心配してくれてるカンタを見て、
さらに胸が痛む。
もう黙っていられない。
言おう。全部。
いきなり謝るあたしにびっくりするカンタ。
いざ言おうとすると、
言葉が詰まって上手く言えない。
黙っていると何がを察したカンタが、
あたしの手を握った。
思ってもいなかった優しい言葉。
どーして……?
あたしの手を握るカンタの手は、
強く力が入る。
どーして……
その言葉に涙が止まらなくなった。
なんで優しくそんなこと言えるの?
なんで許してくれるの?
なんで……そんなに冷静なの…
いろんな感情が交差して、
頭の中はぐちゃぐちゃだった。
カンタは今、何を考え何を察して、
何を思ってるんだろう。
カンタはあたしを優しく撫でる。
もう聞けない。
カンタのこと、聞く気力がなくなった。
よくわからない感情が押し寄せる。
店員さんが少しだけ遠慮気味で、
お好み焼きを持ってきた。
あたし達は、そのまま黙々と食べた。
泣き止み、完食した頃。
カンタはあたしの目を真っ直ぐ見た。
そこは高級なお店。
カップルに有名な場所だった。
付き合いたての頃、
このお店の前を2人でよく通ったことがあった。
本当に綺麗で素敵なお店。
いつかここで、
大好きな人と食事をして、
永遠の愛を誓いたいと
くさいことを考えていた時期があった。
少し意地悪な笑顔でそう答えた。
最上階。
夜景が一面に見えるとこだっけ。
こんなにもあたしを思ってくれる人。
優しくてかっこよくて、
大好きな彼。
今回は本当に、もう考えるのはやめよう。
そーすれば丸く収まる。
そう思うようにした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。