立ち上がった私は、知念くんに背を向けたまま淡々と呟いた。彼は何も言わずにただ私の宣言に耳を傾けてくれていた。
知念くんが強く私の腕を掴んだ。咄嗟に身を引こうにも、彼にがっしりと掴まれていて逃げる事さえままならなかった。
そんな私の身体を引き寄せ、顔を近づける知念くんは貫くような強い目力でこちらをじっと見つめている。
彼の声は、震えていた。
その表情もどこか曇っており、焦りと動揺を感じ取らせた。
思わず言葉を失う私だが、すぐに首を横に振り「そうじゃないの!」と彼を見つめ返した。
知念くんの手を優しく解いた私は薄らと微笑みながら目を伏せた。
私の行動はやはり間違ってなかったと思う。
例えそれが、親友を失うという結果に繋がっても………だ。
曇っていた知念くんの表情は、少しだけだが晴れた気がした。
が、まだどこか申し訳なさそうな表情を浮かべる彼は、恐る恐る上目遣いでこちらを見つめていた。
何があっても、きっと伝えるから。
シンデレラの最後に、きっと……………。
――――××に。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。