第7話

🌥
113
2020/05/16 11:48
佐野梨々花
佐野梨々花
行ってきます.....



家を出る前に振り返り、いつもと同じように静かに言う。


今日は誕生日だというのに、朝からこんな寂しさに襲われなければいけないのか。

まぁ、いつもと同じだけど。




┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈



教室に入り、席に座って荷物の整理をすると、いつも通り読書をする。

朝に読書をする週間は、友達が出来ても変わらない。


数日前と変わった事と言えば、沙羅が「何呼んでるの?」、「面白い?」と声を掛けて来るようになった事だ。



姫宮沙羅
姫宮沙羅
梨々花今日は何読んでるの?


ほらね。


私はブックカバーを外して、沙羅に本の表紙を見せる。


佐野梨々花
佐野梨々花
これだよ
姫宮沙羅
姫宮沙羅
ふぅん....どんな話なの?
佐野梨々花
佐野梨々花
ん〜....ざっくり言うと、一人ぼっちの主人公が、ある友達によって明るくなっていくっていう話
姫宮沙羅
姫宮沙羅
へぇ...珍しいね、梨々花がそんな話読むなんて
佐野梨々花
佐野梨々花
あ〜...まーね



私は「ハッピーエンド」よりも「バットエンド」を好む。

しかし、今日私が読んでいる本は、どちらかと言うと「ハッピーエンド」に近い内容だった。


何故突然そのような本を読もうと思ったのか。


佐野梨々花
佐野梨々花
今日、誕生日なんだけど祝ってくれる人いないな〜って思うと寂しくて



そう。とてつもない寂しさに襲われたから。

いつもとは違う、心にポッカリと穴が空いたような気持ちになったから。


だから私は主人公が明るくなっていく、「ハッピーエンド」の話を選んだ。





そう伝えると、沙羅は大袈裟に反応した。



姫宮沙羅
姫宮沙羅
え!?
今日誕生日なの?
佐野梨々花
佐野梨々花
え?そうだけど?
姫宮沙羅
姫宮沙羅
えぇ?何で言ってくれなかったの?
佐野梨々花
佐野梨々花
何でって....誕生日なんてどうでもいいと思ったから
姫宮沙羅
姫宮沙羅
え?
佐野梨々花
佐野梨々花
私さ、普段親が家にいなくて.... 
誕生日を祝ってもらったことなんて殆ど無いんだよね
佐野梨々花
佐野梨々花
だから....どうでもいいって思ったの
姫宮沙羅
姫宮沙羅
......



沙羅は何も言わなかった。

気を使って反応しなかったのかもしれない。



しかし、そんな沙羅の表情は少し切なげであった。

それを見てしまった私は余計寂しくなってしまう。



佐野梨々花
佐野梨々花
いや...本当は祝ってもらいたかった
佐野梨々花
佐野梨々花
誰かに...必要とされたかった



自然と私の頬に涙が伝う。




やはり、「家族に愛してもらいたい」という気持ちは、数年前から変わっていないようだ___。

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