なんとか授業を終えた。
今日は安西先生(顧問)と話さなきゃいけないから! とだけ言って梨花達とは一緒にお昼を食べなかった。
…本当は昼休みに先生と話すから別に食べれたけど、みんながいる時に薬を飲むのが嫌だった。
(顧問)「話って何?どうしたの?」
私は病気のことを先生に全て話した。
(顧問)「それで辞めなきゃいけないのね…正直、咲はこの部活に必要な人だし、続けて欲しかったけど…仕方ないよね…。」
(私)「私も…続けたかった…です…。」
涙がこぼれた。
(私)「明日、パートの子には辞めるってことだけ言おうと思ってるんです。」
(顧問)「わかった。」
(私)「それと…病気のこと、みんなに言わないでください。」
(顧問)「…わかった。絶対言わない。」
次の日の部活。
和樹も含めたパートのみんなに、私は話があると切り出した。
(私)「ごめん、きいてほしいことがある。」
もう既に泣きそう。ぐっとこらえる。
(私)「私、宮田咲は今週中に…」
ポロッ
(私)「部活を…やめ…る事に…なりまし…た…」
1度泣いてしまうと止まらなくなった。
(皆)「なんで…?」ザワザワ
(私)「今は、…まだ、言えな…くて…そのうち分かると思う…」
(私)「こんな時期に…突然…ごめん…」
(私)「後任のパートリーダーは皆で…決めて…。」
涙が止まらない。みっともないって分かってるけど…止まらなかった。
(後輩)「辞めないでください先輩!!」
(和樹)「なんで辞めんだよ!」
(私)「ほんとに…ごめん…私、部活も、このサックスパートも大好きだった。本当は辞めたくない…辞めたくない!! でも…もう辞めなきゃいけないの…。ごめん、ごめん…」
(私)「私が部活やめることほかの人には絶対に言わないで欲しいの…。みんなの事は信頼してるから。」
私は逃げるように部屋を出た。
ちょうど片付けの時間だったし、もうこれ以上耐えられなかった。
(和樹)「咲!! なんで、なんで辞めんだよ!!」
和樹が追いかけてきた。
聞こえないふりをしてたら腕を掴まれた。
(和樹)「俺にくらいは言えよ!? ずっと一緒にやってきたじゃん…」
どうしよう、この優しさに甘えていいんだろうか。 でももうどうせ死ぬなら、和樹には言おう。
(私)「ここでできるような話じゃないの。今日部活終わったら帰りながら話すから…。」
(和樹)「わかった。」
帰り道。
(私)「…あのね。」
私は安西先生に話したことと同じようなことを和樹に話した。時々泣いてつっかえてしまったけど、和樹は黙って頷きながら聞いてくれた。 話しやすかった。
和樹のこういう所がきっと私は好きなんだろうな。
(和樹)「そうなんだ…。何も知らなかったのに口挟んでごめん…。 俺に出来ることならなんでもするから、困ったら俺のクラスに来いよ。」
(私)「うん、ありがとう。」
少しだけ、心が軽くなったような気がした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!