第2話

知りたくない
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2020/05/31 10:00



モニター越しに母を見て、フラついた私を支えてくれたしげちゃんは、私を自室へと促した。





重岡)部屋で待っときや?‥話終わったら、迎え行くから。



あなた)わかり、ました‥‥






部屋に戻ろうとした。

だけど私は、まだ夢の恐怖が抜けない‥‥。。




だから、みんなから見えない、階段の陰へ座り、聴き耳をたてていた。








家の中へ入ってきた母は、

テーブルへ座り、メンバーさんと8人で机を囲っていた。







淳太)‥‥俺らの家、知ってたんすね


母)あの子のあと、つけてたから


濵田)ストーカーしたっちゅうことか?


母)あの子は気づいとったけどね。、、ははっ、やっぱ何も言ってないんだ、信用されてないんじゃないですか?






そんなことない!

信用してない、とかじゃなくて‥迷惑、かけたくないだけ‥‥。






重岡)で、そこまでしてに会いに来た理由なんなんすか?


母)あの子の進路のことなんだけど、進学させなくていいから


淳太)中卒でええってことか?


母)お金なんて出せないし






今までだって出したこと、ないくせに‥‥


私を捨てる時、父が残してくれていた通帳さえ、隠した人なのに‥。。







神山)今まで通り、俺らが出します。



母)あの子にそこまでする価値あるの?



神山)‥‥え?、、







家の中は、瞬きの音も聞こえるほどの空間な気がした。






そんなの‥‥無いのかな。。

だから、メンバーさんは何も、答えないんだよね、、。。







今日見た、夢のせい?


母に捨てたれた、あの日の夢。




やっと、みんなと打ち解けられたのに。

みんなと旅行行けて、タメで話せるようになって、名前で呼べるようになって。


冗談だって、言えるようになったのに。






‥‥全部、怖くなっちゃった。







いつか、いなくなるって、私を置いて、いなくなっちゃうって‥‥脳裏をよぎるの。











あなた)もう、帰ってよ‥‥



いつの間にかリビングへ降り立ち、母と向かい合わせになっていた。





母)‥は?



あなた)皆さんを困らせるようなこと言わないで!





さっきの質問で、皆さん、一瞬困った顔してたんだもん。

‥‥何か私に対して、思うところがあるってことでしょ?、、





母)今まで育ててやった恩はないの?



あなた)育ててもらった覚えないんてない!ただのモノとしか思ってないくせに!






自分でも驚くくらい、こんなにも人に対して感情をぶつけたのは初めてだったかもしれない。



そんな私に、母は立ち上がり、私の胸ぐらを掴んで持ち上げた!






母)あんたなんて、育てる価値もないのよ!この人たちだって、そう思うから何も答えないんでしょ?





っ!!‥‥





母)所詮、誰にとっても『いらない子』なのよ






そう、吐き捨てられるのと同時に、私の体も投げ出された。











桐山)大丈夫か?!




照史くんが上半身を起こしてくれ、その腕に軽く寄りかかりながら、遠くなりそうな意識を留めた。






母はそんな私を嘲笑い、トドメでも刺すように声を荒げて続けた!






母)だからあんたは父親にも‥




重岡)っ、おいやめろ!!






重岡さんが止めたのは遅く、

母の言葉は、私にトドメを刺すには充分だった。






母)‥‥父親にも、捨てられるのよ!!











お父さんにも、捨てられた?‥‥

そんなの、知らない。。





だって!お父さんは亡くなったって、、、










そんなのは、嘘だったの?

















桐山)おいっあなた?!しっかりしろ!!!











私は意識を手放した。






もう‥現実なんて、知りたくない‥‥。


















『いらない子』


分かってはいたけど、直接言われるのはやっぱり辛かった。



そう言って、いつか みんなもいなくなっちゃうのかな。









昔、私を探しに来た神ちゃんが言ってくれた。


「俺らの意思で、迎えに来た。」









だけど今は全部が怖い。

WESTの皆さんに、出会った頃みたい。






みんなが優しかったからこそ、

愛を沢山くれたからこそ_____


















私の頬に、光の筋が零れた。









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