第32話

Ep.28  ~今だけは~(微🔞)
77
2021/06/27 23:57




-(なまえ:奈央)side-


食堂で侑たちと別れ、その後明日の練習はリハーサルや最後の練習のため


参加が難しいという事についてを北さんに改めて謝り




ついでに3年生たちの分のチケットを渡して


一度部屋に戻った









(なまえ)
あなた
よしっ。ギター持って外でちょっと練習しよう




今回、このような大規模なフェスに参加させてもらえることになった為





流石に既存の曲だけで挑むわけにもいかず




演奏する予定の3曲中、ラスト一曲はオリジナルのものを持っていこうという話になり





折角ならそこで初めてのチャレンジでもやってみるかという話になった






それは、バンド内で楽器シャッフルをすることである





吹部で何度かドラムを担当したこともあるボーカルの美琴が、ラストではドラムへ



ギターもベースも弾ける莉は昔やっていたというキーボードへ


伶奈は莉に借りて軽く齧っていたというベースへ


私は昔伶奈と一緒にやっていたギターとついでにボーカルを担当することになった


勿論所々全員コーラスもある




これは曲を作る際全員一致で決まった


“コール&レスポンス“の部分だ





そんな明日のLIVEのことを考えながら、一人外で自主練をしていた






ジャンジャカジャンジャ♪

   ジャンジャカジャンジャ♪
(なまえ)
あなた
___僕らには~♪
(なまえ)
あなた
_____♪
____♪(ヘッドホンから流れる音)




  _____♪






      ____♪









ジャーン


(なまえ)
あなた
ふぅ。(あとはもう一回ちゃんと合わせるだけかな…)




この曲の作詞は私が担当した



当初はメンバー全員で言葉を集めてきて


"それっぽい"盛り上がる曲を作ろうと考えていたのだが




〜回想〜


藤崎美琴 フジサキ ミコト
藤崎美琴 フジサキ ミコト
あ〜せや!作詞は(なまえ:奈央)がやってや!
(なまえ)
あなた
え?なんで…?
藤崎美琴 フジサキ ミコト
藤崎美琴 フジサキ ミコト
学祭の締めのあれ、響いたでぇ〜?(なまえ:奈央)なら絶対心に来る歌詞書けると思うんや!
神崎莉 カンザキ レイ
神崎莉 カンザキ レイ
確かにそれええな〜。(なまえ:奈央)、言葉選びのセンスええもん
(なまえ)
あなた
そんなことないよ…
平野伶奈 ヒラノ レナ
平野伶奈 ヒラノ レナ
まぁいいんじゃない?こっち来てからあったこととか(なまえ:奈央)も色々変わったしょ?それを書くとかさ
平野伶奈 ヒラノ レナ
平野伶奈 ヒラノ レナ
あんた、よく笑うようになったよ(笑)
(なまえ)
あなた
…。私なんかでいいの?
藤崎美琴 フジサキ ミコト
藤崎美琴 フジサキ ミコト
なんかやない!(なまえ:奈央)だからや!それみて皆で音作ろうや!な?
ーーーーーーーーーーーーーー






ということがあり、当初の予定から変更して



私の今の心情、考えていることなどをとりあえず書き起こして客観的になるよう整理していくと




気づけば"盛り上がる曲"というよりはどちらかというと"語り調"の曲になってしまっていた





そのため歌詞とは裏腹に曲調はアップテンポにしてある






(なまえ)
あなた
(やっぱバレー部のあの弾幕..カッコいいよなぁ)
(なまえ)
あなた
ふぁぁ。眠い..。あ、倫にアイスの連絡入れとかなきゃ..


-LIME-ーーーーーーー


(なまえ)
あなた
玄関でいい?
角名倫太郎
角名倫太郎
了解。
ーーーーーーーーーー


(なまえ)
あなた
ふぁぁあぁ。玄関..居なかったら外出てきてくれるかな…
(なまえ)
あなた
____zzz


気づけば私は、玄関を出たとこのベンチで


倫が起こしに来てくれることを期待して


中に入る前に眠ってしまった













-角名side-




ー部屋を出る前ー
宮治
宮治
ついでに言ってきたらええんやないの?


