第56話

56.会いに来たよ
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2020/06/14 00:40
〔としみつ〕

俺はみんなに後押しされ、東京に来ていた。あなたともう一度直接話そう。この前の一晩の過ちも、あれで終わりにはしたくない。

とりあえず、あなたの家の近くまで歩いていく。どこにいるかは分からない。でもちゃんと、探し出さなきゃ。


と思って来たのに、早探し続けて5時間。12時に着いて明るかった空も、日が沈む頃になってしまった。


先輩「じゃあまた今度ね」

人通りの少ない場所で男の声が聞こえる。

あなた「うん、今日はありがとう」

…?あなた?俺は走ってその男女の所まで行った。

としみつ「あなた?」
あなた「としみつ…?」
としみつ「良かった、岡崎から来たんよ」
あなた「どうして…」

ストーカー「ねぇ、としくんだめ!離れて!」
先輩「えっ、」

俺の後ろには、ストーカーが立っていた。まさか名古屋駅から東京まで着いてきた…?

としみつ「…ここじゃだめだ、あっちで話したい」

俺はみんなを空きビルの中へ入れた。

としみつ「お前、警察に言うからな」
ストーカー「なんでよ、悪いことはしてない!」
としみつ「尾行したり手紙送ってきたり」
ストーカー「それは全部としみつくんが好きだから…」
あなた「でも人に迷惑かけてるの」
ストーカー「あんた、やっぱりとしみつくんの彼女なんだね」
あなた「…なんでそうなるの?私がいっしょにいたのはとしみつさんじゃなくて、こっちの人よ」
先輩「あぁ、俺達は今日一緒にいた」
ストーカー「何言っても無駄、もう写真もあるし住所も知ってるし!」
としみつ「やめろって、お前そんなことしてそれは俺のファンじゃないやん!」
ストーカー「あぁもうみんなうるさ〜」

そう言うとストーカーは銃口がこちらに向く。

ストーカー「死ぬなら私ととしみつくんが一緒に天国行こうかと思ったけど、やっぱいいや、みんな死んでもらう」
先輩「やめろ」
ストーカー「動くな!」

あいにくあなたの離れた場所にいて、守りたいのに守れない。あなたは隣にいた男の後ろで守られている。こんな時でさえ嫉妬してしまう俺は酷くわがままな人間だ。

ストーカー「大体こんなに好きにさせたとしくんが悪いんだよ?」
としみつ「・・・」
ストーカー「としみつくん、私にキスしてよ、どうせ死ぬからさ、」
としみつ「何言っとるだ?殺されねーよ」
ストーカー「ふーん、私にキスしてくれたら解放してあげてもいいのに」
としみつ「・・・」
ストーカー「彼女がいるからできないんでしょ?」

俺の肩に腕をかけ、足を絡めてくるストーカーはもう人間なのかも分からない。

としみつ「やめろ、離れろ」
ストーカー「キスしてないでしょ、まだ」
としみつ「しねーよ」
ストーカー「ふーん、じゃあ私のこと嫌いなんだ、ファンなのに〜」
としみつ「・・・」
ストーカー「死ね!」
としみつ(…!!!!)

銃口から放たれた弾が俺に当たらない。なんで、なんで。

???「うっ…」

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