ガチャッ
あの後、ずっと我慢していたのか突然倒れたあなたの下の名前を背負って
そのままあなたの下の名前の家まで来ていた
一人暮らしというだけあって、部屋自体は1LDKとそこまで広くはない
荷物を適当な場所に置いて、とりあえずそいつを部屋まで連れていきベッドへ寝かせる事にした
というか何かあるのだろうか。まずそれを確認せねば…
マジか…休み明けやしもしかしたらとは思てたけどホンマにそうやとは…
あなたの下の名前が倒れたということは恐らく治経由ですぐ知るはずだが..
あなたの下の名前に関しては過保護なスナのことだ
どうせ後で本人のスマホと俺のスマホに電話でも掛けてくるだろう
-リビング-
一度あなたの下の名前の部屋から出て
本当に冷蔵庫の中になにもないのかどうか確認するためリビングに戻ってきた
キッチンへ行きいざそこを開けると、予想はしていたが本当に必要最低限度の物しか入っていなかった
前回来たときは、ちょうど切れたとか何とか言っていたが、卵すら入っていなかったのだ
だから前よりは少しマシな方なのかもしれない…
〜〜♪
俺が想定内の冷蔵庫の状態に呆れていると
スマホの着信音が鳴った
思っていた通り、スナは治からあなたの下の名前のことを聞いていたらしく
これまた予想通り、電話を掛けてきた
そうや、ちょうどええやん。コイツならあなたの下の名前の事、一番よぉ分かっとるし
恐らく実際この場にいなくとも、大体のことは把握しているのだろう
ツーッツーッ
でもまぁ飯の件はこれでどうにかなるだろう
ついでにあなたの下の名前が説教されることも確定したのだが
もしかしたら自分も何か言われるのかもしれない…
とりあえず飯のことはスナにまかせて、一度部屋に様子を見に戻ることにした
コンコン
部屋に行くとそいつは、熱のせいか寝言のように暑いと言いながら
俺のジャージを羽織ったまま、今にも脱ごうと中のシャツに手を掛けていた
寝た状態からだと羽織っているジャージを脱ぐことはできないようで
中に着ている制服のネクタイとシャツのボタンだけを数個外して胸元を開けさせていた
自分のジャージの下から覗くあなたの下の名前の素肌はあまりにも刺激が強すぎて
加えて先程付けたばかりのキスマークもちらりとみえている
これはあまりにも....
駄目や、落ち着くんや俺
こいつは今熱でうなされとるだけや。そういうんやない
せやけどジャージ着たままて…
ここにいてもあなたの下の名前の憐れもない姿に、色々おかしくなってしまう一方なので
何事もなく寝ているようだし、とりあえずスナが来るまではリビングで待機していることにしよう
-角名side-
寮に帰ったあと、中々帰ってこない侑に対して俺のプリンがっとかなんとか
文句を言い出した治に当の本人から電話が掛かってきた
開口一番それなんだ(笑)さすが治、食べ物の恨みはなんとやらってやつ?
俺はちょうどその時一緒にいた為横で通話越しにされる双子の喧嘩を話半分に聞いていた
え…?今なんかあなたの下の名前が何とかって言ってなかった?
そうだ。あれほど侑に待っとけと言われて頑なに先に帰ると言っていたはずなのに
そもそも何故侑は先に帰っていたはずのあなたの下の名前と一緒なんだ?
まぁあの無駄に集中しすぎるあなたの下の名前の事だ
恐らく侑を待っていたわけではなく、偶々作業に集中しすぎていたら、説教後の侑と会ったとかだろう
ツーッツーッ
言うことだけ言って切ったなあいつ…
治は物凄い顔つきで自分のスマホの画面を睨みつけていた
正直侑が何やらかしたとかそういうのはいつもの事だし、どうでもいいし興味もない
俺が気になっているのは幼馴染の方だ。普段から必要以上の事は自分から発さないし
比較的静かな方ではあるが、今日はそれがいつもにも増してだった気がする…
俺が今朝から少しいつもと様子が違ったように見えた幼馴染のことを考えていると
治は何か思い出したかのように勢いよくこちらに向き直ってきた
どうやら今朝からの違和感は間違いではなかったようだ。
侑は気づいてたのか?
