〇トリ
こうしてみんな別れたけど…大丈夫かな。
というより、、、
僕をつけた理由…?
おそらくいちばん強いであろうグクさんを私と同行させるのは、ハトから守るため?
私は足を止めた。
グクさんにどうかしましたか?と聞かれたような気もしたが、私は答えなかった。
私が見ていたのは子供を肩車しているお父さんとその上ですごくはしゃいでいる子供。
私は下を向いていた頭を反射的に上にあげグクさんの顔を見た。
でも…そう言ってグクさんは少ししたに俯いた
グクさんは寂しそうに眉を下げた。
あ、とグクさんは顔を上げ今度は申し訳なさそうに眉を下げた。
グクさんが両親を殺めた?
それはどういうことだろ…
少し気になってしまう。
そんなの考えても仕方ないが、、、グクさんに聞いてみようかな…そう思った。
…でも聞けなかった。……私にも兄弟がいたから。
私には兄がいた。その兄は私のために尽くしてくれた。中学3年まで。
私が中学2年生になる頃。兄はハトに殺された。
1つ上の兄はいつも私と家に帰っていた。
でもある日、お兄ちゃんの元に1人のハトが現れた。
そして、お兄ちゃんは私を家と真逆の方に逃がしてくれた。
そのあと、兄は私の前に現れなくなった。
学校にも、家にも、、、
何年後かに兄に似た人を見たがそれは全くの別人だった。似ているのは優しい顔だけだった。
そして、兄がいなくなって何年か経たないうちに両親が死んだ。
病気で死んだと聞かされた。
私の周りはいつも不幸だらけ…もしかしたらこの人達も…とさえ思ってしまっている。
グクさんはもう一度すいませんとだけ謝った。
胸に拳を勢いよくつけて、爽やかな笑顔で笑った。
私の右目から1粒の涙が流れた。
グクさんが慌てて聞いてきたけど、私にも理由がわからないため分かりませんと答えた。
そのあと私達はうちとけてお互い呼び捨て、敬語なしで話すことになった。
ちょっと距離が近くなって嬉しかったり…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。