第29話

ずっと探していた。ー涼介sideー
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2018/03/13 02:27
ずっと探していた。
本当に好きになれる誰かを。

山田涼介
山田涼介
君も貰ってはくれないの?
あなた

いや、私は興味ないんで

ほかの誰とも違う君に一瞬にして惹かれてしまった。

俺を拒む女の子なんて初めてだった。
アイドルになった俺は、いつしか周りの誰からも一人の人間ではなく“アイドルの山田涼介”として接するようになっていき、俺の中にふと孤独の波が立つようになった。


それはどの学校へ行っても同じだった。
そう。どこへ行っても変わらない。俺は俺でいられる世界なんて――――。


そう諦めかけていたその時、あなたに出会った。
あなたはアイドルである俺の事を強く拒んだ。それはつい最近までずっとそうだった。なぜ彼女がそこまでアイドルを嫌うのか疑問であったが、何度聞こうにも絶対に答えてはくれなかった。
だからかな。余計に君を追いたくなるのは。
山田涼介
山田涼介
ねぇ、あなたーっ!
あなた

………何?

何度声を掛けても返ってくるものは変わらない。
何でそんなに素っ気ないの?………って、そんなの理由は一つしかないよな。
山田涼介
山田涼介
そんなに俺嫌い?
あなた

別に

やっぱり変わらない。平常運転。
まぁあなたらしくていいのかもしれないけど。

知念侑李
知念侑李
あなたちゃん、あのねー……
あなた

え、あ……っ……!う、うん……

知念やあなたはまだ気付いていない。
彼女の心の奥に隠された真実に。

そう、気づいているのは俺だけだ。それが俺にとっては凄く辛くて凄く心を痛める。何で……何で君は、俺じゃなくてアイツを――――。
山田涼介
山田涼介
――――俺の事見て
あなた

………え……っ

もしかしたら、俺のしている“コレ”は知念からすればズルいと思うかもしれない。いや、きっと思う事だろう。


でもそれでも良かった。
ただあなたが欲しかった。


それだけを一心に思っていた俺は、思わず奪ってしまった。




君の………君の唇を。
あなた

――――ッ、ちょっと………!

山田涼介
山田涼介
…………
案の定君は俺の身体を引き剥がした。
そうか、やはりそうやって拒むんだね。あの時からずっと、今この時も………。
山田涼介
山田涼介
………ごめん
あなた

……………

君の目はただ一言「話したくない」と訴えていた。ああ、俺はまた君から遠ざかってしまうのか。


本当…………情けない。
ごめんね、あなた――――。

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