ピピピピッ
ピピピピッ
ピピピッ
…ピッ
昨日..私は横で今もなお眠っている侑と初めてまともに行為に至った…
重たい体を起こそうと何故か抱きつかれる形で眠っている侑の腕を退かしてベッドから起き上がった
起き上がって自分の格好をよく見ると、下着だけを身に着けた状態で
その上に侑から借りっぱなしになっていたジャージだけを着ていた
サイズ大きいからまだ下も隠れるけど…
流石にヤバいだろ…。変態か?私は…
侑が起きる前に何か適当に着替えなければ..
ギュ~
今のこの格好をどうにかしようと、私が適当に服を見繕うために衣装ケースの方へ向かおうとすると
さっきまでぐっすり寝ていた侑が起きてきて後ろから抱きついてきた
寝ぼけてるのか…?都合いいな、頼むからまだ覚醒しないでくれ…
今の格好を見られたら、襲われかねない..
…もうこいつごと引きづって行くか
そう思い侑を引っ剥がすことを諦めそのまま移動しようとすると
そいつが急にジャージの下に手を入れて直接お腹辺りに触れてきた
どんだけ寝ぼけてるのっ!?学校!あんたは朝練あんだろうがっ!!
『アンタ、ダンスもそうだけど本当に身体の物覚え良いよね〜』
くそっ…そんなつもり無かったけど玲奈の言うとおりなのか…?
昨日まで..何ともなかったのにっ
っ起きてたな!?こいつっ…!!
というか服着たいんだよ私はっ!起きたなら退けっ!
そう思い私は思い切り肘を後ろに居る侑の方へと引いた
さすが私..よく狙ったつもりはなくとも見事に急所に入ったらしく侑はお腹を抑えてダウンした
すぐ着替えるし、これでいいか
私はどうせ後で制服に着替えるしとりあえず適当にオーバーサイズのTシャツを一枚着ていることにした
とりあえず朝ごはん食べて弁当のオムライス用の卵作らなければ…
朝ごはんはパンしかないということだけを伝えて
ダウンした侑を置いて私は早々に部屋を出てリビングへと向かった
バタバタッ
そう叫びながら侑もあとを追って部屋からリビングへと出てきた
-侑side-
ピピピピッ
ピピピピッ
ピピピピッ
…ピッ
ん?音止まったな..?ちゅーかもう朝なん?
あなたの下の名前..起きたんか?多分止めたのこいつよな…
俺が寝ぼけた頭でぼんやりそう思っていると、そいつは何処かへ行こうと俺の腕を退けてベッドから動き出した
どこ行くん…?
しばらくそいつの動きを眺めていると、どうやら衣装ケースがある方へと向かっていっていて
あぁ…そういや昨日、えらいエロい格好のまま寝とったな..
下着の上にサイズがあっていない自分のジャージ一枚を着たまま服を探しに衣装ケースの方へ移動するそいつを見ているうちに
意識は完全に覚醒していて
エロすぎやろ…昨日の俺、ナイスや!
朝から最高のご褒美をもらった俺は寝ぼけたふりをしてそいつの後ろから抱きついた
そいつはいきなり寝ていたと思った俺が後ろから抱き着いてきたことに驚いたのか
一瞬ビクッとしたと思いきや、威嚇するような目でこちらを見て淡々と話し始めた
ホンマに猫やな…(笑)つか昨日あんだけ食っとったのにどこいったんや…
細すぎやろ、こいつの腹…
下着しか身に着けていないため露わになっているそいつの腹を、ジャージの下から弄った
何やこいつ…?ヘソも弱いんか?それとも…
これはおもろいな(笑)
こいつ、そういやよく昔やってたっちゅうダンスやら空手やら今でも身体の動き覚えとるよな〜?
物覚え…いいほうなんちゃう?今お腹触られて、何考えとるん?
そう思い俺は最初とは違い少しいやらしくそいつの腹を弄った
今回はちゃんと…覚えとるんよな?
そう言うとそいつは耳を赤くして思い切り肘を俺のみぞおちめがけて引いてきた
今全くこっち見んで当ててきやがったなっ!?もはやその的確さ才能やろっ…
あかん…何か出る..
