( どういうことなのこれは )
( あなたが謝ることじゃないでしょう。
…あら、ミコトさんやっと来た )
( この写真、どういうことか
説明してもらおうかしら? )
( あら、そう……
そういう関係にはない、という事で? )
( …それならわかったわ
帰って結構よ )
寄るところなんてなかった。
倫也くんに
これ以上合わせる顔がなかった。
長谷川くんにも、会いたくない。
鈴峰家から出て
一人で帰った。
ゆっくりと、そう言って
私の正面に立って
手を取った。
私もゆっくり、小さく頷いた。
フフッ、と笑ってそう言った。
恥ずかしかった、いつも
恥ずかしいのに、
その言葉は咄嗟に出ていた。
少しムッとした顔をして、笑いあった。
でも事件はまだ、終わっていなかった。
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次の日の朝、
私が登校してくると、
みんながそわそわして
目をそらしてきた。
私を見つめる人々の目や顔から
不信感が溢れていた。
漣に腕を取られて
波花のカウンセリングルームに
入った。
この学校を
出ていくことはできない。
私の父親の会社が
世出始めた理由は、この学校の
おかけだからだ。
かの有名な蘭ノ園学院の
制服が変わる。
そこでデザインを任されたのが
私の父、水沢アパレルだった。
お父さんのきっかけになった
この学校、この制服は手放さない。
倫也くんと、離れたくない。
絶対に、一緒にいたい。
本人に言えたことはない。
でも、一緒にいたい。
私は大きな決断を、
自分で下さなければならなくなった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。