いや、そんなわけないか。とりあえず本人にはLIMEを入れて、後で侑にでも電話しよう
その後治とは別れて一旦寮を出る前にあなたの下の名前にLIMEを入れた
-LIMEーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーー
送ってからいくら待っても既読が付く様子がなかったため、本人からの安否確認は諦めて
とりあえず今からそっちへ行くということだけ最後に伝えてLIMEを閉じた
それから俺は今度は一緒にいるはずの侑に電話をかけることにした
元から何か買って行くつもりではあったから良かったものの
案の定侑からまた冷蔵庫に何も入ってなかったと言われ、相変わらずの生活感の無さに呆れながらも
当初買っていこうと思っていたものに加えて他にも多少買っていこうと考え
とりあえず何かしらを買う為、一旦通話を切り、あなたの下の名前の事は一緒にいる侑は任せようとしたとき
通話越しの侑から、とんでもないことを聞いた
…今なんて言った?俺の聞き間違えじゃなければ"彼氏"とか言わなかったかこいつ?
確かにお互いがお互いのことを想っているということは知っていたが、急すぎないか…?
ついに認めたのか?あのあなたの下の名前が…?
俺はあくまで冷静を装って侑にそう聞いた
いくら自分の想いが叶わないものだったとしても、アイツが大事な幼馴染であることには変わらない
…絶対また何かしたなこいつ。
ツーッツーッ
言い訳は許さないよ、侑?
ちゃんとどういうことか聞くから
〜〜♪
〜〜♪
侑との通話を一方的に終わらせ、そのまま近くのスーパーで、あなたの下の名前が食べそうな物や薬などを適当に探して買っていくことにした
-侑side-
ピンポーン
ガチャッ
あの状態のアイツをみられたら、絶対俺が何かやったと思われるに違いない
病人相手に迫るほどクズやないわっ!ここは何としても阻止せねば俺の立場が…
俺の必死な静止を無視して部屋へと向かったスナは、何か言いかけて固まっていた
いつの間にか目が覚めていたのか、スナの声に気付き起き上がったそいつは、
横になって布団を被っていたことにより隠れていた部分も露わになり
かつ寝起きということも合わさって異様に色気を漂わせていた
ホンマにヤバい…
本人は今の自分の格好がいかに大変なことになっているのか気づいていないのか
呑気にお腹の音を鳴らしてこちらを見上げてボーッとしていた
するとスナが耐えきれなくなったのか、あなたの下の名前の前まで行きジャージのチャックを上まで上げた
そういってスナはあなたの下の名前の首筋の一部をなぞるように触れた
あかん、バレた…
こいつはそれがキスマークだと言うことに気付いとらんみたいやけど、流石にスナは分かるやろうし…
そういって自分もされたという証拠をスナにみせた
というかあなたの下の名前から噛んできたんやないかっ!
グ~
コイツっ…さも当たり前ですぅ〜みたいな?
なんや慣れてます〜みたいな感じムカつくっ!!
そこは俺の場所やっ!!あなたの下の名前もあなたの下の名前や!
お前の彼氏は俺やろうがっ!!
べ、別に俺は何も悪いことしてへんしっ?
あれやって、こいつが話に乗らんかったらあそこまでするつもりはなかったし?
結果的に付き合うことなったんやしめでたしめでたしやんか
そうや、俺は無実や。やって俺だけ今回もお預け食らっとるんやし。どっちかっちゅうと被害者やん
俺は悪くないで、スナ?
コイツっ!どこまでも幼馴染至上主義やな!!
あの目は獲物を殺る狩人の目そのものやった…
あぁ、思い出しただけで寒気がっ
スナに今日あった恐怖体験を話しながら、今では先程より体調が回復したのか
呑気にスナが買ってきた苺を食べているそいつの方を見た
やっぱりこいつは、昔からあなたの下の名前のことを見てきただけあってアイツのことよくわかっている
俺には毎回新鮮に映る表情も
コイツにとっては当たり前の、見慣れたものなのだろう
けどあなたの下の名前のあの表情だけは
自分しか知らないはずだ...
スナは少し暗い表情をしてそういった
なんや?悔しいんか?
そりゃ隣に居るのが当たり前やったしな、お前
せやけどこれだけは譲れんねん
何を、言っとるんやこいつ…
本気で好きやなかったら普通ここまでせんやろ..
