その日の放課後、私はクラスの中心にいるリーダー格3人に呼び出された。
男子生徒が入ってこれない、体育館に備えられた女子更衣室。ここは部活を行う生徒でも薄気味悪いという理由であまり使ってはいないらしかった。
グループの中でも一番の女王様なのは、私の正面に立つ真ん中のケバい女・神谷さんだ。短いスカートに鼻が曲がりそうな香りの強い薔薇の香り。
まるで六本木や新宿に居そうなキャバ嬢のような濃いメイク。無駄に開いた胸元。
神谷さんの言葉に便乗するように頷くのは、頑張って背伸びをしながら相手に合わせているような堀さんだった。
メイクもナチュラルで、香りもそう強くない自然で清楚な感じのするせっけんの香り。性格だってこの3人の中では一番いいだと思う。
なぜこんなグループに入ってるのか不思議に思うくらいだ。
入学当初から神谷さんと仲の良かった、こちらもこちらで中々ケバいメイクを施す佐々木さんが何やら意味不明な言葉を口にした。
ついに頭でもイカれてしまったのかな?
面倒な事になるのは分かっていたはず。
敢えて何も反論せずにただ頷いておけば誤解だけで済んだかもしれない。
………いや、そんな筈ないか。
それがそのまさかなんですよお姉様方。
余りにもくだらない“用件”に時間の無駄と判断した私は、大きくため息をつきながら睨み付けた。
本当、いい加減うるさ過ぎる。
まるで羽根を擦らせ蜂のようなウザったらしい振動音を鳴らしながら自分の周りを飛び回る蝿の様。
私の背中に暴言をぶつけまくる彼女達を一切振り返ることなく無視した私は、何事も無かったかのように教室へと戻って行った。
教室には部活をしていない生徒、数人程しか残ってはいなかった。山田涼介や知念くんは仲のいい男子と黒板に落書きをしながら遊んでいた。
ちょうど教室を出ようとドアの前に立っていたらしい真里花と鉢合わせになり、彼女がどこか気まずそうな表情で目を泳がせていた。
いつもと違うどこか浮かない顔をしていた真里花は、素っ気ない冷たい口調で淡々とそう告げると、そそくさと逃げるように教室をあとにした。
……どうしたんだろう?何か不機嫌にさせるような事してしまったっけ、私。
肩を竦め、まるで何かから怯えているように身体を縮こませながら遠ざかっていく親友の背中に違和感を感じつつも、まぁいいかと席の方へ戻った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。