キーンコーンカーンコーン
ガヤガヤ
ガヤガヤ
あのあと、自習という名の一応授業の枠として扱われる謎の拘束時間も終わり
ちょうど担任が監督としてきていた為そのままHRも終え放課後となった
爆睡してたな…
なんで私まで急いで向かわなければならないのだ。
遅れたとして部員でもマネージャーでもない私が怒られること無いだろうし…
先程の授業後、次自習なら先に来いといわれ
自習という名の授業前に言われたとおり侑と二人職員室にて軽く怒られてきたのだ
侑はそういって叫びながら体育館に向かって走り去っていった
ジャージ..まぁいいや。
治は勢いよく走っていった侑を追うようにして同じように走り去っていった
あれって双子の宿命かなにかなの…?そして結は本当にまともだな…
私はさっそうと走り去っていく双子のあとを追うように歩きながら、自分の手の内にあるスマホのロック画面を眺めていた
多分、"彼奴"だろう…
このままでは切りがない。自分で蹴りを付けなければ
競走馬っ…相変わらずキレのあるツッコミするなアランさん…最高
あぁ…そういえば何だかんだ私からは言ってなかったな..
というかどんだけ信用されてないの..
殺人サーブを打つほどのパワー5の先輩に思い切り揺すられ、返事をするのもやっとだった
酔うって…
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『そう思いたいんやったら、俺が“兄貴“になったる(笑)』
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いいのかな…。でも一回くらい..呼んでみたい気もする…
私は、北さんに向かって話しているアランさんの言葉と重なるように、聞こえるか聞こえないかくらいの微かな声で
血も繋がっていない"先輩"に向けてそう言った
トンッ
私が何でもないと言いその場を後にしようとすると、北さんが後ろから私の両肩に手を置いた
本当にそうであってほしいと、本音ではそう思っているのに
迷惑ではないかと、私なんかがこんな立派な人を兄と呼んでもいいのか
貴方がそうやって、何でも肯定してくれるから
私が自分の感情を否定するしか、ないではないか…
こんなこと…してる場合では無かったな
そういって私はそのままその場を後にし、部室にあるというギターを取りに行きそのまま外へ行くことにした
ブー
ブー
先にこっち処理してしまわなければ。
自分から、進まなければ変わらない。
掛け直して言うだけ言って切って、着信拒否にしてしまおう
-体育館side-
全員『はいっ(圧が…)』
-あなたの下の名前side-
部室からギターを取り、外に出ようとしているところを侑に見つかり声を掛けられた
なんて顔してんだよ(笑)
そういって私は後ろへ軽く手を振り外へ出た
さて…やっと本題だ
侑や北さんの言うとおり、“過去“は“過去“でしかないはずだ
私は…“今“を大事にしている。
きっかけは何であれ、いつまでも昔の男なんかに振り回されているのなんて、私らしくもないじゃないか
蹴り…つけてやる
迷いなく出やがったなこいつ…
なるほど。私の番号だったとしても、私が出た事などなかったため侑か北さんだと思って出たのか…
相手が"使う側"の人間だと分かると、こうも態度が違うものなんだな…
間違っても、侑も北さんもそんな人達ではないけどな
分かりやすいやつだな..こいつ
一時でもコイツのことを好きだった自分がバカらしい
なかったことにできるなら、是非そうしたいくらいには黒歴史だ
そこが一番の謎であった。
私はSNSのアカウントは交換しても、それで通話という機能が使える以上教える必要性も感じず
中学では京治と当時一時期でも付き合っていたコイツ以外とは電話番号を交換していなかった
もちろん、糞みたいな理由で振られた時連絡先も全て消したし、こいつ自身も目の前であの時消していたはずだ
なのになぜ掛かってきた?どうやって__
はぁ…?何を、言ってるんだこいつ…
あぁ…そういえばまだコイツは私のこと"そういう対象"として見てるんだったな
別に今更コイツに何言われようと、何も感じない
こういう事を言われる覚悟で自分からかけたんだ。蹴りを、つけるために。
過去の私がアンタの事を一時でも好きだったのは、それでその感情を"使われた"のは事実だ
