カチャッ。カチャッ。
静かな部屋にプリントをまとめるホッチキスの音だけが響く…
「ねぇ。先生…。」
「んー?」
ホッチキスの手を止めないまま、先生が返事をした。
「大人って…ずるいよね…。」
「んーそーだな…。…ん?笑笑」
「だーかーらー。大人はなんだかずるいって言ってるの!さっきだって、私がヤキモチ妬いてるのをキ、キ、キスで治したじゃん!」
「ははは笑笑そうだなぁ〜ずるいかな笑笑」
「そーですよ!先生とかヤキモチ妬いたこと無いでしょ?私なんか、毎日先生にハラハラさせられてるのに…」
「いや……あるよ…。」
先生は手を止め、私の目を見て恥ずかしそうに言った。
「え〜?ホントに?笑笑」
「ホントだよ。だってそのスカートの丈とか…化粧とか…最近可愛すぎるし…クラスの男どもに見せたくない…。」
え。メイクとか、スカートとか気づいてくれてたんだ!
「そんなところにヤキモチ妬いてるんですか?変なの笑笑」
「悪いかよ!野崎のこと誰にも見つからないところに隠しておきたいくらいだよ…!」
…可愛い笑笑
「ふふふ。嬉しいです。これからは、スカート折るのとかメイクとかやめるね。」
「お、おう。」
私の言葉を聞いて安心したように、笑顔になった。
可愛い…愛おしい…。
「先生も、あんま女子と喋んないでほしいな。仕事だから、仕方ないけど極力は…ダメかな?」
「分かったよ笑笑極力喋らないようにしてやるよ。野崎のために。」
「しゃッ!」
私がガッツポーズをしたら、先生が笑った。
「ふははは笑笑なんだそれ。
あ、そーだ。今度の日曜どっか連れて行ってやるよ。あんま近いところはダメだけど。」
「え!いいの⁉︎じゃあ…遊園地!」
「笑笑ベタだな〜」
「う、うるさい!女子はベタが良いんですよーだ!」
「はいはい。分かりましたよーだ笑笑
じゃあ、遊園地な。また時間とか近くなったら決めよ。」
「はーい。」
「プリント整理もあとちょっとだし。もう帰って良いぞ。」
「うん!じゃあ、さようなら!」
「また、明日…あ、待て!」
「え…?」
先生が駆け寄ってきて、私にハグをした。
「野崎…好きだよ…。」
先生…。
幸せすぎるよぉぉぉ!
「私も、伊藤先生。大好きです。」
「♡!ヤベェ。家に返せなくなりそう…。ダメだな!ほいっ!さようなら!」
先生が雑に離した。
「ちぇ〜。はいはい。さようなら。」
こうして先生の部屋から出た。
なんか、幸せ過ぎて壊れそうで怖いくらい…。
にしても、日曜日が楽しみだなぁ〜とか、ひとりで考えながら帰った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!