夜の病室はやっぱり静かで、
点滴の機械がわずかに規則的な音を立てていた
街の賑やかさはここまでは届かず、
まるで世界の外側にふたりだけ取り残されたような
そんな不思議な静けさだった。
と、ベッドに寝転んだあなたの声がかすかに響いた
彼女は薄手の毛布を肩にかけながら、
ゆっくりとベッドから起き上がろうとした
その動きにすぐさま気づいた俺は、すぐに傍に駆け寄って背中を支える
そんな俺をよそに
小さく「あのね…..」と声を絞り出した
それを聞いた俺はすぐに立ち上がった
廊下に出て、
いつも優しく接してくれる看護師さんに頭を下げた
看護師さんは少し迷ったあと、
あなたのカルテを確認しながら静かに頷いてくれた
“今日はあなたちゃん調子も良さそうだったし、…..気をつけてあげて、時間は短くね?”
病室に戻ると、
あなたに優しく微笑んで、行けることを伝えた
あなたの目がパッと明るくなった。
おみはそっと彼女を抱きかかえるようにして車椅子へ乗せ、毛布をかけた
上着もしっかり着せて、マフラーも巻き、防寒対策はバッチリ!
そしてナースステーションに一礼しながら、
ゆっくりと廊下を進んでいく
看護師さんたちはみんな優しい笑みを向けてくれた
エレベーターが静かに上昇し、
屋上階で扉が開いた瞬間、
冷たい夜風がふたりを包み込んだ
病棟の屋上には、誰もいなかった
遠くのビルが瞬いているその上に、満点の星空が広がっていた
俺は車椅子を屋上の柵の近くまで運び、
自分もその横にしゃがんで、彼女の顔を見上げた。
あなたはかすかに微笑んで空を見上げていた
その頬に風が触れ、薄く色を戻していた
しばらくふたりは、黙って空を見つめた
風の音だけが響く
やがて、あなたが小さく囁いた
あなたが俺の手をぎゅっと握る
少し冷たいその手を、俺は両手で包み込んだ
その言葉の途中で、声が震えた
堪えていた涙が頬をつたう
あなたは黙って俺の手を握りしめたまま、涙をこぼした。
彼女の頬をなでる風が、まるで静かに慰めるようだった
その夜、ふたりの影は屋上のタイルに寄り添うように伸び、星の下でゆっくりと重なっていた。
それは、時間が止まったような、静かで深い夜
それでも、紛れもなくそれはふたりだけの夜だった











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!