ジャージ…そうやジャージ…
別にいま夏やし着てへんくても何も言われんから別にええんやけど…
試合んときだけ返してくれれば…
拒否権ないからね〜👋
バタンッ
そういってそいつはさっきの攻撃のせいでダウンしている俺を置いてリビングへ行くため部屋を出ていってしまった
腹抑えてる彼氏置いてくって…可愛くないでっ!ちょっとは心配しろやっ
そんなことを思っても、言ったとしてそいつが戻ってくるわけでも現状変わるわけでもないので…
昨日一線を超えたあとでもまるで変わっとらんあいつが、可愛げなんて覚えたらそれはそれで…
俺の理性が持たへん…多分、いや絶対ぶっ壊れるまで抱いてまうわ…
いやそれはそれで…ええな。今は無理やけど
悶々と色んな事が頭をよぎるも、その思考を閉ざすようにそいつの後を追うようにリビングへ向かった
-リビング-
ジュ~
チンッ(トースターの音)
リビングへ行くとそいつはキッチンでフライパン片手に作業をしていた
美味そうな匂いやな…
ガタッ
こいつの家のキッチンは所謂対面式で
キッチンの向かい側にはバーのように椅子が数個置かれていて、俺はそこに座ってそいつの事を眺めていた
そういってそいつは出来上がった卵を予め昨日のうちに作っておいていたケチャップライスが入った容器に乗せていった
卵ってこんなトロトロの状態で焼けるんっ!?
寮とか学食で出てくるオムライスは大体固まっとるやん!何が違うん?何か入っとるんかな…?
俺がそう聞くとそいつはよく聞いたとでも言いたげな表情でドヤ顔をしながら言った
メレンゲ…?メレンゲってなんや?ちゅーかオムライスの卵って、卵だけやなかったんやな
チンッ(トースターの音)
そんな会話をしているとそいつの分のパンも焼けたようで
そういってそいつは冷蔵庫から何かを取り出してきて、そのままパンを咥えて隣の席に座った
ガタッ
ポチッ
TV『今日のお天気は___』
サム用のおにぎりやと…!?結局作ったんかいこいつっ!
TV『今日の占いは___』
まぁええけど。こいつ特製オムライス食えるんは俺だけやし?
俺はおにぎりも食えたけど、あとで昼飯くれって言われも絶対サムにはやらん
ちゅーか俺…こいつがトマト食っとるとこ見たことないんやけど
わざわざ今日行くとき持たせるために作ったとかやったらええな…
そういって俺はそいつの口元に自分が今食べていたトマトのマリネというものを一つ持っていった
ほぉ〜苦手なんや、トマト
昨日今日で急に冷蔵庫の中が増えるわけもない。こいつが昨日言っていたように
中に入ってあるものは基本こいつが熱で倒れた時にスナが買ってきたものだけだ
スナの事だから苦手なものくらい把握してそうなものだが
まぁおそらくコイツ自身食べれない事もないからわざわざ言っていなかったんだろう。
ということは”自分で食べる為に作った”わけではということで…
ホンマに、分かりにくいやつやなぁ〜?(笑)
気持ちは真っ直ぐなんに、そういうとこは遠回しな辺り、やっぱ猫やな〜
たまにははぐらかしてみようか
グイッ
はっきりしない俺の態度が気に食わなかったのか、そいつはさっさと準備をしに洗面所へ向かうと後を付いてきて俺のTシャツの裾を掴んできた
(笑)おもろいなぁ
そういってそいつは少しムスッとした顔でこちらを見上げてきた
無理…俺のあなたの下の名前可愛すぎや..でもこれ楽しいんやけど..
グイッ
そういって今度はTシャツの袖を掴んでいた手を離してそっぽを向いてしまった
あかん…何や耳みたいなのが見えるんやけど。ついでに尻尾も(今下がったな)
色々無自覚なんやろうな…こいつ。
今まで他人に甘えてこれなかった分が、全部出とるんやないか?
