体が重い。
腕が痛い。
目の前の美香が、笑いながら私の頬を指でツンッと突く。
美香の制服のポケットから、軽快な電子音が鳴り響く。
小言を言いながら、美香は慌ててスマホを取り出した。
スマホの向こう側の人物は、聞かなくても分かる。
困ったような表情を浮かべながらも、美香は嬉しさを隠しきれていない。
ピッという、通話の終了を告げるタップ音が聞こえた。
そうやって悪態をつきながらも、美香の口元は緩んでいる。
目の前で、美香が驚いている。
頬を温かいものが伝って、あごから机にポタッと落ちた。
美香に手を引かれ、飛び出すようにふたりで教室を出た。
*
屋上に続く階段にふたりで座って、私は美香からハンカチを受け取った。
ピンポイントな話題に、肩がビクッと震える。
チャイムはとっくに鳴り終わって、どこの教室でもホームルームが始まっているらしい。
制服のポケットが震える。
スマホに、メッセージが受信された。
送り主を見て、スマホを落としそうになる。
また、返せないメッセージが増えてしまった。
止まったはずだった涙があふれる。
美香が、私の手からハンカチを抜き取って、目元に当ててくれる。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。