だからなんとでも言えばいい。その事実は変わらない。ただ…
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~回想~
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あいつの事を…侑の事をバカにするのは許せない
お前には…何も分からないだろ
電話口から聞こえてくる暴言混じりの文句の数々
前までなら、何もかもマイナスに捉えてしまっていただろう…
けど何だろうな..。コイツの嫌なところを一つ、また一つ、認識するたびに
並行するように、あんたの事が思い浮かぶんだよ…侑
いつの間に…こんなに好きになってたんだろうな。とっくに…私の負けだったのかもしれない
このことに気付かせてくれたことだけは、感謝だな
私も、侑じゃなきゃ駄目みたいだ…
これでもう、本当に終わりだ
ツーッツーッ
ポチッポチッ
ようやく過去の事と自分で蹴りをつけ
もう二度と関わりが生じないよう着信拒否もして
ウジウジしていても仕方が無いので部活が終わる時間まで弾き語りをしている事にした
あ…この曲
リズムは、足で取ればいけるかな
音楽って不思議だ。普段何気なく口にするのが難しい言葉や感情も
音に乗せてなら容易く伝える事ができる
音楽の力は偉大だ。だからこそ私は軽音の部内ライブで、先輩達の、陵さん達の演奏に、歌に心を打たれバンドを始めた
ねぇ、蹴り、付けたから。今度こそ、そっち向くから。
この歌に、返事してくれるかな…侑?
-侑side-
~体育館内~
『お疲れさまっしたっー!!』
「あかん、腹減って死んでまう〜」
「帰りコンビニ寄ろうやっ!」
部活も終わり、外へギターを弾きに行くと言い出ていってしまったあなたの下の名前に声をかけに外へ行こうとしていると
スナたちとそう話していると、外から聞き慣れた歌い声が聴こえてきた
何故か知らぬ間に自分たちの周りには先輩たちまでもが集まりだし、夜の学校に静かに響く歌声に耳を傾けていた
こっそりとか…絶対バレるやろ。あいつの察知能力舐めたらあかんて…
というかこの曲、何や聴いたことあるな?さっきアランくん"RAD"て言っとったよな…
っせやこれ…あの曲やん
お前はいつも俺らに、"初めて"をくれる
フェスも、学祭でのLIVEも、今この時も..
お前と出会わなかったら俺だけやなくて、こいつらもバレー以外でこんな今しか出来んことに出会わんかったと思うんや
ホンマに…お前が転校してきたのが稲荷崎で良かった
そんなことを思いながら俺は、先にそいつのところへと向かっていった片割れを追って外へ向かった
-3年side-
ガラガラッ
同時期
-侑side-
俺たちは今、絶賛草陰に隠れながらこっそりあなたの下の名前の路上ライブを鑑賞中である
スナっ、それ後で送ってや!
いや、バレとるのには変わりないけどそれなら弾くのやめてこっち来ればええんや
それをせず続けるということは、何かしら意図してやっている事だ
あなたの下の名前は草陰に隠れている俺らを認識したのか、こちらをみて軽く笑うと
空を見上げて深呼吸をし、今度は俺の目をちゃんと捉えて歌い始めた
…何や?ちゅーかこの曲のサビって…
あぁ、やっぱりまだこいつには勝てへんな…
多分…ずっと勝てへんと思う。
けど今お前は、自分の気持ちが"正しい選択"なのか、前の俺みたいに俺の口から確証が欲しいんやろ…?
ならちゃんと…返事せんとな(笑)
タンッタンッタンッ
ジャンジャカジャンジャッ♪
タンッタンッタンッ
ジャンジャカジャンジャ♪
あなたの下の名前の歌には、色んなもんが乗っていて
俺にも好きな歌手とかは居るし好きな曲もあるけど、やっぱコイツの歌と演奏が
一番
たかが部活後のワンシーン。
たかが女子高生のアカペラの弾き語り…。
それでも、そこは何か特別なシーンに見えて、とても幻想的に思えたのは
たかがありふれた日常のワンシーンがこんなに綺麗だと思えるのは
こいつが…真っ直ぐに気持ちを歌に乗せてくれるからや..。
せやから、何気ない事でもこいつが語れば色がつく気ぃすんねん。
俺のバレー一筋だったせっまい世界も、お前が来てから大分、派手になったわ…(笑)
タンッタンッタンッ
ジャンジャカジャンジャ♪
せやからあなたの下の名前..