ーーーーーーーーーー




角名倫太郎
角名倫太郎
簡単に言ってくれるじゃん…



いつから(なまえ:奈央)に対して、治たちと同じ感情を抱いていたのかは分からない



高校で再会してからか、もしくは大分前からだったか…



そんなものどちらでもいいが






相手が"他人に対して臆病なあの幼馴染"でなければ





俺もここまで苦労はしない







(なまえ:奈央)は他人に対して好き嫌いが物凄くはっきりしている




悪く言えば気持ちのメリハリが機械並みに凄いのだ







一度"嫌い"と認識してしまった相手の事は、以後何があってもその認識が覆ることはない





それは昔からだったが、今もなお変わっていないようで。


加えて過去に色々あったせいで


人を信じることすら簡単にはしなくなっている



自分がどれだけ周囲とは違って、信頼されて気を許されていると分かっていても




それは俺が(なまえ:奈央)にとって昔と変わらない"幼馴染"であるからで







もしも俺がアイツにそれ以上の感情を抱いているということを




いつからか"幼馴染"ではなく"異性として"みるようになっていたと言ったとしたら






変化を嫌う(なまえ:奈央)にとっては嫌悪してしまうであろう感情であって





言ってしまったらもう二度と


いつもの"幼馴染"には戻れない気がして…







角名倫太郎
角名倫太郎
そんなの、今の関係の方がマシじゃん…
角名倫太郎
角名倫太郎
(でも、一回くらい…)


そんなの事を考えながら、今まさに自分を悩ませていた人物と合流するため



玄関に向かっていたのだが…



角名倫太郎
角名倫太郎
あれ…?
LIMEが来てからすぐに部屋を出てきたため


そこまで時間は掛かっていないはずだが、そこには誰もいなかった


向こうからわざわざ場所を指定してきたため



てっきり先にいるのかと思っていたのだが…

今の時刻は21時。就寝時間まであと一時はある





角名倫太郎
角名倫太郎
まさか..先に一人で行っちゃったとか..流石にないよね…?
近くのコンビニといっても、この時間だ



流石に一人で出歩かれるのは困る

そう思い最悪のことも想定して外へ出ると


すぐ横にあるベンチに見慣れたギターケースが見えた


角名倫太郎
角名倫太郎
…(なまえ:奈央)?
(なまえ)
あなた
___んぅzzz(ブルブルッ
角名倫太郎
角名倫太郎
そんな薄着でなんでこんなとこで寝てるのさ…(ボソ


見慣れたギターケースが見えた方へ近寄ると、そこにはやはり(なまえ:奈央)がいて



明日のLIVEの自主練でもしてたのか、ギターを抱えて薄いTシャツ一枚でベンチに座って眠っていた(なまえ:奈央)に



自分のジャージを掛けてやった








角名倫太郎
角名倫太郎
アイスいらないの…?
(なまえ)
あなた
______ぅZzz
角名倫太郎
角名倫太郎
…何でそんなに、無防備なのさ..


今の自分にとって、このある意味"絶対的信頼"の壁は


邪魔以外の何物でもない
角名倫太郎
角名倫太郎
ねぇ(なまえ:奈央)…。


今、この瞬間だけでいい


角名倫太郎
角名倫太郎
今だけでいいからさ..
忘れてもらっても構わない


(なまえ)
あなた
____Zzz
角名倫太郎
角名倫太郎
"幼馴染"やめていい..?


そう言って、俺は今もなお自分の隣で無防備に眠り続けるソイツの唇にそっと触れた


(なまえ)
あなた
__んぅ..Zzz
できることなら、このまま目覚めないで欲しい



目が覚めたらいつも通りの"幼馴染"でいたいから



角名倫太郎
角名倫太郎
今だけでいいからさ..
角名倫太郎
角名倫太郎
こっちみてよ..


もう片方の手を片耳に当てながら



周囲の音を閉ざすように触れていた(なまえ:奈央)の唇にキスをした


(なまえ)
あなた
んぅ..?..っ!?りっぁ!?//


目が覚めたのと同時に俺の名を叫ぼうと


口を開けた(なまえ:奈央)の口に舌を入れた





(なまえ)
あなた
ぁっりっんぅ!ヤメッ..み..み..やぁさわん..なっ//



(なまえ:奈央)が耳を触られるのが弱いことは


多分、俺しか知らない弱点だろう..


同じ幼馴染である伶奈ですら、恐らく知らない弱点..