ナデナデ
バタッ
こいつ..こうするとホンマに大人しくなるな
シャカシャカシャカ
ナデナデ
そういうとこやぞ..あなたの下の名前。ホンマにお前…恐ろしいやつやなぁ
ジャーッ
ッペ
きっとそうなんやろうけど(笑)
まだ全然時間余裕あるな?さすがあなたの下の名前や、無駄に早起きやな…
ジャーッ
ッペ
ボコッ
これが北さんの”妹”と周知される所以だと思う…実際は違うが
圧が本物なんや..あと切り替え速度も似とる…
リビングに戻ると時計の針はまだ6時を指していた
家から学校までの距離が遠いわけではない。むしろ夜俺が寮からサムにパシられて
コンビニに行った際に遭遇する位には近い方やと思う
まぁでも…
いつも寮での朝だと、基本同室のサムとどちらかが寝坊をしたりなんだりで揉めて、そのまま忙しなく朝飯を食って
スナに急かされる形で急いで朝練に向かう
今日はなんだか時間の流れがゆっくりに感じる…
チクッタクッ
チクッタクッ
周囲を見渡すと相変わらず質素で生活感のない部屋
強いて目立つものといえばサバゲーの装備類が一番目立っている為
”そういう類の人”の部屋と言われれば納得していしまう。あとは楽器くらいか...
でもそこにはもう以前のような”不安”は感じず
むしろ..
ええなぁ。たまにはこういうのも。いつかはこれが当たり前になるんかなぁ…
家に帰ったら当たり前のようにあいつが居るの…何かええなぁ
ガチャ
俺が先のことまで色々妄想を膨らませていると、リビングの扉が開き
今まさに想像の中で『おかえり』とかなんとか言っていたそいつが
ついでに着替えたのか制服を着ていつでも出れるという状態で入って来た
ホンマに10分そこらで上がってきたんやけど…
妄想の中のそいつは髪がもう少し長く、今よりもう少し大人の女性という感じがしていた
ボブとかも、似合うと思うんやけどなぁ。夏休みくらいの…
どこまでもコイツは自分を曲げへんなぁ。
俺がそう言うとそいつは少し考える素振りをしてこういった
ウルフっちゅうのもよぉわからんけど、まぁええか
そういってリビングに戻ってきたそいつと入れ替わるように浴室へと向かい
ガチャ
正直昨日みたいなことをするのなら、金曜とか次の日部活オフの日のほうが都合ええんやけど…
まぁ俺も所謂運動部なわけで、こいつの一人や二人抱くくらい何とでもない
けどそんなことよりも何よりも、起きたら当たり前にこいつが横に居ることとか
当たり前に自分の分の弁当も朝飯も作って一緒に食ってることとか
歯磨きながら朝からしょうもない喧嘩して、当たり前のように同じ家から学校に向かうこととか…
そういうんが何か嬉しいんや。
まぁそんなに急がなくても今日はだいぶ余裕を持って出てきたから遅れることはまずないだろう
俺たちの学校、つまり稲荷崎高校は来月体育祭が控えている
今日あたりにはそろそろLHRの時間を使って
誰がなんの種目に出るかという種目決めが行われると思うが…
去年はサムたちのクラスに僅差で負けたんやっ!今年は絶対勝つで…!
俺がそいつにそう聞くと見計らったかのようなタイミングで片割れを筆頭にいつものメンツが揃った
..せっかく癒やしの空間やったのに。ぶっ壊しやがってこのクソサムっ💢
あぁもうっふざけんなや…俺の有意義な朝の時間が台無しや…
チームメートらが合流したおかげで一気にいつもの騒がしさが戻り、ギャクのつもりで言った訳ではない言葉にも笑われ
一気に落胆するのだった
そうや、フットサルあるやん…
コイツ…バカ強いんやなかったっけ..?バレーもそこそこ上手かった気ぃするけど…
悪口と人の名前を略して呼ぶなやっ!ちょうどよくなっとるのが余計腹立つわっ💢
ちゅーかそれ言うんやったらお前やって…
女子でフットサル経験者なんて、俺らのクラスじゃ平野くらいやろうがっ
そもそも、お前のレベルについてけるやつなんてあいつくらいしか居らんわ!
サムの言った言葉に思い切りそいつは顔を引きつらせていた
いやすごい顔しとるやん…そんな顔も出来るんやな、お前…
コイツ…俺も人のこと言えんしまぁ事実ではあるから何も言わんけど
お前も相当人格ポンコツやと思うで…?
俺が女子やったら嫌やわ…お前みたいな直球に図星ついてくるタイプ…
しかも何ら悪気ないみたいに言いよるし…
お前も多分こっち側やぞ…?
あかんあかん…沸点切れて関西弁出とるって!!
コイツの関西弁レアやけどっ!レアやけど出るときって大抵ろくな理由やないから嫌やねんっ!
