第42話

42.雨の中の君 2
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2020/05/04 12:15
〔としみつ〕

早くあなたの家に行かなきゃと足取りが早くなる。事務所での仕事が長引いて予定より30分の遅れを取っていた。

としみつ「あと少し…」

この曲がり角を曲がれば、後は少し歩くだけ。急ぎ足で曲がると、あなたのマンションの手前で揉めている人影が見えた。女性が2人。どうやら取っ組み合いにも見える。

俺は助けなきゃ!と走って近寄った。

あなた「とし…みつっ…」
としみつ「あなた!?」

首を絞められていたのはあなたで、俺は急いで女の手を振りほどいた。あなたは苦しそうに地面へ倒れ込む。

としみつ「あなたっ…おい!お前なんだよ」
ストーカー「としみつくんっ、ひどいの、この人が私に言いがかりつけてきて…」
としみつ「あなたがそんなことするわけねぇやん!警察呼ぶぞ!」
ストーカー「…わかってくれないなんてひどいっ!」

そう言って女はどこかへ走っていってしまった。

としみつ「あなた!」
あなた「としみつ…」

2人の傘は地面に投げ出されて前髪にどんどん雫がしたたるのが分かる。

あなた「怖かったよ…」

あなたが泣いてるのが辛くて、外だって分かってるのに抱きしめてしまう。幸い雨のせいか通行人はいなかった。

としみつ「ごめんっ…こんなこと…」
あなた「ただ好きなだけなの」
としみつ「…」
あなた「好きなだけなのに、一緒にいるって、こんなに大変なんだね」

2人で座り込んで抱きしめていても、怖くて、辛くて、悔しい。暖かさが届かない。

あなた「家に入ろっか」
としみつ「うん…」

あなたの赤くなったうなじを見て、ただ、辛いだけだった。

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