それを知っていて、わざと耳に触れていた




今だけでいいから




たとえなかったことにされてもいいから






今だけは、俺のことをみてほしくて






(なまえ)
あなた
っぁハァ..倫っ!//
角名倫太郎
角名倫太郎
っ!?(ビクッ


(なまえ:奈央)が今度こそ俺の名をはっきりと呼び


その声に驚き、(なまえ:奈央)の事をよくみると



少しだけ怯た表情をして














少しだけ、震えていた





角名倫太郎
角名倫太郎
___っ。ごめん..。
角名倫太郎
角名倫太郎
ホント、ごめん..
角名倫太郎
角名倫太郎
…何やってんだろ俺..(泣)
(なまえ)
あなた
…倫
(なまえ)
あなた
倫にとって私は..何なの?



あぁ。やってしまった…



こうなることが分かっていたから嫌だったのに




分かっていたくせに、あまりに"信頼"されてしまっているからか


治や赤木さんのことがあったからか


その"信頼"に耐えれなくなってしまった



角名倫太郎
角名倫太郎
...好きだよ。多分ずっと前から。俺は"幼馴染"としてじゃなく"異性として"(なまえ:奈央)の事が好きだった
(なまえ)
あなた
___っ
角名倫太郎
角名倫太郎
…いやになった?
(なまえ)
あなた
ギュ


言葉に困っているのか、何も発さなくなった(なまえ:奈央)に



まるで肯定されているかのように感じて怖くなり



俺は情けなく懇願するかのように(なまえ:奈央)に抱きつくしかなかった







今はそれしか、こいつをとどめておく方法を知らない…



(なまえ)
あなた
…倫?
角名倫太郎
角名倫太郎
..(なまえ:奈央)がこっちを向いてくれなくても良い..
(なまえ)
あなた
...
角名倫太郎
角名倫太郎
けどもう…いつもみたいに"幼馴染"に戻ることも許されない..?
角名倫太郎
角名倫太郎
もうさっきみたいな事、しないから…
角名倫太郎
角名倫太郎
ごめん。俺の我儘..許して。


気持ちを伝えないままでいるということより




この気持ちを忘れろと言われることよりも



そんなのは多分無理だけど





けど俺は







この関係が崩れてしまう方が怖いから
(なまえ)
あなた
…(空を見上げて)。
(なまえ)
あなた
何いってんの。倫は倫でしょ。
(なまえ)
あなた
正直ビックリしたけど、倫は倫だよ。
角名倫太郎
角名倫太郎
____っ
(なまえ)
あなた
成長したのは図体だけか?(笑)もう私はどこにも行かないよ。
角名倫太郎
角名倫太郎
…うるさいな
(なまえ)
あなた
ほら、アイス買ってもらうんだからコンビニ行くよっ





ほんとにコイツの切り替えの速さにはいつになっても敵わない



でもどこか抜けているとこもあって




そんなこいつだから、俺はいつからか守りたいと思うようになっていたのだろうか






どちらにせよ





(なまえ)
あなた
早く行かないと就寝時間で怒られんじゃん。
出会ってくれて



角名倫太郎
角名倫太郎
...ありがとう(ボソ
(なまえ)
あなた
なんか言った?
角名倫太郎
角名倫太郎
なんも?
(なまえ)
あなた
あぁそういえば上着、全然違和感なくて忘れてた
角名倫太郎
角名倫太郎
いいよ着てて。それ薄着すぎ
(なまえ)
あなた
___倫…
角名倫太郎
角名倫太郎
___?
前を歩いていた(なまえ:奈央)が

そういつものように俺の名を呼んで立ち止まった


(なまえ)
あなた
私なんかのこと、好きになってくれてありがとう(笑顔)
角名倫太郎
角名倫太郎
っ…。
そうやってお前が、静かに笑って言うから



何故かもう本当に"幼馴染"以外にはなれないんだと突き付けられているようで



俺だけ辛くて…



でもいつも通り"幼馴染"ではいられるということに安心している自分もいて…






角名倫太郎
角名倫太郎
…当たり前でしょ。(なまえ:奈央)は俺の大事な___
角名倫太郎
角名倫太郎
"幼馴染"なんだから…(笑)
(なまえ)
あなた
そうだったか(笑)じゃあ私も同じだ



以前『何故そんなに自分のことが分かるのか?』と聞かれた時のように




そう自分に言い聞かせるように言った
そして同時に



これからも、過保護な"幼馴染"として









俺はコイツを守りたいと思った

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