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2020/05/30

第2話

 終わらないでくれとどんなに願っても、時間は私たちなぞに目もくれず進んでいく。楽しい時間も幸せな瞬間も関係ない。あっというまに終わっていく。光希はそのことを強く感じていた。終わりが近づいている。自分で決めた「終わり」とはいえ、いまの光希にとってそれはひどく残酷なことのように思えた。
幹事
じゃあもうそろそろ、お開きにしまーす!久しぶりに集まれてよかった!!これから社会人生活、頑張りましょー!!
 それぞれ仲の良かった数人でかたまり、会場を離れる。光希も例外ではなかったが、佑月は気を利かせたらしく夕陽とふたりだった。
夕陽
楽しかったー!意外とみんなあんまり変わってなかったね〜
光希
そうだね。そーいえば今日遅れてきたけどなんかあったの?
夕陽
ん〜。ずっと前から今日は用があるって言ってあったのにどうしてもってバイト入れられちゃって。
光希
そうだったんだ。お疲れさま。わたしのバイト先ここから近いんだけどさ、よかったらもう少し飲んでかない?
夕陽
ほんと!?行きたーい!
光希
よかった。話したいことあったんだ。
 大学のこと、夕陽のバイトの先輩のこと…步いているあいだに沢山のことを話した。このまま昔と変わらない関係を無理に続けてもいつか必ず抑えきれなくなる。そのときはきっと、いや絶対に夕陽を傷つけてしまう。いま抱える気持ちの大きさがその確実性を物語っていた。目的地に着く頃には、光希の決意は固く変えられないものになった。
夕陽
ここ…バー?
光希
そうだよ。けど今日は定休日だから内緒ね。
 光希がバーテンダーとして働く《フラット》は、ビアンバーというわけでは無いが女性客がほとんどだ。ドアを開けると店内はうす暗く、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。夕陽をカウンターに案内し、出したカクテルは【シェリー】。光希の予想通り夕陽はその意味を知らずはしゃいでいる。そのあとも色々な話をした。といっても光希は相づちを打つばかりで9割がた夕陽が喋っていたのだが、楽しそうに見えた光希の目は切ない色をしていた。
 夕陽のグラスが空になって3回目。光希が静かにくちを開いた。
光希
あのさ…聞いてほしいことがあるんだ。
 アルコール度数が低いものばかりだったおかげで、夕陽もそれほど酔っていないようだ。光希の空気が変わったことに気づき心配そうな瞳をして小さくうなずく。
光希
中学のとき仲良かったじゃん。部活が一緒っていうのが大きかったかもしれないけど、私はあの頃もいまも夕陽のこと大好きだよ。
夕陽
っそんなの…わたしもだよ?
光希
ふふっ。そっかありがとう。…でも、それとは別で好きだったよ。夕陽のことを避けたことがあったのはそれに気づいたから。理由を話すのもこんなに遅くなっちゃったし嫌な思いさせて本当にごめん。…ただあの頃の気持ちは…あれは、たしかに恋だった。きもちわるいって思ってるかもしれないけど、言わなきゃ終われないと思ったんだ。だから……大好き、だったよ。最後までわがままで申し訳ないんだけどね、夕陽がよければこの15分間のことは忘れて、これからも友達でいてくれないかな。
 夕陽はうつむいたまま動かない。光希の顔には一気に後悔の色がうかんだ。
光希
勝手でごめんね。こんなこと言われた後に友達なんて無理だよね。ホント、忘れていいから。もう帰ろっか。駅まで送る…のは嫌だよね。とりあえず出よ…
夕陽
無理だよ。光希のこと忘れるなんて無理。楽しい思い出いっぱいあるもん。今日だってすごい楽しかった!なのに忘れてなんて…無理に決まってるじゃん!!ずっと、光希とはずっと…友達で、いたい…。
光希
夕陽は本当に優しいね。ありがとう。嬉しいよ、これからも友達でいれるなんて。断られると思ってたから。
 夕陽を駅まで送り届けたあと。店に戻った光希がひとり飲み干したのは、【ギムレット】。
その日は久々に深く眠りに落ちた。