屋上から戻ったあと俺はあなたを優しく抱き上げ、
病室のベッドにゆっくりと寝かせた
彼女の肩に毛布をそっとかけ、
呼吸を整えている彼女の顔をじっと見つめていた
息は少し荒く、声にもわずかに震えがあった
だが、それ以上に彼女の顔には、
確かに満たされたような安堵の表情が浮かんでいた
そう返すと、あなたは少し笑って、照れたような顔で俺を見つめた。
俺の手が、彼女の頬に触れる
その暖かさに、あなたは目を閉じて、
その感触を胸の奥に刻もうとするように静かに頷いた。
しばらくしてーー
あなたが少し浅く息を吐いた
でも、その声はどこか遠くて….
俺の目に、彼女の顔色が急激に青ざめていくのが映った
すぐにナースコールを押す
扉が開き、看護師が駆けつけた
“ 体調どうですか? 血圧と酸素、確認しますね――”
酸素濃度が急落していた。
すぐに酸素マスクが装着され、看護師の声が病室に響く
“ ちょっと、今日頑張りすぎたかもしれませんね……”
看護師は優しく言ったけれど、目の奥は明らかに緊張していた
俺は手を握りながら、彼女の目を見つめる
でも、そんな言葉ではどうにもならないほど、
彼女の体は徐々に、限界に近づいていた。
たったあれだけのことで、こんなにも――
悔しさと不安が胸の奥から押し寄せてくる
あなたの手は、俺の手を弱く握り返すだけで精一杯だった
涙が、頬をつたう
あなたのではなく、俺の
自分を責める思いと、
彼女への想いと、
どうしようもない現実の重さに、涙が止まらなかった
もうすぐ限界なのかもしれない
なのに、俺はなにもできない
手を握るしかできない
呼吸が乱れ始め、モニターが淡々と数字を示す
看護師が再び入ってきて、医師を呼ぶ
“登坂さん、一度席を…..”
たとえどんなに苦しそうでも 目を背けたら、
あなたが一人で旅立つことになってしまう気がして
それだけは、絶対に嫌だった
その夜、
あなたは酸素吸入と点滴を追加され、
寝返りも困難なほどに体力を消耗していた
担当医師の説明では
“一時的な体力低下ではあるが、慎重に経過を見守る必要がある”
とのことだった
俺はその夜、付き添いを申し出た。
ソファに丸まって一睡もせず、彼女のそばを離れなかった。
彼女の小さな冒険――
それは、彼女にとってはかけがえのない大切な想い出
でもその代償は、あまりにも大きく、現実は容赦なく重たかった。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。