ホットのカフェラテを
あたしに渡してきた。
大丈夫ですと受け取り、
二人で一口飲む。
寒かったから、
暖かい飲み物が染みる。
そう言って黙る部長。
何やら難しそうな顔をしていた。
予想もしなかった言葉。
一気に胸が苦しくなる。
うちの会社の本社は、
上のあたりの県になる。
他県……
苦しくて言葉が出ない。
あたしの顔を見てくれない。
下を向いて、
寂しそうに言う。
どーしてあたしにそれを……言うの
胸がいっぱいになる。
今度はただまっすぐに、
あたしを見る。
部長があたしを……?
確かにまだ部長が部長じゃなかった頃、
この会社にはいたけど、
部長とは部署が違って、
部長になった時にうちのとこに入ってきた。
会ってた記憶は……ない。
寂しそうな声で、
優しい顔でそう言う。
今までのことを思い出す。
部長は不器用で、みんなと仲良くて、
仕事もできて、
敵はたくさんいたけど、
それでも憧れてる人もいた。
そんな部長があたしを……
こんな弱々しい部長、
初めて見た。
どう声をかけていいのか、分からない。
そう言って、
車を走らせた。
沈黙が流れてる間、
あたしはただ胸の痛みに耐えた。
自分でも自分の感情がよく分からなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!