第36話

奇跡
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2021/03/30 12:29







さくらは秀吉に案内され、信長のもとに来た。



横たわった信長は眠っているかのように目を覚まさない。



(さくら)『信長様、目を覚ましてください
貴方がいないと……お花見も……つまらないです……』



さくらは刀を鞘にしまうと、信長の胸の両手を置き自身の力を最大限に込め体のうちの邪気を払う。





バタッ!!



さくらは力を使い果たすと、信長様に被さるように倒れた。そこにはもとの色のダイヤが転がり落ちた。



(秀吉)「さくら!!」



(家康)「まさか、信長様のために自分の力を全て使って……」



(光秀)「あの男は俺が牢に入れておこう」





(秀吉)「あぁ、任せた」



(三成)「謙信殿達も安土城に!」



(謙信)「もとより、そのつもりだ」



秀吉達と謙信達は一旦安土城に戻ることとなった。











変わって安土城……




(秀吉)「信長様……さくら」




安土城の天守では目を覚まさない二人を
秀吉達と謙信達が見守っていた。



そのとき……




(信長)「うっ……!」



信長が身動きをし、目を覚ます。



(秀吉)「信長様!」



(信長)「秀吉……?戦は」



(秀吉)「さくらが……決着を着けました」



(信長)「そうか、して当の本人は……」



(謙信)「信長、さくらは隣だ」



信長は隣を見ると、さくらは褥に横になり目を閉じていた。



(信長)「これは……どういうことだ」




(家康)「信長様、さくらは頼人を倒したあと」




(政宗)「ただでさえボロボロなのに自分の力を全て使って信長様を助けたんです」




(信長)「さくらは……目覚めんのか?」




(三成)「恐らく、奇跡でも起きない限りは……」



(信玄)「信長……さくらは俺達を信じてくれた……なら、俺達もさくらを信じるしかないだろ」



信玄は信長にさくらのダイヤを渡す。




そのとき……




ピカッー!!



ダイヤが光って信長は真っ白な空間に飛ばされた。



(信長)「ここは……」



(?)「あなたが……さくらが心に決めた方ですか?」



信長の前に二人の男女だ現れた。
その二人はどことなくさくらに似ていた。



(信長)「誰だ、貴様ら……」



信長はいたって落ち着いた声で問う。



(?)「驚くのも無理はありません」




(?)「私は月島彩香……さくらの母です」




(?)「私は月島恭吾、さくらの父です」



(信長)「!?さくらの両親だと」



(彩香)「はい……私達はさくらが幼い頃に
巫女殺しの頼人に敗れて命を落としました
夫の恭吾はさくらを守るために魔の手から逃げ、知り合いの友人に預けたあと力尽きて……」



