意味が分からない。
……というのはきっと私だけではないはず。
案の定真里花の方も理解できていないようで、私の目の前で大袈裟に頭を抱えながら叫んでいる。
と告げると、真里花は理解出来ないのかピタリと硬直したまま口をぽかんと開けていた。
そこへ、私の右隣で女子に囲まれていた山田涼介が「なぁ」と声を掛けてきた。
真里花を指差すと、ようやく彼女も状況を理解してくれたようで顔をリンゴのように染めながら「信じられない!」と言わんばかりに絶叫した。
耳をつんざく程の真里花の悲鳴に、思わず耳を塞いだ。
そこまでオーバーに喜ぶなんて理解に苦しむが、やはり好きな子からしたら死ぬほど嬉しいものなのだろう。
と言ってどこから出てきたのか昨日と全く同じCDを私に差し出した。
正直要らないんだけど。
私の肩に手を乗せた知念侑李がひょこりと顔を出しながらニヤニヤと山田涼介をからかう。
なんでも何も、同じクラスで隣りの席なんだから知ってて当然かと肩を落とした。
この2人に知られると色々と面倒な事が増えそうで嫌だったのだけど、もうこうなったら覚悟を決めるしかない。そう思った。
呆然と私達3人の会話を耳にしていた真里花が「え、あなた……」と口を開いた。
あまりにも酷すぎる親友の勘違いに、思わず涙を浮かべた。
ねぇ、真里花……今まで私の何を聞いていたというの?
知念侑李が大きく両手を広げ、私に勢いよく抱きついた。今まで男の子と触れ合う事に縁のなかった私は、ついつい赤面してしまう。
いや、私だって照れる時は照れます。
一年に一度あるか無いかだけど。
両手で顔を覆いながら照れる私の周りで、知念侑李と一緒になってはしゃいでいる親友に初めて殺気を覚えた。
山田涼介が知念侑李に襲いかかり追いかけっこを始めた事でようやく解放された私は、安堵の息をつきながら席についた。
このままずっと平凡な日々が続く。
そう信じ切っていたと言うのにこのザマだ。
………これから私、どうなってしまうんだろう
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。