「 私、やっぱり
諦めるしかないのかな… 」
「 なるほど… 」
「 わかった、やってみます!
ありがとう、なみ姉! 」
波花は、お金持ちなのに
親しみやすくて人気者。
女子からの相談が絶えない。
恋の悩みから友達、バイトや美容まで
なんの相談にも乗る聞き上手。
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俺は、あの日の胸のざわめきを
思い出すと、止まらなくなっていた。
そんなとき、教室のドアから
俺の名前が呼ばれた。
教室内がざわついた。
「 やっぱ長谷川もミコトさんと
関係あんじゃん… 」
「 当たり前でしょ、エースだよ? 」
そんな声も聞こえたけれど、
と、手を掴まれて
外の小さなテラスに出た。
え?自分は今なんて言った?
この美人極まりない彼女に、
とんでもないことを言ったと思う。
あははっ、と笑って
手を振って帰っていく彼女は
やっぱり俺を惹き付けた。
待ちに待った週末、
私服の彼女は、お嬢様なだけ
あってとても綺麗だった。
意外と明るくて、そんなところも
引き寄せられるな、と思った。
興味津々な雰囲気で
次々に質問してくるけれど、
好きな人なんて、目の前にいる。
そ、そっち!?
まぁ、彼女には関係ないと
思うけれど。
" エース頑張れ! "
の笑顔の破壊力、とてつもない…
今日一日、
このカフェで過ごしてしまったけれど
大丈夫だっただろうか。
つまらなくはなかっただろうか。
他愛のない話をたくさんした。
お互いにどうでもいい話も、
興味のある話も。
お互いの、少しの沈黙。
意を決したように、彼女が話し出した。
な、何を言っているんだ自分は。
こんな事を伝えても、
迷惑ばかりでしかないのに。
体中に、雷が
落ちてきそうな思いだった。
この、切ない思いはなんだろう。
ここ最近で一番つらい出来事だ。
彼女とはそこで別れた。
いつも、振り返り際に
手を振ってくる彼女の姿に惚れていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!