学校での私は、家と同じように殆ど喋らない。
キッパリと言えば、「クラスにいてもいなくても変わらない奴」。
これと言った特技も無く、周りの人達のように積極性がある訳でもない。
薄い存在なのだ。
そんな私でも、唯一の趣味があった。
それは、"読書"。
これだけは昔から変わらず好きで、毎日欠かさず本を読んでいる。
周りの騒音を気にすることなく、本の世界に入り込める。
そんな時間が、私はたまらなく好きだった。
家族や友達に愛されている主人公。
最初はシリアスな場面が多かったとしても、結局最終的にはハッピーエンドで終わる物語。
クラスの人気者と付き合う女の子。
色々な物語があるが、私はやはり、「バットエンド」が好きだった。
叶わぬ恋。叶わぬ願い。叶わぬ夢___。
何故バットエンドが好きか、詳しいところは私もよく分からない。
しかし、「主人公が今の私に似ているから」という答えが妥当だと思った。
家族からも、友達からも必要とされていない。愛されていない___。
そんな私の物語は、「ハッピーエンド」で終わるのだろうか?
いや、きっと「バットエンド」で終わる。
私の物語を「バットエンド」から「ハッピーエンド」へ変えてくれる人物は現れるのだろうか___。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。