第8話

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2020/05/16 11:48
久しぶり泣いたからか、友達に本音を打ち明けたからか分からないが、今日はいつも以上に疲れていた。


早くベッドに寝転びたくて、早足で家に向かう。





"ガチャ"




佐野梨々花
佐野梨々花
ただい___


そう言いかけた時、玄関に変化があった。


私以外の靴が1足、きちんと並べて置いてある。




どこかで見覚えのある靴。


何も言えずその場で立ち尽くしていると、女性がひょっこりとリビングのドアから顔を見せた。


お母さん
あら、梨々花おかえりなさい


母だ。


予想外の人物に、私は空いた口が塞がらない。

「何故いるのか」と、慌てて母に問う。

すると、キョトンとした顔で母は言った。


お母さん
なんでって....今日は梨々花の誕生日じゃない
佐野梨々花
佐野梨々花
え.....
佐野梨々花
佐野梨々花
お、覚えててくれたの....?
お母さん
当たり前じゃない
お母さん
今までちゃんとお祝い出来てなくてごめんね



覚えててくれたんだ.....


そう思うと、涙が溢れて溢れて止まらなかった。


そんな私にそっととある物を差し出す。


お母さん
これ。私とお父さんからの物。あとこっちは...沙羅ちゃん?っていう子がさっき家に来て置いていったわよ


そう言い、可愛いラッピングが施された物を私の手に乗せた。



沙羅はきっと、今日が私の誕生日だと知り、学校終わりに急いでプレゼントを買いに行ってくれたのだろう。


お洒落な刺繍が入っているハンカチに、メッセージカードが入っていた。


メッセージカードには


"私にとって梨々花は必要な存在だよ"


と、丁寧な字で書いてあった。







私は周りの人に愛されていた。必要とされていた。

今までそれに気付かずに、勝手に自分を責めて嫌悪感や喪失感に浸っていただけだった。


私の物語を「バットエンド」から「ハッピーエンド」に変えてくれた人達。

一生残る「思い出」をくれた人達。



「読書が好き」という共通点で仲良くなった友達。

顔を合わせる頻度が少なくてもちゃんと愛してくれていた両親。


私は今、胸を張って「幸せだ」と言える。


数日前には考えられないくらい、私の心は雲1つない青空と言っていい程晴れていた。

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