第3話

転校生。
4,695
2018/02/10 23:27
その後、ほぼ無理矢理という形で連絡先とlimeを交換させられた私は、ようやく彼らの手から解放され無事家へと帰ることが出来た。

あの件のせいで、昨日は全く眠れなかった。
お陰で今日は寝不足らしく、登校してきて早々尋常でない程の眠気が私を襲って来ていた。
佐藤 真里花
おはよーあなた!
あなた

あ……真里花………

真里花の顔を見ると、自然とあの2人の事をを思い出してしまう。
親友に対してこれは失礼だが、正直顔を見るのが辛いと思えて仕方ない。
佐藤 真里花
ねぇ、昨日頼んだやつ買ってきてくれた?
さて、ここで正直に「山田涼介からもらった」と言うべきか、敢えて嘘をついて「買ってきたよ」と渡すか。どちらの方が安全だろう。


と言っても考えることさえままならないくらいに、私の脳は睡眠を求めているようだった。
すぐさま思考を放棄して、私はCDを無言でサッと彼女に渡した。
佐藤 真里花
ありがとうあなたっ!
あなた

………う、うん

佐藤 真里花
……でもこれ、限定盤だよね?こんなのあの店で手に入ったっけ………
しまった。
そう言えばCDには“何とか限定盤”とか言うのがあると、以前真里花から聞かされていた。

が、どうやら昨日私がもらったソレはこの街では手に入らない希少ものらしかった。
あなた

あー……実はね

仕方なく白状しかけたその時。
伊野尾先生
伊野尾先生
HR始めるんで席着いてー!
いつもより少し早く教室へと入ってきたのは、担任の伊野尾先生だった。
今日も遅刻しかけたのか、きのこ型の髪はいろんな方向へと跳ね上がっているし、ネクタイも少し右の方へと曲がっている。
男子
先生、今日も遅刻したのー?
男子生徒が、小馬鹿に笑いながら先生へ問いかけた。

このクラスの生徒にとって、伊野尾先生は“いじられキャラ”だった。
一見、先生として見られていないように聞こえるが、これでも皆天然でツッコミどころの多い伊野尾先生の事が大好き。
伊野尾先生
伊野尾先生
そ、そうなんだよねぇ〜!目覚ましが鳴らなくてさぁ!
先生の“目覚ましが鳴らなかった”は少し嘘だ。正確には鳴らなかったのではなく、聞こえなかったんだ。
伊野尾先生
伊野尾先生
……って、それよりも!今日は転校生が2人もいますよ〜!
そう言えば、朝来た時から私の両隣りに机と椅子が増えていた。
最初は気のせいかと気にしないで置いたが、やっぱり気のせいとかではなかったらしい。
伊野尾先生
伊野尾先生
みんな驚かないでね!?
女の子
え〜イケメンかなぁ?
男子
女子!女子求む!!
教室内がザワつく中、扉を開けて入ってきたのは見覚えのある金髪の男の子と茶髪の男の子。

いや、見覚えがあるとか言う以上に、昨日私を散々な目に遭わせた“あの2人”だった――。
佐藤 真里花
ええっ!?
男子
やっ、山田涼介に……知念侑李!?
女の子
嘘でしょ……!
教室内に歓声が響き渡る中、私は一人愕然としていた。

少女漫画や携帯小説などでありがちのシチュエーションが、まさか本当に起こるなんて………。
山田涼介
山田涼介
山田涼介っす、よろしく
知念侑李
知念侑李
知念侑李ですっ!よろしくね?
伊野尾先生
伊野尾先生
……んーと、じゃあ2人とも空いてる席座ってね
空いてる席なんて言ったら、私の両隣りしかないじゃん。

……ああ、もうなんだか頭が痛いや。

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