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第6話

気付いた事実 ※じんside
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2018/02/02 09:45
テオくんがいなくなる。

そんな、信じられない事を知って俺は頭がプチパニックになった。
テオくんが帰ってきたら聞いてみようかな。
どこかに行くの?俺のそばからいなくなるの?テオくんは消えちゃうの?

って。
…ううん
やっぱり、辞めておこう。

今までテオくんは俺のことを気遣って俺に言わないでくれてた。

その優しさを踏みにじりたくないという気持ちと、今の俺にはテオくんに伝えたい言葉をまとめられる余裕がないし、今はやめておこう。
勝手に溢れ出る涙を拭いていると、玄関から物音がした。
扉の開く音。
テオくんが帰ってきた音。
じん
あ、やべっ…
慌てて目に浮かんでいる涙を拭く。
手に持っていたテオくんの日記を元の場所に戻し、リビングに小走りで向かった。
テオ
たっだいま〜
じん
あ、お帰り!テオくん!
テオ
ただいま、じんたん!
やめてよ。そんな笑顔で俺を見ないでよ。
テオくんはもうそろそろ消えちゃうんでしょ?
なのにどうしてそんな笑顔でいられるの?
俺を悲しませたくないから?
無駄な心配なんてしなくていいのに。
その心配が、逆に悲しくなるじゃん。
テオ
…え?じんたん?
じん
っ…ぁ、
俺は、生まれて初めて涙もろい俺の体質を恨んだ。
また溢れ出てきた涙は、俺の頬を伝う。
テオ
じんたん、どした!?
慌てて俺に近付いてきてくれたテオくんに、心配そうな顔で見つめられる。
じん
あはっ、なんでだろ…なんか、なみ、だ出てきちゃった
ちゃんと喋られているかも分からない状況で、涙をぬぐいながら俺はいう。
テオ
…何かあった?
ばか、お前のことだよ。
お前が消えちゃうからだよ。
気付けよ。
なんて言えるはずもなく、俺は無気力に首を横に振った。

肝心な時に言いたいことを言えないのが俺。
テオくんみたいに、何でも正直に言える人間になりたい。
あ、人間じゃなかった。
そう。テオくんは吸血鬼。
俺とは違う世界の生物で、人間とは程遠い生物。
俺は初めてテオくんと同じ人間じゃないことに胸が痛んだ。
もし、テオくんが人間だったら。
俺と同じ世界の人間だったら。
俺にも触れてくれて、消えないでずっとずっとそばにいてくれたかな?
ああ、やっぱり俺

























テオくんが好きなんだ。

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