自分のせいって、辛い。
誰にも邪魔されない生き方は、
誰にもできない。
( 水沢ミコトは、二股してたってことだ! )
えーっ!
という声と、ざわざわというどよめき。
生徒二人に腕を掴まれ、
動けないし怖い。
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そこには、生徒二人に
腕をつかまれた彼女がいた。
他の生徒たちに囲まれ、
どうしても入れない。
まさか、自分のことが
絡んでいるとは思わなかった。
なんとかして
誤解をといて、彼女を助けたい。
君は、倫也の婚約者なのだから。
でも、前に行けない。
自分の心も、前に進めないんだ。
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( うるせえ!水沢ミコトを
この学校から追い出す! )
私は、この学校を
自分から辞める前に、
追い出されるんだ。
( おい、みんな聞いたか!
水沢ミコトは、この学校をやめるそうだ。
じゃあ最後にこの学校を荒らした責任を
とってもらおう… )
長谷川くんも
助けに来れない。
波花も蒼も漣も
来れないんだ。
なら、自分で人の恨みが
晴らせるなら、それでいい。
数秒待ったけど、
誰かの気配がして目を開けた。
倫也くんが
私の腕をつかむ生徒たちを
倒しているところだった。
( なんだと…! )
私の隣から離された男子生徒は
倫也くんに、反撃しようとした。
倫也くんはそれを避けて、
生徒たちは倒れ込んだ。
名前を呟けることにほっとした。
目の前に倫也くんがいること、
ありえないのに、現実のこの様子が
とても安心した。
生徒たちが去ってから、
安心して、意識が遠くなった。
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前に進めなかった。
自分の体も、心も。
彼女には、倫也がいるんだ。
俺は、必要ないんだ。
だからもう、身を引こう。
何も言い返せなかった。
本当にそのとおりだ。
自分は何もしてやれなかった。
諦める。
彼女は下を向いて、何も言わなかった。
倫也は、彼女をお姫様抱っこして
学校を出ていった。
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倫也くんに車まで運ばれている間に、
意識が復活した。
私が、言った言葉だった。
倫也くんは、素晴らしい人だ。
素晴らしい、婚約者だ。
別れを告げてしまって、
できなかった、波花と考えた
あの作戦を実行しよう。
大好きな、尽くしたいこの人に。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。