ただでさえ、何度も見て見ぬ振りをされ続けてきて
やっと認めさせたっていうのに…遊びなわけ無いやろ
未だキッチンで苺を食べているであろうと思い、一応病人であるあなたの下の名前の様子を気にすることを忘れ
俺らの間には険悪なムードが漂っていた
確か一緒に木兎くんも来てた時のやん…
平野にこき使われて、俺だけ会いに行けんかった時の
そういってスナはその"赤葦"というやつとのトーク画面を見せてきた
-LIMEーーーーーーーーーーーー
-赤葦-
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺はスナと赤葦のやり取りをみて、何とも言えない嫌悪感を抱いた
『より戻したらいい事あるから』…?
人を装飾品かなんかだと思っとるんか?
『侑は、"自分の為に"私とそういう関係になりたいんでしょ?』
『皆、自分にとってメリットがあるから人を好きになって付き合う。恋愛なんてそんなものだよ…』
『所詮、"利用関係"でしかない』
元々そういうやつではなかったのだろうか
そのクズな"元彼"と何かがあって、今のあなたの下の名前になってしまったのだろうか…
そうやとしたら、何があったんや
『縁なんて、簡単に切れるんだよ』
『そこに愛なんて存在しないんだ..』
『信じた分だけ裏切られる。他人なんて、期待するだけ無駄なんだよ…』
なんやねん…それ…
そんなん…アイツの精神ボロボロやないか…
時々、今日の放課後に感じたような
あなたの下の名前がどこかに消えてなくなってしまいそうな感覚を感じる時がある
不安で…どうしようもなくなってしまう時がある
もし、アイツが"生きること"をさほど重要なことだと思っていないのだとしたら?
この生活感のなさも、ただ"そういう性格"というだけではない気がする
そう思うと、その元彼への怒りが湧いてくるのと同様
それ以上の不安が襲った
あいつは、以前無理やり襲われた際
何を思ってやったのかは分から…いや、考えたくはないが
自分の腕をカッターで切りつけた状態で眠っていた
今もそういうことがあるかと言われればないが
誰かから必要とされているという事を
誰かから愛されているという感覚を
自分がいなくなることで、悲しむ人がいるという事を
あなたの下の名前がちゃんと理解しているのかが分からない
どこかに行ってしまいそうなら
自分がその手を掴んでおけばいい話だ
"彼氏"である自分が、護ってやればいい
ガチャンッ
そこまで話してキッチンの方から何か金属のような物が落ちる物音がして
ようやく意識がそちらへと向いた
そうや!あなたの下の名前っ!呑気に苺食っとったしさっき薬飲んどったから大丈夫やと思ってたけど..
このままではきりがないため、俺はあなたの下の名前が最後まで言い切る前にそいつを抱き上げた
そういったあなたの下の名前の身体は、体調不良がぶり返してきたせいか
もしくはそれ以外の理由からか
少し震えていた
なんや、残ってくんかと思ってたわ。意外やな?
スナは殺意を隠すこともなくそういってきた
あなたの下の名前…お前の幼馴染怒らせたらアカンやつやで…?
顔も名前も分からないその元彼とやらは、思いきりスナの地雷を踏み荒らしたようだ
そういってスナは寮へと帰っていった
グ~
『私も、ちゃんと好きだよ。侑』
あの言葉が、こんなに重いものになるなんて
どれだけその感情を受け入れるのに苦しんだのだろうか
そう思いながらベッドで大人しく眠るそいつの額にキスをして
チュッ…
俺の言葉に返事をするように、タイミングよく唸ったそいつに、思わず笑ってしまい
今もなお自分のジャージを着たまま眠るそいつをみると
本当に自分のものになったのだなと実感するようで
見えない部分に深く刻み込まれているであろう傷口は
コイツのお得意の切り替えのせいで中々見えない
だったらせめて俺は
俺らは、そばにいてやるべきやな
あの感じだと、本人はおそらく知らないのだろう
知らなくていい。これは俺が片付ける
とりあえずあなたの下の名前から勝手にスマホだけ預かって、食いそびれていた晩ごはんを食べるのにリビングへと向かうことにした
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次の回で出てくる寝起き主のイメ画〜
寝起きの夢主は家ではメガネを掛けていることが多いためこんな感じ(カーディガンっぽいのがシャツだと思って頂ければっ)
この上に侑のジャージを着ていて、それがスナが見た寝起き姿…的な?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。