グイッ
そう一度そいつを落ち着かせようと声を掛けると思い切り胸ぐらを掴まれた
怖いてっ!!どこのヤンキーなんっ!?やめぇや!!猫の威嚇どころやないでっ!?
ちょっ誰か助けっ..
今すぐ昨日みたいにしてやってもええんぞ?💢
今はこいつ等と居るからってしれっとしとるけど…思い出させたろうか?
そう思い胸倉を掴まれていることで至近距離にあったそいつの顔を掴んで唇を塞いだ
グイッ
お前が悪いんやで…あなたの下の名前?
そこにアランくんが来たということに気づかず、俺はそいつの脱力し始めた腰を引き寄せて持ち
制止しようと俺の名前を呼ぼうと開いた口に舌を突っ込んだ
グイッグイッ
俺がそいつの口内を舌で遊んでいると、突然そいつは敵いもしない力で抵抗し始めた
何やねん…大人しくしぃや
俺がそいつの抵抗を無視して続けて耳元も弄り始めると
今度は近くにいたあいつらに助けを求め始めた
なんやホンマに…ほんまになんかあったん___
もしかしたら本当に何かあったのかもしれないと(誰か来たとか)思い一度そいつを離そうとした時
後ろから思い切り誰かに蹴っ飛ばされた
兄貴…?ちょまって…?兄貴って…まさか
タッタッタ
ギュ
北さんの説教中、そいつはずっと北さんに引っ付いていて…
分かっとるけど…別に。お前にとって北さんは"兄貴"みたいなもんやって
そういうんやないって分かっとるけど..
いや…だから、その...
反省はしている。しているからその..ホールドをやめてほしい…
グイッ
北さん..ほんまにこいつの事..
え…まさか北さん全部知ってっ!?
スナぁぁぁっ!!!?あいつっ💢
あいつっ!ほんまに余計なことっ
俺は自他共に認めるそいつにとっての"兄貴"である北さんに
今までの事をすべてチクっていたそいつの"過保護な幼馴染"に向けて出せるだけの殺意をありったけ向けていると
まだ話は終わっとらんという圧が乗った北さんの呼び掛けに我に返った
北さんは一つため息をつくと、腕の中で匿っていたそいつをようやく解放して俺の方へ向けてそいつの背中を軽く押した
二人『…はい。す(み)んませんでした』
『スナぁぁぁぁっ!!あとで覚えときぃぃ!!』
「えっ痛っ!?ちょっと..いきなり何すんのさ」
「自業自得やで"人格ポンコツ厶"」
『お前のせいで余計に怒られたんやからなっ!!サムっ!ええ加減にその呼び方やめろやっ!!💢』
「治…気に入ったんやな(笑)その呼び名」
「だってまんまやん。流石あなたの下の名前やわ」
「当たり前でしょ。逆に知ってて俺が言わないとでも思ってたの?💢」
「侑〜、喧嘩しとらんでさっさとアップしてきぃ〜」
『なっアランくんまでっ!!分かっとるわ!!』
グイッ
二人『ナイショ(やな)(笑)』
『はいっ』
ナイッサァー
キュッ
キュッ
バンッ
キュッ
キュッ
キュッ
キュッ
バンッ
ナイスキーッ
『…治、詰め甘いで』
「ハァ…ハァ…すんません..」
1番..いい席で…
『一番前で、応援したる(笑)』
家族からの愛なんて..知らないでこの歳まで生きてきたけど
血の繋がりなんてなくてもいいのなら
ココロが..暖かくなるな
何て良い"兄"を持ったんだろう…侑に対する"好き"とはまた違った形をしているが
ギュ~
私は丁度いいタイミングで監督の元へ来たその人に思い切り抱きついた
ギュ
あぁ…ほんとにこの人は。誰かといて”安心する”って、”絶対大丈夫だ”と思わせてくれる
そんな存在…。今まで私にとって”兄貴”とは、何か言えば『メリットは?』と返ってくる”利用関係”でしかなく
都合の良いときだけ優しくされた。そんな、”血の繋がり”だけの建前で作られた”兄妹”
けど北さんは…何も知らないのに全て肯定して受け入れてくれた…
怒ってくれた。勝手に”兄”だと思っても良いと..”妹”のようだと頭を撫でて言ってくれた
侑とは違った意味で北さんのことは心から…
”大好きだ”
血の繋がりなんかなくても、そこにある気持ちが”本物”なら
それが”ホンモノ”になる。目に見えないものに正解なんてないんだ。
これが私にとっての”正解”だ。私にとっての兄は血の繋がりのあるアイツではなく
この人だ
自分のほうが、ずっと前から知っているのに
