キーンコーン
カーンコーン
先程、LHR中校長の長い話に疲れたせいか、朝からめんどくさい絡みに対応してたせいか
担任の連絡話中、どうせ課題の提出期日の話とか授業の話だろうと思い
舟を漕いでしまっていた
睡魔に負けて油断していた。
横にこいつがいることを。
そう。思いきりその一部始終を撮られていたのだ。その時ちょうど隣のクラスはLHRが先に終わったのか
治が侑のスマホに通知を入れたらしく、通知音を切っていなかったスマホは、大音量で音を鳴らしたのだ
そういって伶奈と結は侑のスマホを覗いて話していた
ガヤガヤ
ガヤガヤ
ダダダダダッ(足音)
そして誰も居なくなりようやく静かになった教室で一人
私はようやく、作業に取り掛かることにした
~放課後~
-侑side-
あいつまだ居るかな...
あの先生すっぽかしたりしたら絶対北さんにチクるからなぁ
めんどいけど行くしかないやん…
いや明らかにお前のせいやっ!!
ミュートしてへんかった俺も悪いけどっ!どっちかっちゅうとお前のせいやぞ!!
いやそれはあかんて!アホ連絡くらいせぇや!
っホンマにこいつは…!💢
休み明け初日からめんどいやっちゃなぁ
さっさと終わらせてあいつまだ居るか確認せな
今から向かう場所のこととは全く別のことを考えながら、重たい足を職員室の方へと向かわせた
ガラガラガラ
スマホを見ると時刻は15時30分
微妙やなぁ。結局最後まで帰る言うてたしホンマにもう帰ってるかもしれへん
あなたの下の名前は夏休みのフェスのとき
本番前、彼奴等いわく”集中モード”に入っていたらしく、目の前で俺とサムが言い合っていたのにも気付かんかったくらいや
もしあのまま一人で作業を続けていたのだとしたら
目の前で繰り広げられていた俺らの喧嘩にも気付かんレベルの”集中モード”を持つアイツが
時間の経過なんか一々気にするか?
そう僅かな期待を抱きながら、まだそいつがいるかもしれない教室へと向かった
~廊下~
ジャンジャンジャカジャ♪
______♪
いざ教室へ着くと、作業が終わっていないのか、集中しすぎてるためか
そいつはまだ一人の教室でヘッドホンをして、時々歌いながら何かをメモしたりして、ギターをいじっていた
いることが分かった以上、入ってすぐ声を掛けても良かったのだが
何かが勿体ない気がして、入口の壁にもたれ掛かって暫くその様子を見ていた
なにも、今すぐ有名になるわけでも、自分たちのもとから居なくなってしまうわけでもないのに
なぜか一人教室で真剣な顔をしてギターをいじっているそいつは、急に遠い存在のように見えて
早いとこ捕まえておかなければ、ふらっと何処かへ行ってしまいそうな感じがして
ガタッ
そろそろ全くこちらの気配に気付く様子もないあなたの下の名前に声を掛けようと
そいつの近くにあった椅子に座ることにした
ガタッ
ちょうど同じタイミングで、時間を確認するのに一度顔をあげたそいつと目が合い
やっとのことで自分の存在に気付いたと思いきや人をお化けでもみたかのような表情で驚かれ
そいつは思い切り持っていたギターに頭をぶつけていた
わざとなのか、今朝スナに着けとけと言われていたためか
そいつはヘッドホンをつけたまま対応してきたため、案の定ほとんど何も聞こえてなかったようで
このままでは一向に会話が成り立たないため
痺れを切らしてあなたの下の名前からヘッドホンを取り上げるように外した
ほんまに、分かりやすいやつやなぁ
ブンッ(スティックを振る音)
俺が髪を切ったことにより露わになったそいつの弱点に軽く触れると
あなたの下の名前はどこに隠し持っていたのか、スティックを思い切りこちらに向けて振りかざしてきた
今の本気やったやん!
どこから出したんやそれっ!!
前までの自分だったら、この時点ですんなり諦めて返していただろう
だがあいにく今はもう、コイツの弱点も
本心も知っているのだ。本人が認めたくないと言い張っているだけで
いざとなったら抵抗も何もしないことも前回のでわかっている
それがコイツの本心の、何よりの証拠だ
まぁこいつの場合、変なプライドとかもありそうやけど…
どうせ普通に言っても素直に認めるやつやないやろうし
ガシッ
ブンッ
ほぉぉ?今回はあくまで抵抗する気なんやな…
さっきより全然振れとらんけど
目の前のことに集中しすぎていただけで、恐らくこのタイミングでまだ残っていたのは偶然だが
それでも、昼でほとんどの人が帰って自分たち以外には誰も居ない今
たとえ抵抗されたとして、みすみす逃すつもりもない
スナ曰くあなたの下の名前は気持ちの切り換えが凄いらしい
このまま放置していると全部なかった事にされてしまいそうな気がしてならない…
グイッ
そういって俺はあなたの下の名前が持っていたギターを避けて近づいた
そういってそいつは何か決心したような、挑むような目つきでこちらを見上げてきた
ほんまに…
腹減ってくるなぁ?
