久しぶり泣いたからか、友達に本音を打ち明けたからか分からないが、今日はいつも以上に疲れていた。
早くベッドに寝転びたくて、早足で家に向かう。
"ガチャ"
そう言いかけた時、玄関に変化があった。
私以外の靴が1足、きちんと並べて置いてある。
どこかで見覚えのある靴。
何も言えずその場で立ち尽くしていると、女性がひょっこりとリビングのドアから顔を見せた。
母だ。
予想外の人物に、私は空いた口が塞がらない。
「何故いるのか」と、慌てて母に問う。
すると、キョトンとした顔で母は言った。
覚えててくれたんだ.....
そう思うと、涙が溢れて溢れて止まらなかった。
そんな私にそっととある物を差し出す。
そう言い、可愛いラッピングが施された物を私の手に乗せた。
沙羅はきっと、今日が私の誕生日だと知り、学校終わりに急いでプレゼントを買いに行ってくれたのだろう。
お洒落な刺繍が入っているハンカチに、メッセージカードが入っていた。
メッセージカードには
"私にとって梨々花は必要な存在だよ"
と、丁寧な字で書いてあった。
私は周りの人に愛されていた。必要とされていた。
今までそれに気付かずに、勝手に自分を責めて嫌悪感や喪失感に浸っていただけだった。
私の物語を「バットエンド」から「ハッピーエンド」に変えてくれた人達。
一生残る「思い出」をくれた人達。
「読書が好き」という共通点で仲良くなった友達。
顔を合わせる頻度が少なくてもちゃんと愛してくれていた両親。
私は今、胸を張って「幸せだ」と言える。
数日前には考えられないくらい、私の心は雲1つない青空と言っていい程晴れていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。