第24話

No.24
717
2019/03/16 11:19
何も聞けないまま、
クリスマス前夜。




あれから部長は仕事のこと以外、
話しかけてこなくなった。




別に寂しくなんてない。



ただいつもの日常に戻っただけ。


事を犯してしまう前に戻っただけ。













なのに…




笑顔で他の女の子と話してるのを見て、
スキンシップをしてるのを見て、






胸がチクンと、痛い。





気のせいだ。

何かの間違いだ。





気付かないふりを続けた。




















ピコンッ



携帯が光る。



画面を見るとLIMEでカンタの名前。



カンタ
カンタ
『今日会いに行っていいかな』


ご飯のお誘いだった。


あなた

『もちろん。どこ行く?』

カンタ
カンタ
『美味しいお好み焼き屋さん見つけたんだ。そこ行かない?』



びっくりするくらい、
返信が早い。


あなた

『いいよ、楽しみ』

カンタ
カンタ
『俺も』






そこでやり取りは終わった。





今日はラフな感じで仕事に来てたから、
言われた店にそのまま向かうことにした。




早く、会いたい。





最近自分のことがよく分からなくて、
カンタといる時だけ楽しくて、

安心出来る。



カンタのことが大好きだって、
実感出来る。






















お店に着くとカンタは先に待っていた。






席まで案内され、
そこに座る。







カンタ
カンタ
ここ、本当に美味しいんだよ。



目をキラキラさせて、
メニュー表を見るカンタ。




ズキズキと胸が痛む。




考えちゃいけない……




カンタ
カンタ
あなた何がいい?




カンタはそんなことしない。






何かきっと……





あれから気になって気になって仕方がない。




カンタ
カンタ
あなた?



会う度に聞こうかどうしようか迷う。



聞いた方がスッキリするかもしれない。








でも……勇気がない。






もしあたしに飽きて、

本当に浮気をしていたとしたら?






あたしはどうするんだろうか……






カンタ
カンタ
あなた!!



カンタの大きな声で我に返る。




初めて聞いた、大きな声。



あなた

あ、ご、ごめん……

カンタ
カンタ
……大丈夫?




目の前には心配そうにあたしを見つめるカンタ。





不安にさせてしまう。



あなた

うん、考え事してた





カンタはそっかって言って、
店員さんを呼び注文をした。



カンタ
カンタ
あなたは?
あなた

あたしも同じので




かしこまりましたと、
店員さんが奥にはけていく。




カンタ
カンタ
最近変だよ?なんかあったんでしょ?



最近、カンタに会う度に
ぼーっとしている気がする。



カンタに何回も呼ばれて気づく。





今回ほどのことはなかったけど。




あなた

えっと……






少し不安な表情をして、






カンタ
カンタ
……言えないことなの?






ズキッ





また、胸が……痛い。


プリ小説オーディオドラマ