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第1話

予想外の出会い
1,835
2021/03/02 13:05
(さくら)『う、うーん……』


さくらは少し痛む頭を押さえて起き上がった。


(さくら)『ここは……それに焦げ臭い』


さくらは辺りを見回す、ある視線の先にあぐらを組んで眠っている人を見つける。


襖の奥には刀を持った人影が見える。


(さくら)『危ない!』


(?)「誰だ、貴様は」


(さくら)『そんなの後でもいいでしょ』


さくらは男性の手を引っ張り建物の外を目指す。


そして、建物の外……


(?)「護衛を手にかけ近づくとは……女手を離せ」


(さくら)『あ、すいません』


さくらは掴んでいた手をぱっと離す。


(?)「どうやら俺は貴様に救われたようだな……礼を言ってやる」



(さくら)「礼は要りません……体が勝手に動いていただけですから
それより、あなたは誰ですか?」


(?)「呆けた顔をするな、俺の名は知っているだろう……」


(さくら)「いえ、存じておりませんが……」


(?)「知らずに助けたのか
まあいい……知らぬのなら教えてやる」


(さくら)『いえ、結構ですので』


(?)「妙な女だ……俺にそのような口を聞いた人間は貴様が初めてだ

俺は安土城城主 尾張の大名 織田信長
これから天下統一を果たす男だ」


(さくら)(織田……信長……
そうか、私は戦国時代に……飛ばされちゃったのか)


(信長)「それより、この俺が名乗ったのだ、次は貴様の番だろう……貴様 名は……」


(さくら)『月島……さくら』



(信長)「さくら……か
悪くないに響きの名だな……」


信長はさくらの顎を指でくいっと上げる。


(信長)「貴様……」


信長の目には全てを諦めたような絶望に染まったさくらの瞳が映った。


(?)「信長様!」


(信長)「三成?」


(三成)「秀吉さまの命令で参りました
よくぞご無事で……
そちらの女性は?
ご一緒に本能寺から出ていらっしゃるが見えましたが……?」


三成と名乗るものは信長の前で膝まずく。


(信長)「何者かは俺も知らん
だが、この女が俺を刺客から救い外へ連れ出したのだ」


(信長)「さくら、俺の配下のものに挨拶しろ」


(さくら)『どうして……』


(信長)「俺に従わない気か貴様」


(さくら)『……』


(三成)「私は石田三成と申します」


(さくら)「私はこの時代の人間ではありません」


(信長)(三成)「は?」


信長と三成は口を揃える。


(さくら)『まあ、別に信じてくれなくて結構です』

(三成)「火事に巻き込まれて怖い思いをしたからでしょうか
おいたわしい……」


(信長)「ますます面白い」


心配顔の三成に対して
信長は涼しい顔をしている。


(信長)「これほどの大たわけ
初めてあった」


信長はさくらの顔を見て笑いだす。


(三成)「まずはお召し物の替えを配下の者に用意させますね
身なりを整えればお気持ちも落ち着くはずです」


(さくら)(やっぱり信じてはくれないか……ま、別にいいけど)


さくらはふと視線をそらす。


すると天幕から白い服を着た男が入ってきた。

(?)「御館様、ご無事でしたか」


(信長)「光秀……?」


(光秀)「敵に狙われていると聞き、馳せ参じましたが……

慌てる必要はなかったようですね」


(信長)「笑わせる
これまでに貴様が慌てたことなど一度もないだろう」


(さくら)(今度は……明智光秀……か)


(?)「信長様!お怪我は!?」


今度は緑色の服を着た男性が入ってきた。


(信長)「秀吉か……大事ない」


(さくら)「豊臣……秀吉」


(秀吉)「……何者だお前?
俺を知ってるのか」


(さくら)(いけない……)


(信長)「この女のことは気にするな」


(秀吉)「それより、光秀
どうしてお前が京にいる

信長様暗殺の報を耳にして飛んできた
だが……お前まで京へ向かったとの報は
俺は受けていない」


(光秀)「何が言いたい?」


(秀吉)「後ろ暗いところがないと信長様に誓えるか?」


(さくら)(あまり、覚えてないけど
確か……史実上では明智光秀が信長を打った張本人だよね……)

(光秀)「後ろ暗いところがない人間なんてこの乱世にいるのか?」


(秀吉)「はぐらかすな
いい加減腹の底をさらせ
万が一信長を手にかけようとしてたのがお前なら容赦しない」

秀吉は刀に手をかける。


(さくら)『その人じゃないと思いますよ
着物が違ってたから……』


(秀吉)「口を出すな……さくらとか言ったな
お前もあとで何の目論みで信長様に近づいたか確かめる」


(信長)「やめろ秀吉
光秀がここへ来た思惑はどうあれ
俺は『いいですよ』……」


信長の言葉を遮りさくらは言葉を綴る。


(信長)「さくら……いいとは?」


(さくら)『豊臣秀吉さん、あなたは
素性もわからない私を信長様の敵だと
思っているのでしょう?』


(秀吉)「当たり前だ」


(さくら)『なら、事情聴取なんてまどろっこしいことはしないでその持ってる刀で斬れば済む話じゃない?』


(光秀)「ほぉ……自ら死を選ぶか」


(さくら)『少し確かめたいことがあるの
そんなに私に敵意があるのなら思い切り刀でかかってきてください

ただし……切れるのならの話だけど』


(秀吉)「そこまで言うのならいいだろう
信長様、許可を」


(信長)「構わん」

そんなやり取りを三成は心配そうな顔で見ている。

秀吉が自身の刀を抜きさくらめがけて走る。


(秀吉)「覚悟!!」


だか、秀吉の刀はさくらに届くことはなく
その一歩手前で止まった。


(信長)「止まった?」


(さくら)『……やっぱりか』


秀吉も刀が届かないと分かったのか刀を納める。


(秀吉)「何だったんだ今の……
まるで見えない壁に阻まれたような」


(信長)「今のが貴様が言っていた確かめたいことか?」


(さくら)『まあ、そうですね
でも、無限には使えない……』


(信長)「そうか、まあ、何がどうあれ
この月島さくらは未来から来たと抜かす大たわけでおれの命の恩人だ……
幸いを運ぶ女に違いない、気に入った」

信長はさくらを引き寄せる。


(信長)「貴様、天下人の女になる気はないか?」


(さくら)『せっかくのお誘いですが
お断りします……では私は失礼します
(゜-゜)(。_。)』


秀吉 光秀「さくらっ!」


さくらはまるで心を閉ざすように挨拶して
その場を駆け出した。


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