第53話

53.悲しみの中で愛を語ろうか
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2020/06/02 14:45
〔あなた〕

としみつの車に乗せられ、マンションへと走る。降りたい。この思い、このまま引きずりたくない。

としみつ「急におらんってなったら、厳しいやん」
あなた「ごめん」
としみつ「明日には東京に帰すから」

部屋に入ると引っ越して見たことの無い部屋になってしまっていたけど、久しぶりにとしみつの空間を感じる。部屋の香り、景色、全てが愛しい。

としみつ「今日は…好きにさせて」
あなた「んっ…」

キスが降ってくるのにこんなにドキドキしたことはない。バッグと上着は床に落ち、としみつに抱きしめられて何も出来ない。

初めて私の家でベッドに押し倒された時とは少し違う、としみつの目が悲しんでいるのが分かる。

あなた「ねぇ、もうこうなったら今日は恋人だよね」
としみつ「ずっとやんそんなの」
あなた「愛してる」



夜が終わって朝は酷く悲しくて、涙が流れる。身支度を整えてもう別れの時間。

としみつ「あなた、行ってきますのハグは?」
あなた「なにそのバカップルみたいなこと笑」
としみつ「笑笑、バカップルでもいいやん」
あなた「…ばか」

ハグをしようと思ったのにとしみつからしてくるのはなに。カッコよすぎるわ、

あなた「…今日からは他人なの、もう」
としみつ「いつか幸せが来ればそれは終わる」
あなた「…元気でね」
としみつ「愛してる」

ドアを閉める手が震えるのが分かる。涙ってなんでこんなに勝手に流れてくるんだろ。


そんなの簡単じゃんね、好きだったからだよ。

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