学校が終わり、大急ぎで家に帰ってきた私は、靴を脱ぎっぱなしにしたまま無我夢中で階段を駆け上がった。
忘れない内に手紙を読んでしまおうと思い急いできたのだが、普段あまり運動をしないからかどっと疲れが押し寄せてきた。
走ってきたために乱れる呼吸を整えながら、部屋へ入り例のカバンへ手を突っ込んだ。いつものように手探りであの手紙らしきものを探し出すと、恐る恐るその封をハサミで切った。
少しだけ深呼吸をした私は、可愛らしい便箋に書かれているその内容を黙読した。
“あなたへ”
あなたってピュアラブの事好きじゃなかったんじゃなかったの?
それなのにファンの子以上に仲良くしちゃって、しかもあんなに要らないって拒否してたCDだって受け取っちゃうし………。
コンサート会場でお母さんといる所を見かけた時は、裏切られた気分でした。
なんで私の事を誘ってくれなかったの?
でも………偶然見つけてしまった私の方が悪いんですか?
とてもショックだったし、あなたがよく分からないよ。
親友だと思っていたのに、少し気まずくなっただけで………。
そんな人だとは思ってなかったよ。もしもこれを読んで謝りたいとか思ってくれたとしても、来なくていいから。
もう………話したくないよ。
“真里花”
頭を金属製の棒のようなもので何度も何度も叩かれたような、そんな強い衝撃が私を襲った。そんなつもりじゃなかった。そんなつもりじゃ………。
私は今でもpure×lovelyどころかアイドルになんて興味すら………。それに、仲良くしているのだってアイドルとしてじゃなくて、ただの“友達”としてだし。
コンサートに行ったのだって、単純に誘われたからであって………。
真里花を誘わなかったのだって、あんなに気まずそうに避けられ話しかけてもこなくなったら誰でも誘いにくくなるに決まっている。そんな事、真里花だって分かっているはずなのに。
私、間違ってたの?
私はどうすれば良かったの?
一瞬でも“アイドル”に………“pure×lovely”に心を開いた私はこの世で一番の愚か者だったのかもしれない。
pure×lovelyに………涼介と知念くんに出会えて良かったかも知れない。コンサートの最中、そんな事をふと考えていた私は………。
もう、どうしたらいいのか分からなかった。
アイドルなんて………。
pure×lovelyなんて…………。
山田涼介なんて。
知念侑李なんて。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!