自覚したのは再会してからだとしても、自分のほうが多分ずっと…アイツのこと…好きだったのに
何も知らない侑にあっという間に取られてしまった…
それ以前から、幼馴染だからということがあってか、昔と同じように気づけばすぐ隣りにいた
”絶対的信頼”…この関係以上になれないと分かってもなお捨てきれないというのに
今度はその関係に”兄妹”みたいだと言うのか…
多分一生..引きづるのだろう。お前が大切なことはずっと変わりないだろうから…
くそっ。らしくもない..。
あいつの中の気持ちに気づかせたのも、今の関係のままでもいいからと言ったのも
全部自分なのにっ
『倫っ!(笑)』
お前のその…俺に対する"絶対的信頼"どうにかしろよ…
振られてもなお、幼馴染の、今の関係を崩したくないと縋り付いたのは自分だ
分かってはいる。自業自得だと..。こんなになるなら、突き放してくれと言えばよかったのだと
でもあなたの下の名前だしなぁ…
ほら..やっぱりね。酷いやつだよ..お前
ギュ~
お前が侑の彼女になろうが、北さんの妹になろうが…結局は離してくれないんだよ…
だから俺も、離したくないって言ったら…駄目?
ギュ~
自分がコイツのことをエスパー並みに分かってしまうのと同様
こいつも俺の考えている事など容易くわかるようで
なら..尚更やめろよ..そういうの。赤木さんの言うとおり、可笑しいんだよ、俺らの距離感…ただの幼馴染なのに
本当なら離したくないけど…。でもこうでもしなきゃ変われないでしょ…
お前も…俺も。お前にはもう、侑が居るんだから…
俺はお前じゃないと無理だけど…お前は、
あなたの下の名前は…俺じゃなくても…
パシッ
グイッ
色々事情があったのは分かる。けど先に自分たちのもとから居なくなり、その上連絡すら取れなくなったのはこいつだ
お前が先に..居なくなったんだろ。今も…昔も…
そういってそいつは力なく俺の方へと項垂れてきた
ーーーーーーーーーーーーーーー
~回想~
小学生の頃
帰り道~
あなたの下の名前『私らは何処に行っても、ずっと一緒だな!』
自分『..相変わらず凄い事言うよね』
玲奈『何それ(笑)そんなの無理に…』
あなたの下の名前『距離的なことは無理でも、"ココ”はずっと一緒って言えば一緒だ!(笑)』
玲奈『…かっこいい事言うねぇ?じゃあそっち行っても忘れないでよ?私達の事!』
あなたの下の名前『当たり前じゃんっ!』
”ずっと、ココロは一緒だ"
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あの頃の俺には、到底理解のできないことであったが…今思えばあの言葉があったから
こいつとまた再会することができたのかもしれない
"ずっと、一緒”…あのとき俺そんな事言ってたっけ…?そん時からもう、コイツの事好きだったのかな…
俺が呆けているとそいつはいきなり顔を上げ、俺の足を跨ぐように覆いかぶさってきた
…この姿勢は、流石にやばい..
この目は本気だ…。
まぁこいつくらい彼奴等と比べて力が無いって言われる俺でも退かすことくらい簡単なんだけど…
ナデナデ
そういって俺は片手をそいつの目元に持っていった
そう言われてもな…部活あるんだけど俺…
休憩時間中抜けてきただけだし…
ダメだなこれ…。いざとなったら無理やり退かすか…
彼氏を何だと思ってるんだ..こいつ…
この状況みられたら面倒くさいの、俺なんだけど…
この気持ちは、多分一生引きづるのだろう…
それは何故か。
それは…
それは…多分一生、こいつには勝てないからで…
お前が…侑が居ても変わらないというのなら
ずっと、一緒だと…あの日約束したから…
あの日からずっと変わらないこの想いを背負って..俺はずっと、
-体育館side-
一部始終を体育館にいたバレー部のメンバーに見られていたということも知らず
ポンッ
本当に、どこまでも真っ直ぐなやつだな…
俺も…少しは頑張ってみようかな..?
侑のだけじゃなくてさ…どうせなら"俺のバレー"も、見続けててよ…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。