(恭吾)「さくらにはもしものときがあったときにさくらの鞄に私達の形見であるダイヤモンドと水晶を入れておくようにと友人に伝えています」



(信長)「つまり、さくらはそのことを知らないのだな?さくらはあの2つの石を友人から貰い受けたとしか言っていなかった」




(彩香)「えぇ、さくらはそのことを知りません」




(恭吾)「だが、どうやらさくらは自分の力に気づいているみたいだね」




(信長)「あぁ、そこには力に俺達は何度も助けられた……だが、その本人は未だに目覚めていない」



(彩香)「恐らくさくらは生と死の狭間をさ迷っているのでしょう」



(信長)「どうしたら、あやつを救える?」



(恭吾)「ダイヤに貴方達のさくらを救いたいという思いを込めてください」



(彩香)「そして、そのダイヤに込めた皆さんの思いを貴方自身がさくらに取り込んでください……さくらと強い絆で結ばれている貴方達ならきっと大丈夫です」



(恭吾)「そして、さくらに伝えてくれ
短い間だったが、私達はさくらを愛していたと、いままですまなかったと」



(信長)「あぁ、承知した……必ず、さくらを救う」



(彩香)「それを聞いて安心しました
もう思い残すことは、ありません……
最後に貴方のお名前を聞かせてください」



(信長)「俺は安土城城主で尾張の大名
織田信長、天下布武をなす者だ」



(恭吾)「織田信長……いや、信長様と言った方が正しいかな?」




(彩香)「天下の信長様がついているのなら
安心ですね、さくらをあの子を幸せにしてあげてください……頼みましたよ」


彩香の言葉に信長は不敵な笑みを浮かべ
力強く頷く。



(恭吾)「では、私達はこれで」


(彩香)「さようなら」



信長の視界はそこでフェイドアウトしていった。












そして、次に目を開けるとそこは安土城の天守だった。



(信長)「貴様らは……奇跡を信じるか」



(秀吉)「信長様?」



(信長)「先程、ダイヤが光り、気づけば白い空間にいた、そこでさくらの両親に会った……」




(幸村)「そんなことあり得るのかよ……」




(佐助)「まさに、ダイヤが起こした奇跡ですね」



(信長)「こやつの両親が言うにはさくらは生死の狭間をさ迷っていると……」



(光秀)「生死の狭間……」




(信長)「救うにはこのダイヤに俺達全員のさくらを救いたいという思いを込めてその思いを俺がさくらに取り込まなければいけないらしいのだ……手を貸してくれるか?」



(秀吉)「もちろんでございます」



(政宗)「こいつを救いたいと思うのは皆同じのはずだ……そうだろ?」



(謙信)「独眼竜の言う通りだ……」




(信玄)「時間が惜しい……早く始めよう」




(信長)「俺は最後でいい……秀吉から順番に渡す……では行くぞ……」



信長は秀吉にダイヤを渡し順番にさくらへの思いをダイヤに込める。



(秀吉)(さくら、お前がいないと安土城はおろか、春日山城まで暗くなる
だから、戻ってこい!いっぱい甘やかしてやる……)


次に政宗



(政宗)(さくら、お前がいねぇと花見での料理作れねぇーよ……お前の笑みが見れないのは堪えるだから戻ってこい!)



次に家康




(家康)(まだあんたにお礼言ってないんだけど、早く起きてあんたの呑気な顔を見せてよ)



次に光秀



(光秀)(お前がいないとからかえなくなる
だから起きて顔を見せてくれ)



次に三成




(三成)(さくら様、貴方がいないと私は
元気がなくなります、目を覚まして元気な姿を見せてください)




次に信玄



(信玄)(俺達の巫女……
目を開けてくれ、お花見……するんだろ?)




次に幸村



(幸村)(お前がいねぇと、こいつらと花見をしても意味がねぇ、だから帰ってこい)



次に義元



(義元)(美しい君を失うのは忍びない
だから、戻ってきてきみの笑顔を見せてくれ)



次に佐助



(佐助)(きみの笑顔を見るまで俺も信長達も
余裕じゃないだから、起きてみんなで花見を楽しもう)



次に謙信



(謙信)(お前は俺達の光でもある、そんな
お前がいなくてはこの地に希望はない
だから、戻ってこい)



そして、最後に信長



(信長)(さくら、貴様がいなければあの日の願いは成立しない……そして前にも言ったが
俺は貴様を愛している
だから、戻ってこい!)



信長が最後に思いを込めるとダイヤざ眩く輝く。信長はそのダイヤをさくらへと持っていき、その光をさくらに移す。


すると、その光はさくらにすっと収まった。



(信長)(俺達はできることをやった
あとは、貴様次第だ……)










一方、さくらは真っ黒な空間に立っていた




(さくら)(ここは……)




(さくら)(そうか、私は力全部使って……
死んだんだ……)



さくらが死への道を歩こうとすると……
後ろから眩い光が放たれた。



(さくら)(これは……みんなの思いが光になって……)




さくらは知らない内に涙を流していた。




(さくら)(そうだ……お花見……
信長様……会いたいよ)



さくらは真っ直ぐに光の方へと歩いていく。
そこで視界はフェイドアウトしていった。










変わって安土城の天守





(さくら)『ん……』



(武将達)「!?」



さくらが身動ぎをしたことに武将達は
目を見開く。



(さくら)『ん……信長……様?』




(信長)「あぁ、なんだ?」




その瞬間、さくらの目から涙が溢れてきた。



(さくら)『わ、私……もう信長様やみんなに会えないかと……』



(信長)「さくら、それはこちらの台詞だ」



(さくら)『え……?』



(謙信)「お前がいなくては、この日ノ本に希望はない……よって楽しめるものも楽しめん」



(さくら)『信長様……謙信様……』




(信長)『花見……するのだろう?』



(さくら)『はい……はい!皆さんと……お花見がしたいです!』



(政宗)「よし!そうと決まれば花見での料理を作んなきゃな!」



(佐助)「あ、政宗さん、俺も手伝います」




(政宗)「おう!助かるぜ」




(家康)「俺はさくらに使う薬を作りにいきます」



(光秀)「俺はあの男を尋問しに行こう
そろそろ起きてる頃だろうからな……」



(秀吉)「俺も光秀と行こう……」



(三成)「私は剣術の腕でも磨きに行きましょう」



(幸村)「お!いいなそれ!俺も混ぜてくれ」



(謙信)「抜け駆けは許さんぞ……
三成、俺と信玄も混ぜろ」



(信玄)「あぁ、ぜひ入れて貰いたいものだな」



(義元)「俺は美しいものを見ているとしよう……」




そうして皆が散り散りになり、天守に残ったのは信長とさくらだけになった。

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