
野々宮博司
ゆま
野々宮ゆま
野々宮ゆま
なに?
振り向くと、片手を上げた後ろ姿が目に入った。
野々宮博司
野々宮博司
頑張ってこいよ
野々宮ゆま
野々宮ゆま
お兄ちゃんに言われたくない

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