第15話

金曜日、消えない想い。②
2,119
2022/08/30 23:00
美香
美香
ゆま
美香
美香
ゆーまっ
野々宮ゆま
野々宮ゆま
ん……
美香
美香
起きないと、朝のホームルームはじまっちゃうよ?
野々宮ゆま
野々宮ゆま
……え?
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(ホームルーム?)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(って、まるで学校にいるみたいな……)
美香
美香
あ、起きた
美香
美香
おはよう
野々宮ゆま
野々宮ゆま
美香……?
体が重い。
腕が痛い。
美香
美香
ふふっ。やだ、ゆま、顔に服のシワのあと付いちゃってる
野々宮ゆま
野々宮ゆま
服……?
目の前の美香が、笑いながら私の頬を指でツンッと突く。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(あ、思い出した……)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(朝早く教室に入って、誰もいなくて、腕を枕にして眠っちゃってたんだった)
美香の制服のポケットから、軽快な電子音が鳴り響く。
美香
美香
わっ、もう、学校にいる時は電話しないでって言ってるのにー!
小言を言いながら、美香は慌ててスマホを取り出した。
美香
美香
もしもし? もう、そろそろホームルームはじまっちゃうんだからね
美香
美香
え? 昨日? あ、本当に?
美香
美香
あー、もう、ごめん。大事にしてるってば
美香
美香
だから、感謝してるよ。ありがとう。もー、ごめんって
野々宮ゆま
野々宮ゆま
……
スマホの向こう側の人物は、聞かなくても分かる。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(他校にいる彼氏だ……)
困ったような表情を浮かべながらも、美香は嬉しさを隠しきれていない。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(いいな……)
ピッという、通話の終了を告げるタップ音が聞こえた。
美香
美香
ごめんね、ゆま
野々宮ゆま
野々宮ゆま
彼氏?
美香
美香
うん、そう
美香
美香
昨日、家に遊びに行った時、「ペアで買った指輪忘れてっただろ」って
美香
美香
あいつ、「落としたことも気づかないとか、愛が足りないからだー」って、うざくて
そうやって悪態をつきながらも、美香の口元はゆるんでいる。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(ちゃんと好き同士の関係だ……)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(私たちとは違う)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(作られた“好き”じゃないんだ)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(いいな)
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(私も、岩下さんとそんな関係になりたかった)
美香
美香
えっ、ゆま!?
野々宮ゆま
野々宮ゆま
え……?
目の前で、美香が驚いている。
頬を温かいものが伝って、あごから机にポタッと落ちた。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(……涙?)
美香
美香
ちょ、ちょっとこっち!
美香に手を引かれ、飛び出すようにふたりで教室を出た。
美香
美香
びっくりした……。大丈夫?
野々宮ゆま
野々宮ゆま
うん、ごめんね
屋上に続く階段にふたりで座って、私は美香からハンカチを受け取った。
美香
美香
どうしたの? 最近、ゆまちょっと変だよ
美香
美香
出来たばっかりの彼氏と、五日で別れるとか言ったりさ、意味分かんないよ
野々宮ゆま
野々宮ゆま
っ……
ピンポイントな話題に、肩がビクッと震える。
チャイムはとっくに鳴り終わって、どこの教室でもホームルームが始まっているらしい。
制服のポケットが震える。
スマホに、メッセージが受信された。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
っ!!
送り主を見て、スマホを落としそうになる。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
(岩下さん……)
岩下亮平
岩下亮平
『明日、待ってるから』
また、返せないメッセージが増えてしまった。
止まったはずだった涙があふれる。
美香
美香
ゆ、ゆま、大丈夫?
美香が、私の手からハンカチを抜き取って、目元に当ててくれる。
野々宮ゆま
野々宮ゆま
美香、私ね……
野々宮ゆま
野々宮ゆま
私、明日になったら、岩下さんを好きじゃなくなるの

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