-あなたの下の名前チームside-
ヒュ~🍃
ひとまずは向こうも引いたみたいだな…なら一回
”殲滅“かあるいは…
多分こっちが気付いているように、団長も気付いていると思う。だとしたらきっと守りに入るより殲滅しに来る…なら陣地を攻めた方が都合がいい
ササッ
もしかして誰か..
さっき言ってたやつ…あぁ。なるほど
結とは合流できたな。さっき言ってたやつ…それは
今の状況、人数的にはこちらのほうが有利だ。この状況で流石に別行動なんていう馬鹿な真似はしてこないだろうし…
北さんがもし誰かの気配を感じたのならそれはつまり…
初心者だからといってさっきの治の動きはなかなかのものだった。
例え守備だとしてもさっきから妙なのだ。侑の気配が全く感じなくなった。普段のあの喧しさは何処へ行ったと言うんだ…
ダダダッ
っ、今…北さんの方から銃声聞こえたっ
もし北さんの方に突っ込んでったのが団長なら…流石にヤバい。がどっちにしろ、北さんの離脱のタイミングはナイスだったなっ
さぁ…第2ラウンド開始だ
チャキッ…北さんが気を引いている間に一瞬でも後ろに回り込めれば..刺せる
侑はひとまず任せるよ、結っ
サササッ
パンッパンッ
ダダダダダダッ
パンッパンッ
さすが北さん…撃つ以外の選択肢で時間稼ぎをしてくれている
私には気付いたみたいだけど、多分もうそろ限界だ。それに…
ガチャッ
ダダダダダダッ
やばいっもう悠長にしている暇は
パンッ
ヒュ~🍃
まさかあそこでサブ出してくるとは…あの人もなかなか読めない人だ
もし北さんが撃たれる前に飛び出して行っていたら…いや。むしろ本当はそれが狙いだったのだろう
都合よく出て来てくれたらミニガンで一掃…危ないところだった
結の方も、一筋縄では行かなさそうだな
とりあえず今は…
もう一つのメイン..ナイフと
ガチャッ
カチッ
サササッ
パンッパンッ
パンッ
パンッパンッ
シュッシュッ
ダダダダダダッ
ダダダダダッ..
ガシッ
シュッ
カーッ
カーッ
バサバサッ
侑と一騎打ち…順当通りと言えばそうだが
“カレカノ同士で“…?
“侑なりの殺り方で“…とは何だ?一体…何を企んでいる?
-フィールド外-
~フィールド内~
-侑side-
ヒュ~🍃
“撃たないで勝つ方法“…あるにはあるんやけど..
俺の作戦はこうや。
まず、警戒してないフリをして敢えて隙をみせる。その方が集中できるしあいつの気配も察知しやすい気ぃするから
一応これでも春高っちゅう大事な試合控えとるし、怪我したふりでもしとけば多分向こうからよってくる思うけど…
それしたら後が色々怖いしな…
多分それはないやろ。あなたの下の名前、何だかんだ優しぃやつやしな?
何でも他人優先のお前が、初心者相手にそんな卑怯な真似するわけない。来るなら正面突破やろ
『気づいたら相手は踊らされとるっちゅうことがよぉあるんや…』
ヒュ~🍃
“踊らされる“のはどっちやろうな?
もう近くにおるんやろ、あなたの下の名前…?あんま司令塔のこと舐めへん方がええで…?
