第3話

もやもや
238
2019/04/27 11:55
少しモヤモヤしたまんま、私は一日を過ごした。授業なんか微塵も頭に入ってこなかったけど、小テストは全て満点だった。
昔からそう。「姫音ちゃんはなんでもできてすごいね」「凛音ちゃんはどうしてできないの?」
ああ、嫌だ。そんな軽い口調で凛音を語らないで。その名前を口に出さないで。
私の、たった一人の可愛い妹なの。
ユウトウセイなんてレッテルを貼られて、どんなに息苦しいか知らないくせに。レットウセイだなんて決めつけて、凛音がどれだけ悲痛な叫びをあげているか知らないくせに。
私が守らなくちゃ。
家に帰ると、真っ先に凛音の部屋に向かった。
「お姉ちゃん……おかえりなさい」
「ただいま。またチャット?どんな人とお話をしているの?」
「……素敵な人。優しくて、面白い人だよ」
「そうなの。ちなみに、男の方?女の方?」
「男……」
凛音の頬がふわっと色づいて、僅かに唇が綻んだ。
「私の事……優しくて素敵な人だって。もちろん、会ったことなんてないけど、そんなこと初めて言われたから、とっても嬉しいの」
「そう……」
今日は何かおかしい。私の内側で何かが疼いている。気を抜くと蝕まれてしまいそう……
「こんな私に、好きだなんて言ってくれるの」
好き?すき?スキ?
頭を殴られたようだった。頭の中がぐちゃぐちゃになって、ぐわんぐわんって揺れてる。
何処の誰だか分からないやつが、凛音に愛を囁いている。凛音の何を知っているというの?ずっと一緒に育った私だって見たことの無い表情を引き出して。
「悪い虫は潰さなくちゃ」
「お姉ちゃん……?」
あたりが暗くなって、全てが眠りに落ちる午前2時。草木も眠る丑三つ時だなんて言うけれど、本当に街は死んだようだった。
眠っている凛音を起こさないように部屋に入って、凛音のタブレットを手に取った。
(ああ……これね)
アプリを起動して、履歴の一番上をタップする。
『おやすみ、凜音ちゃん。大好き( ˘ ³˘)』
「大好き」ですって?
あなたに凜音の何が分かるの。
そんな薄っぺらな言葉で凛音の痛みを消そうだなんて。
「『夜遅くにごめんね、もう寝ちゃったかな』っと……」
すぐに返事が来た。
『どうしたの〜?まだ寝たくないの?』
『あのね、君の住所を教えて欲しいの。会いに行きたいの』
『えっ??会いに来てくれるの?やったぁあ😆』


相手は容易く住所を送った。
「……やっぱり、何も考えてない薄っぺらな人ね」
『ありがとう💞じゃぁ、会いに行くね♥️』

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