あなたside
ここはどこなのか分からなくなるくらい
自分を失ってしまうくらい
ひとりぼっちが嫌い
すぐ帰ってくるからね
それだけを言うと大好きな両親が姿を消した
私が小学1年の時
その日は大雨で雷もなってた
一人暮らしのおばあちゃんが心配で
両親が家を出た
もちろん、私もついていく予定だった
おばあちゃん家はそんなに遠くなくて
車で10分もかからないくらい
すぐ帰ってくるなら…って思って1人でお留守番してた
だけど…両親はいつまで経っても帰ってこなくて
強い雨と強い風と強い雷が余計に私を不安にさせて
私は寂しくなって、呼吸が荒くなって、泣き出した
その時に私を支えてくれてたのが親友の穂希だった
穂希はひとりぼっちの私の背中を優しくさすってくれて
大丈夫、大丈夫って声をかけてくれた
穂希の家はすぐ隣で、両親が穂希のお母さんに
あなたが1人で留守番してるからって声かけてったらしい
それで穂希と穂希のお母さんは私のとこに来てくれた
1本の電話が鳴り響いた
穂希のお母さんが出ると
涙を流しながら電話を切った
誰かが私を呼んでる…
あの日のことを思い出してしまったせいなのか
やっぱり私はしゃがみこんで泣いていた
泣き崩れている私を優しく包み込んでくれた
その言葉はどこか焦ってて
もう離さないからって言ってるようにも聞こえた
ねぇ平野先輩
私、平野先輩と付き合ってなくても
ずっとこうやって近くに、そばにいてくれるなら
このままでもいいです
あとから走ってきた海人くんが心配そうに見つめる
平野先輩は海人くんを指さした
ていうか…これってある意味
やきもち?
的な?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。