また、この表情。
最近のテオくんはいつも寂しそうな表情をしてる。
まるで、何かを隠してるような。
でもテオくんは、何かを隠すような人じゃないっていうのを俺は知ってる。
隠し事なんかせず、なんでも正直に話してくれる人。
だから無駄な心配はしなくていいかなって思った。
アレを見つけるまでは。
それは普通の日常を過ごしてたある日のこと。
いつも通り俺はだらだらしていた。
今はテオくんは外に出かけてて一人だった。
暇だし、部屋の片付けでもしようと思い立ち上がる。
自分の部屋を片付け終わった後、テオくんの部屋も汚かったことを思い出す。
片付けてあげるか。
なんの躊躇もなくテオくんの部屋に入った。
テオくんの部屋はすっかり綺麗になっていた。
綺麗というより、何もない部屋になってる。
前までは生活感溢れる汚い部屋だったのに…
今は家具もほとんどなくなって、すっからかんの部屋。
なんでだろう、別に家具は片付けなくていいのに
少し疑問に思うも、片付ける必要はないと思い部屋から出ることにした。
前にテオくんに借りようとしてた本、まだ借りてなかった。
今借りておこうかな、もうテオくんの許可は取ってあるし。
本棚に近づく。
借りたい本を探してる時、上の段から一冊の本が落ちてきた。本というよりノート。
元の場所に戻そう。
そう思い落ちた本を手に取る。
…あれ?これって、テオくんの日記?
遊び心でノートを開いた。
『20×× 1 / 4 ( 晴 )
今日から、日記をつけていこうと思います!
三日坊主にならないように頑張りまっせ〜』
そのあとの内容も、クスリと笑えるような内容ばかりだった。
『20×× 1 / 22 ( 雨 )
あと少しの時間。大切にする。』
…え?どういうこと?
次の日の日記に目を通す。
『20×× 1 / 23 ( 雨 )
最近ずっと雨が続いてる。俺の気持ちがさらに沈んでいく気がする。
ずっとここにいて、じんたんと笑ってたい』
『20×× 1 / 24 ( 雨 )
じんたんの目玉焼きを食べた。涙が出そうになったけど我慢した。えらい、俺!
あと何回この目玉焼きを食べられるのかな。もう食べられないかもしれないけど』
どういうこと?
頭にはたくさんのはてなマーク。
テオくんはどこかに行っちゃうの?俺のそばからいなくなるの??
不安な気持ちを抱えながら日記を読み続ける。
『20×× 1 / 25 ( くもり )
今日の朝、目がさめると涙が溢れてた。どんな夢見たかも覚えてないけどなぜか辛かった。
とりあえず、じんたんに心配させないように笑顔、笑顔!』
気がつくと俺の目からは涙が溢れていた。
いやだ、いやだいやだ。
テオくんがいなくなる?なんでよ、ずっとここにいてよ。側にいてよ。
いなくなっちゃ嫌だ。だって、テオくんは
俺の大好きな人だから。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。