先生にあのスライドを作った人を聞いた。
「6組の中田組んだよ」って。
聞いた瞬間に6組に向かった。
階段を昇ったあとはやっぱり頭が痛くなって、ついには息苦しさまで襲う。
「中田さん、謝って。斗真に謝って。」
「うっせーな。後にしろよ」
「まって、はやく、謝って、斗真に」
「しつけぇんだよ」
「まっっ…」
走って逃げてしまった中田さん。
今の僕は走って追いかける体力もなくてここは諦める。
放課後。
「今ならいいでしょ?誰もいないし。」
「はやくしろ」
「あのポスター、中田さんでしょ?」
「だったらなんだよ」
図星だ。
「斗真に謝って。傷ついてる。」
「は?なんで今更。あいつが傷つくこと本当は嬉しいくせに」
「嬉しくなんかない!」
「綺麗事並べてんじゃねぇよ」
「綺麗事じゃないよ。とりあえず、謝って、斗真に。僕には謝んなくていいから。」
「あたりまえ。お前になんか謝るわけないじゃん。誤解されるお前の信頼度がないだけなんだから(笑)」
「知ってる。だからせめて斗真に謝って。」
「お前のお願いなんて誰が聞くかよ。くたばれ」
そう言うとカバンを持って出ていこうとする中田さん。
「謝れよ、俺に。」
斗真?
「さっさと謝れよ」
「と、とうま…」
「あいつになんか謝んなくていいから俺に謝れよ」
「ご、ごめん。あんなことして。」
「分かった。もー行け。俺の前に二度と現れんな。」
走り去って行く中田さん。
近付いてくる斗真。
「かず…」
「ごめん、また今度。」
久々にかずと呼んだ斗真。
それを遮って僕は逃げた。
正直、僕にも謝れって言って欲しかった。
自分だけ謝ってもらおうとして。。。悲しかった。
それだけの理由で僕は逃げた。
熱が出ていたとはいえ、ちっぽけな理由でそこまで頑固になる自分は馬鹿だ。
自分がちっぽけで情けないやつだってことを、降り出した雨が気づかせてくれた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。