-外-
ミーン ミーン
ミーン ミーン
ただ蝉の鳴き声だけが響く静かな外で一人
横の自販機で買ったばかりのジュースを飲みながら
近くのベンチに腰掛けて先程から通話が繋がったままである人物を待っていた
丁度よい気温の夜風と蝉の鳴き声が気持ち良く
座ったまま船を漕いでいると横から声が聞こえた
さっき寝そうになっとったけど
侑はそういうと、隣に腰掛けてきた
ギシッ
先程まで隣りに座っていた侑が
突然私ごとベンチに覆い被さるようにして押し倒してきた
スーッ
ガシッ
突然覆い被さるように押し倒してきたかと思えば
唇を撫でるように触ってきた侑に彼奴等が重なり
まだ自由な手足で抵抗をしようとすると
簡単に片手で両腕を頭上に掴まれてしまい
足は侑の体重のせいで動かせず、身動きが取れない状態にされてしまった
そういえばあの時…
治『学祭ん時も言うたけど、俺(なまえ:奈央)の事好きやから』
治と一緒…?
何を言っているの?それではまるで…
私が口を開きかけたとき、見計らっていたかの様に侑の舌が入ってきた
私がそういうと、侑は黙って上から身体を退かし
元いた位置に座り直した
心臓がうるさい..
あまりの衝撃に驚きすぎたのかもしれない..
いきなり顔が良いやつにキスなんてされたら
誰でもこうなるだろう。そうこれは生理現象だ。コイツが悪い
こういう話は、倫以外では初めて話した
他人の暗い過去話など、知っていてもいい事などないだろう
ギュ
スマホのロック画面で時間を確認して
長居し過ぎたことに気づき、そろそろ戻ったほうが良いと、立ち上がろうとすると
侑が”待て“とでも言うかのように腰に腕を回し、制止してきた
警告…
いつから侑は、私を”友達“以外のものとして
みるようになっていたのだろう…
そして感情の制御が得意な私に
忘れた”感情“を思い出させるというのか…
本当にこの双子は、恐ろしい...
忘れた感情を
この双子なら思い出させてくれるのではないかと
少しの期待を胸に
私は、部屋へと戻ることにした
そういって先程まで自分が着ていたパーカーを手渡してきた
でもこれは確かに安心感があって…
少し
そういってロビー前で別れそれぞれ部屋に戻っていった
合宿…。確か東京の学校でやるって言ってた気が..。
どことだっけ…確か動物の名前の
梟谷じゃなかったか…。
どっちにしろ一度家に帰らなきゃならないな
瞼を閉じて合宿のことをいろいろ考えていると自然と睡魔がやってきて
パーカーの効果あってか、記憶がフラッシュバックする様子もなく
気付けば深い眠りについていた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。