渡辺side
俺には今年大学生になる妹がいる
それはもうめちゃくちゃかわいくて
俺は自他ともに認めるシスコン兄貴
でもそんな妹にもひとつだけ問題が、
あなた「 翔にぃおはよ〜 」
『 はよ 』
ふにゃっと天使みたいな笑顔を見せたあなたは
俺が作った朝ごはんを食べ始めた
ここまではいつものルーティーン
問題はここからだ
あなた「 ごちそうさま!! 」
『 美味しかった? 』
あなた「 うんっ 」
『 ならよかった 』
あなた「 顔洗ってくるー 」
そう言って洗面台に消えていったあなたを追う
『 あなた、これ 』
あなた「 、、いらない 」
『 大学生になったら使うって言ったのだれ? 』
あなた「 私そんなこと言ってないもん 」
『 肌荒れるぞ? 』
かわいいかわいいあなたの問題というのは
洗顔は水だけで済ませそのあとは何も塗らない
まったく肌の手入れをしないのだ
高校生までは大目に見ていた俺も
今日からはさすがに甘やかしていられない
あなた「 荒れたことないし 」
『 確かにあなた肌綺麗だけどそれとこれとは別 』
『 これは常識なの、わかる? 』
あなた「 わかんない 」
何を言っても動じないあなた
痺れを切らした俺は両手に美容液をつけて
逃げるあなたを追いかけた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!