〈隼side〉
小森隼、
ただいま涼太くんに相談をしています
逃げるだけで終わり。
まあ確かにそうだけど
でもやっぱり怖いんだよな
そんなことになったら、
俺は一体どうなるだろう。
多分、生きる意味を見失う。
大袈裟。って笑われるかもしれないけど
それくらいあなたちゃんの存在は大事
もし今俺が、あなたちゃんのとこに行って
好きだよ。って伝えられたら
今更なに?って怒るかな、
嘘つかないで。って泣くかな、
私もだよ。って笑ってくれるかな、
嗚呼、一目惚れって辛いんだ。
気付かないうちに、どんどん好きになってて
もうその子しか見えなくなってしまう。
だんだん目頭が熱くなる
涼太くんのその一言で、
俺の涙腺は崩壊して。
それからずっと泣きやむまで
涼太くんは俺の酒に付き合ってくれた
多分、この涙は
自分へのやるせなさじゃなくて、
ある意味、
あなたちゃんが好きすぎてなんだ。
〈あなたside〉
昨日、亜嵐と少し電話したあと
気付けばソファーで寝てて
今朝風呂から上がったところ。
テーブルの上に置いてある携帯が振動して
見てみると、"亜嵐"って文字
そんな声の後、
鳴るのは家のインターホン
嘘でしょ…………もしかして…
電話を切ってドアを開ける
ガチャッ
バタン
今のは夢だ。
うん。絶対にそうだ。
ドアの向こうからずっと聞こえる声
ガチャッ
また閉めようとしたらドアを掴まれて
朝風呂入ったでしょ!
って笑顔でそんなこと聞いてくる亜嵐
やった♪
って、語尾に音符が見えるような反応で
後ろから付いてくる亜嵐
私が持ってるCD見たり
私の家をずっと回ってて
新築に来た犬か!って感じ、笑
二人で向かいに座って
コーヒー飲んで
あ、うまっ。
って呟いてる亜嵐を眺めてたら
あれ、てかまって。
ご飯食べに行く予定がこれってことは、、
まだ、、信じれる、?
今、隼くんに会えたら
信じてもいい?って聞きたい
お昼ご飯を作ろうと思って
冷蔵庫を開ける
材料を取って
キッチンに立つ
キッチンの向こうから返ってくる声
はーい、って返事して
ご飯を作りはじめる
作り始めてからしばらくして
そんなこと言いながら
キッチンに入ってくる亜嵐
亜嵐が手伝ってくれて
二人で向かいに座ってから
亜嵐が一口食べて
反応を見てたら
だんだん涙目になる亜嵐
それからずっと食べてる亜嵐を見て
ごちそうさま。
って亜嵐がキッチンに行って
亜嵐が洗おうとしたのを辞めて
私がお皿を洗い出す
お皿を洗って
でもまだ亜嵐はそこに居たままで
言い終わる前に感じたのは
亜嵐の温もり
バックハグ。ってやつされてて
こういうの慣れてない私は
挙動不審になっちゃって
亜嵐の声が、すぐ近くに聞こえて
心臓がバクバクしてる
亜嵐が無言で離れて
私と向き合うと
私の右手を掴んで亜嵐の胸元に当てる
意識してみると、本当にバクバクしてて
弱々しく言う亜嵐に
何も言い返せずにいると
あぁ、
ってガシガシ頭を掻いてる亜嵐
自分でも気付かぬうちに涙が溢れてて
亜嵐が親指で涙をすくう
ニコッって微笑んで
じゃあね、って玄関に向かう
私も後ろから付いていって
亜嵐が靴を履いてから出て行く時
そんなのだめ!亜嵐くん帰る!!
って独り言言いながら外に出ていく亜嵐
バッって私の方を向いて
ドアが閉まりながら
なんて言うから、
ほんとにほんとに、亜嵐はずるいけど。
そんな亜嵐のお陰で
素直に隼くんに向き合える。
急いで携帯を開いて
隼くんにLINEを送る
「隼くん、会える日ありませんか。」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。