俺もお前みたいに真っ直ぐそっちみとるから
聴いてや..
タンッタンッタンッ
ジャンジャカジャンジャ♪
タンッタンッタンッ
ジャンジャカジャンジャ♪
こいつは歌に色んなもん乗せて歌って伝えてくる…
これがコイツなりの"応え"…あの時の..
ーーーーーーーーーーーーーーー
~回想~
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そこでそいつはギターを弾いていた手を止めて、その手を俺の頬に当ててしっかりと目を見て言った
ギュ~
ほんまに…もうお前以上のやつこれから後にも先にも居らんわ
もうホンマに、お前やないと あかんねん
あなたの下の名前の歌という言葉に、色々な感情が押し寄せ衝動のままにそいつを抱き締めた
そんなんもう、する必要もないねん
治に突っかかられ反論をしていると、さっきまで自分たちの間にいたそいつは居らず…
後ろを振り返ると、少し遅れてついてきていたスナ達のところにそいつはいた
するとスナと一度目があったと思いきやしれっとそいつの肩によし掛かった状態で会話をし始めた
スナもスナやけど…
あとで覚悟しとくんやで、あなたの下の名前?
もう"喰ってもええ"許可は得たんやからな…?
後ろで話していたそいつは、空腹感がmaxになったのか、食べたいものが決まったためか
肉だーーーーー!と叫びながら俺とサムの腕を引っ張っていった
なんでよりにもよって胃袋ブラックホールのこいつに勝負挑むんやっ!!
アホなんか!?お前のそのちっこい体にそんな入るわけないやろうがっっ!
頼むから俺のためやと思ってそんな大食い勝負やめてくれっ
あかんて…だめやもうコイツラ。本気やん
〜♪
いらっしゃいませ~?何名様ですか〜?
あなたの下の名前・治『5人です/やっ!』
店員さん(どれが…彼氏だろう?)
5名様ご案内致しまーす〜
「「いらっしゃいませ~」」
こいつ…飯のことしか考えとらんやん
俺のこと忘れとらんよな?
忘れとらんならええけど…
ちなみに席の構図はこうだ
荷物 | スナ
銀 | 俺
治 | あなたの下の名前
食欲がバグってる組が先に店に入って行ったため、席に案内され入った順番から適当に座った結果自然とこの配置になったのだ
店員さん『お先に奥の方からお飲み物だけお伺いしても宜しいでしょうか?(顔面偏差値高っ!?)』
店員さん『かしこまりました〜。すぐお持ちしますね〜(この席目の保養だっ😭何あれ双子かなっ!?)』
全員『大やろっ!/大で』
サムは分かるけどな…それ、俺らも居るからその量頼むつもりなんよな?
個人として言っとるわけやないよな…?
店員さん『お待たせしました〜(ホンマやっ!顔面偏差値バカ高いっ!)』
店員さん『っはい!どうぞっ!!//(え、これ女のコ!?制服やなかったら分からんかった!)』
店員さん『…(カキカキ…』
店員さん『あっいえ大丈夫です!失礼します~(めっちゃ食べるやん…)』
絶対『こいつらどんだけ食うんや』とか思われたやつやん
しかもその殆どをこの中唯一の女子であるこいつと胃袋ブラックホールの片割れが食うんやけど…
何ってそんなもん…
今度は食いすぎて吐かれでもして体調くずされたら、大丈夫とか言われても手ぇ出せへんやんか…
ガシッガシッ
そういってそいつは思い切り俺の足を踏んづけてきた
店員さん『おまたせしました〜、こちらカルビ5人前とぉ、牛タン3人前とライス大5つです〜』
全員(侑以外)『頂きますっ!!』
ジュ~
ジュ~
肉を焼いている間何も食べれないからと言って、サイドメニューやら何やらも一緒に頼んでいただけある
肉を焼いている間も、本当にずっと何かしら口に入れてはもぐもぐと動かしていた
ホンマにこいつ…よぉ食うな?サムと対して変わらんとちゃう?
