ナムからあなたと僕の荷物を受け取り、あなたの家に向かった。
背中にあたるあなたの体温が熱いことは、はっきりと分かる。
背中にあなたをおんぶし、腕に二人分のスクールバッグをかけると、
かなりの重さになる。正直めっちゃ疲れた。
けど、たまに出す苦しそうなあなたの声を聞くと、そんなことも言ってられなかった。
か細い声で答えるあなた。
意識があることに一安心した。
きっと体に力が入らなくなって倒れたのだろう。
鍵を取るためとはいえ、好きな女子のカバンを開けるのは勇気がいる。
グズグズしていられないと自分に言い聞かせ、カバンを開けた。
やっぱりあなたは律儀だ。
教科書もノートも筆入れも、全て整って入っている。
小さなポケットから鍵を取り出し、ドアを開けた。
好きな女子の家に入るのも、そうとう勇気がいるだろう。
けれど、背中で苦しんでいるあなたを早く楽にしてあげたい。
その気持ちが強かった。
中は青と白と黒で統一されていて、シンプルな部屋だった。
決して広くはないが、余計なものを置いていないせいか広く感じる。
壁際にあったベッドにあなたを寝かせる。
意識はあったが、朦朧としていたのだろう。
ここまでの記憶はあまりないみたいだ。
テーブルに置いてあった熱冷まシートを貼る。
昨日ユンギヒョンが使った残りのやつ(と、思われるもの)が数枚入っていた。
何か食べるものや薬を買ってこないと。
そう思って立ち上がろうとすると、腕を掴まれた。
腕を掴む力は弱いが、しっかりと握っている。
よほど苦しいのか、ハァハァと息をしながら言うあなた。
目は閉じたままだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!