グチュッ
こいつ…前回もろくに持たんかったくせに
よぉ買ったなぁ…?
てか…絶対場所逆の方がええやん
そういって俺はそいつを自分の脚の上へ座らせた
さっきより密着しているせいか、頑張ってこらえている震えが直に伝わってきた
(これは、前より早そうやなぁ?(笑))
そういや前聞いたあれ..気になっとたんやった
そういって一度動きを止め、今度は今まで弄っていたそいつの耳元を両手で塞いだ
前にクラスのやつだったか、誰かからか聞いたことがある
本当かどうかは分からないが、どちらにせよ耳が弱いコイツにとっては効くだろう
その無駄なプライドなんか捨てて変になって
そしてそのまま、堕ちてこいや
こうするたびに毎回そんな顔されて
今朝サムに触られたときはそんなでもなかった癖に
期待させるだけさせといて
もう無理なんやあなたの下の名前…
お前のその顔見とったら、抑えられそうにないんや
そんな表情するんやったら
あと少しというところで、廊下から誰かの話し声が聞こえてきた
そいつらは、今自分の目の前にいるやつのことを話していた
まぁ、今こんな顔なっとるけど…?
クチュッ…クチュッ…(グニグニ
かわええ事してくれるやん…
こらえるのに必死すぎて煽っとること気付いとらんのかコイツは
ギュ~
本格的に限界が来そうなのか、
本当におかしくなってしまいそうで怖くなったのか
廊下にいる奴らの話題の中心であるそいつは、俺のジャージを掴んで止めるように拒んできた
だが今下手に止めて外の奴らの存在に気付かれたら困る
まぁ耳塞いでる自分のせいなんだろうけど
どちらにせよ都合がいい
コイツは俺のや
ちょうどその生徒らが教室の前を通るか通らないか辺りで、そいつは腰を抜かして
乱れた呼吸をしながら俺の方へ脱力してきた
その顔、最高やなぁ
廊下でコイツのこと好きだとかなんとか話しとるあいつらも
まさか普段クールなそいつがこんななってるなんて思わんよなぁ?
自分だけが知っているあなたの下の名前の表情…
耳元を少し舐めたくらいでこんな顔になるくせに
普段は俺らと同レベルで女子にもモテて、バンドリーダーとして活動してドラムとギターも演奏できてその上歌も上手くて
人に向ける殺意はサバゲーやっとるせいで本物で
けどたった一個の弱点のせいで、それが全て嘘であるかのように、簡単に崩すことができてしまう
その普段とのギャップの差が大きすぎて
その状態を作っているのはいつも自分だと思うと
どうしても、一人占めしたくなってしまう
どうやらこちらに気づいたようだ
居るのバレバレやけどな…
ギュ~
そういって俺は廊下にいる生徒らに牽制の意味を込めて一度目を向け
あなたの下の名前を抱き寄せ、スカート下辺りに触れた
というか、これまた俺だけお預けやん…
これ以上やったら今度は机とか持ち出しそうやしこいつ…
動くなとは言うたけど、なんや…この異様な落ち着きようは…
スティックは…この態勢なら取れへんな
なら何やこの圧は…
え?今思いっきりスルーされたん?
俺今、告ったんやけど?もしかしてまた意識落ちたんっ!?
俺が前みたいにあなたの下の名前が意識を手放して寝てしまったのかと思い、
意識があるか確認するため声をかけようとした時、思いきり首筋に噛み付かれた
俺はあなたの下の名前が自分にしたのと同じように、そいつの首筋に噛み付いた
ただ、決定的に違うことが一つ
俺は"ただ噛んだ"のではなく自分のであるという"印"を付けた
いつの間にかいつもの調子に切り替えが完了していたあなたの下の名前が
そう淡々と話し始めた
コイツ..さっきまでの余裕の無さそうな顔はどこへ行ったんや…
ちゅーか、何を言っとるんや、コイツは
ふと以前あなたの下の名前が言っていたことを思い出した
『お互いがお互いの価値付加の為に利用するだけ。恋愛なんて、そんなもんだよ…』
俺は食い気味にそういった
だって絶対ありえへんし
何を言い出すかと思えば、しょーもないこと気にしとるんやなぁ
絶対ありえへんこと考えて何になるん?