ほっといたら冷蔵庫の中空になるくらい、何も食わへんくせに
どういうことやねん…
俺はそう思いながら横でずっともぐもぐと幸せそうな顔して口を動かしているそいつの顔を眺めていた
これ以上食ったら俺も動けんくなるやん…
随分、幸せそうに食うなぁ…?緩々やぞ、さっきまであんな、ギター弾いて歌ってカッコよかったんに
俺は先程からこいつが肉を食べるときにしているのを真似するように、サンチュに肉と飯を巻きそれをそいつの口の中へ運んだ
クチュッ…
そういって最後に残ったお皿を片付けるために、未だに胃袋に余裕のある二人が再び食事を再開し始めた
俺は、指ごと食べられたせいで少しそいつのよだれが付いた自分の指を見て変な想像が浮かび、本能的に一箇所に熱が集中してしまった
あんなん見て勃たない方がおかしいやろっ!
しかも今日..そのつもりで家泊まるっちゅう時に…尚更変な想像してまうわっ!!
俺はおかしくない!健全な男子高校生やっ!!
俺は煩いガヤに反論しながらも、その場をあとにしてひとまず開放されるためトイレへ向かった
席へ戻るとどうやら完食したみたいで、それぞれ帰る支度をしていた
コイツ…ホンマに呑気なもんやな..
今更、ただのお泊り会で終わらせるつもりなんかないからな?
ホンマにこいつ、わかっとるんか?
マジか…あんだけ食っとったくせにこの距離歩くくらいで消化されるんか…
まぁそれはそれで都合ええから助かるけど
というか弁当…?そうやんっ!!こいつ普段は弁当持ってきとるやん!!
即答やめぇやっ!!
店員さん『学生食べ放題で、お一人2500円になります〜(あれこの人達って…)』
相変わらず素直やないやつやなぁ?
そこはすんなり『ありがとう』とか言ってたまには甘えてくれてもええやんか
まぁそこがコイツらしいっちゃコイツらしいんやけど
北さんが自分でコイツのことを"妹"だと宣言した後やぞ
コイツが勝手にそう想いたいとかやなくて、あの北さんの口からそういうことが出たんや
コイツが絡んでることが原因で遅刻したなんて知ったら、今まで以上にめんどい説教確定やん…
あぁ、ホンマなんでよりにもよってあの人を"兄貴"て呼んだんやコイツ…恐ろしすぎや
いやチームメートやぞっ!!気にしろや!!せめてお前は気にしろやっ!!
お前も承諾すんなやっ!!
あかん、コイツ絶対脚だけは押さえとかな殺られてまう…
オムライスっ♪本人としては手抜きのつもりなんやろうけど、コイツの手料理ならなんでもええわ
楽しみやな〜。明日の弁当も
今日、このあとも。
俺はそう思いながらそいつの横を歩きながら、家へと向かった
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夢主が歌っていた曲とタイトル
いいんですか?/RADWINPS
過去話の合宿の話の際に夢主、北さんに抗ってでも出来たての唐揚げを食べていた描写があったと思うんですけど、それを思い出して尚更『っぽいなぁー』と思ったんです(笑)
その時侑だけ別合宿だったのでその唐揚げに食い意地を張る夢主の様子は、侑本人は見れてはいないけどスナとかから聞いていればいいかなって。
だから一、ニ番の歌詞は侑視点で、最後の所は問いかけ側が夢主、返答側が侑って感じでイメージしました
ついでに言うと、RADの曲でもう一曲侑→夢主の心情を表すいい曲がありまして
スパークルっていう曲なんですけど、一部歌詞載せておきますね
歌詞ー
-愛し方さえも 君の匂いがした
歩き方さえも その笑い声がした
いつか消えてなくなる 君のすべてを
この眼に焼き付けて おくことはもう権利なんかじゃない 義務だと思うんだ
運命だとか未来だとか って言葉がどれだけ手を伸ばそうと届かない
場所で僕ら恋をする 時計の針も二人を
横目に見ながら進む そんな世界を二人で
一生 いや何章でも生き抜いていこう-
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。