サムも似たようなこと言ったんか
そういって見えていないあなたの下の名前の顔をちゃんと捉えるため
そいつの肩を持って一度身を離した
こいつが何をそこまで恐れているのか
他のことに対しては比較的前向きなのに、なぜか他人が絡むと超が付くほどの現実主義者になるのも
純粋に好きなんは好きやって言えるし思える自分にとっては、未だに分からない感覚だが
もし自分の感情を認めることによって、俺に迷惑がかかるだとか、そんな事考えているのなら
その考えがすでに迷惑だ。余計な心配なんていらん
なんで、何も言わんの…?
なんで、顔そらすん…?
自分にとってはこんなに簡単で明白な気持ちでも、コイツにとってはとても複雑な気持ちのようで
何言うとんのや…コイツは
確かにあなたの下の名前は他の女子と比べたらそういう感じせぇへんし
全くもって素直やないしそういう点では女の子らしい可愛げっちゅうもんはあんまないけど
そういうことちゃうねん。
他とお前とじゃあ、比べもんにならんねん
俺は、そんくらいお前のこと好きなんに…
いざお前の気持ちが分かっても、お前がそんなんじゃあ、素直に喜べないんや…
分からない。どれが、本当のお前なん..?
やっと認めたと思ったら、なんでこんななるん?
お前の"好き"と俺の"好き"は本当に一緒なん…?
あなたの下の名前の気持ちもよぉ分からんのに付き合って、意味あるん…?
そう段々と自信がなくなっていっていると
そいつは俯きながら俺の胸に拳を当ててきた
そうやん…コイツはこういうやつやった…
自分の事より他人のことばっか考えるやつ
どうせ自分のことなんて"嫌いになって"とでも言うつもりやろ
ちゅーか何やさっきから…熱い?
そういってあなたの下の名前は電源が抜けた機械のように脱力してしまった
さっきまでなんともなかったやろっ
元から体調悪かったんか?いやでもそんな風には…
ダラン
そこまで言うとついに意識を手放してしまった
ギター、とりあえず部室に置いてくか
今日の鍵当番、自分で良かった
此処に置きっぱにして何かあっても嫌やし、今はこいつ優先や
前に一度だけ、合宿前に荷物を取りに帰ると言い出したときあなたの下の名前の家には行ったことがある
場所は分かるんやけど…この状態のこいつ一人にして大丈夫なん…?
前に部屋に上がったとき、あまりの生活感の無さにその場にいた全員が心配になったのを覚えている
スナなんか、心配通り過ぎて怒っていた気すらする…
そういうことも考えて今この状態で一人にしておくわけにもいかず
恐らくなかなかプリンを買ってこない自分にそろそろ怒っているであろう片割れに部室へ向かいながら電話をかけた
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プルルルル
プルルル…
開口一番にそれかいな…絶対言いよる思ってたけど
ガチャッ
ギターこのへん置いときゃええか
明日来たとき北さんになんか言われそうやけど…
ツーッツーッ
ーーーーーーーーーーー
何か言ってたけどまぁええか
ちょうど学校を出ようとしていたその時、背負っていたそいつは目を覚まして
普段のあなたの下の名前らしくない掠れた声でそう言ってきた
体調不良すら信じてくれへんって…どんな環境で育ったんやコイツ
北さんが知ったら怒るで?多分とんでもない圧と正論パンチで殺られてまうわ…
本当にこいつが、自分たちの関係が少しだけ変わったということを解っているかは微妙だが
それでも前よりは、堂々と隣にいることができることに少し安心して調子に乗っていると
不意に背中から聞こえてきた熱のせいでいつもより素直なそいつの予想外の言葉に
また一つ、そいつの知らなかった一面を見れた気がして
将来のことなんて、バレー以外考えた事なかったが
こいつだけは、今もこれから先もずっと
絶対に離してやらないと決めた
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※タイトルの『一心不乱』はボカロの曲がベースです!
あと
侑が通り掛かって見ちゃったモブをガン付けてるとこ
10分クオリティーの超駄作ですが描いてみました
※BLじゃないよ。髪短いから描いるときこれそう見えね?とは思ったようん。
けど一応『かっこよくて』、普通に『女子にもモテて』、制服のスカート履いてない時だと『男の子だと勘違いされる』イケメン女子なので…(大目に見てっ🙏)
押し付けるつもりは全くないので、嫌っていう人はここで戻ってください👍
あくまでこういうのって読み手の"自己解釈"だと思うので!
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↑このシーンのモブ目線(手が描けない…)
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。