ここに来た時点でもう..お前の負けや。
サササッ
居った…
ヒュ~🍃
ザザッ
-あなたの下の名前side-
ヒュ~🍃
私がフラグを取りに敵陣地が見える位置まで来ると、そこには無防備にも程があるほどに
隙だらけな状態でまるで仮眠を取っているかの様に木にもたれ掛かっている侑がいた
あれは..どっちだ?というか本当に…
あの負けず嫌いな侑が…?いや、ないな。侑ならむしろこの状況…逆に燃えるタイプだろう
けどまぁどっちみち一騎打ちならスピード勝負だ…さっきみたいに本気で行ってもいいが
春高前に正セッターを怪我させるわけにもいかないし、少しでもその可能性があるなら不意打ちは避けるべきだろう
なら正当法ではないけどここは…
行くよ..侑っ…
ガシッ
私が侑に構わずフラグまで一直線に正面突破しようと茂みの影から飛び出すと
先程までこちらの気配に気付いている素振りもなく、むしろ隙だらけでもう諦めて仮眠でも取っているかのようにすら見えていた侑が
さも当然かのように私が飛び出したタイミングと同時に行く道を塞ぐように正面に現れ
ナイフを持っていた腕を思い切り掴み上げられた
っ…!?いつからっさっきのはやっぱり…
グイッ
先に存在に気づかれ、ましてやそのまま片腕を抑え上げられ先に迫られている今のこの状況は、予想外すぎるといえばそうなんだが…
もしもナイフが使えない状況になった時のため、ハンドガンも持ってはいる。
だから今この状況を脱する為には侑の言う通りさっさとハンドガンで殲滅に切り替えたほうが良い
言われなくともそのつもりだ。だが元から団長もそうだが本気で殺るつもりなんか無い。団長が北さんを撃った時も、本人ではなくホルダーを狙って撃っていた
初心者相手、ましてや大事な試合を控えた1選手相手に怪我させずに終わらせる為だ。
“安全第一“その為に元から一騎打ちとなろうと本人に直に当てるつもりなどない。
こいつ…分かってて言ってるな?自分の立場を上手く使ってきてる。この状況でなければ狙えたのに…
掴み上げられているのは片腕だけ、これくらいなら簡単に抜け出せる。
そう思い反対の手をハンドガンがあるホルダーに持っていきながら体を捻って抜け出そうとすると、それを阻止するかのように引き寄せられた
ギュ~ッ
降参…?ここまできて、武器も使われずに追い詰められて降参する?
そんなの…
クイッ
ここまできて、北さんも結も先に殺られて…残すは自分一人、侑一人だけなのに
こんなありえない状況で降参するなんてあってたまるかっ
そう思い何故か余裕そうな侑に対してもういっそバレーに直接影響でなければ撃ってしまってもいいかと思った時
着けていたガスマスクを口元から外された
何..してんだこいつ…何、するつもり..
フィールド内で、ましてやゲーム中に顔の装備を外すのはバカがすることだ。
腕や足ならまだしも、顔面に当たって青あざ作りたい人なんていないだろ
プニプニッ
そんなありえない行動をしだした侑は、マスクを取るなり人の頬をつねったり触ったりなどして遊び始めた
フサッ
そういって今度は無線用ヘッドホンがついた帽子までもを取られた
トンッ
やば…木が…
正面ばかり気にしすぎて後ろの状況を見ていなかったため、気づけば真後ろには先程まで侑がもたれ掛かっていた木があった
もう本当に正面突破するしか無理だな…侑が何をしたいかは置いといてとりあえずこの状況をどうにかしなければ…降参するのだけは嫌だ
私がそう思いある意味覚悟を決めたとき、偶々かあるいは意図的か、後ろに逃げれない状況に追い詰めて勝利を確信したのか
侑は余裕そうな笑みをしながらこういった
確かに…そんな事言っていた気もするけど。何させるつもりなんだ
カチャッ
脱がす…?何言ってるのこいつ…
別にこの迷彩服を脱がされたところで中に何も着ていないという訳もないので
恥ずかしい展開になることはないと思うが…そういう話ではない。
私は“装備を取る“といって平然と服の下に手を突っ込んできた侑に限界が来て
ついに片手に抑えていたハンドガンを侑の胸元に押し当てた
もういい…侑倒して殲滅で勝つことにしよう。手先にさえ当てなければいい話だろ
全部取られる前に殺ってやる
グイッ
侑は..何故かいつも自信に満ちている。それは本気で向き合っているからで
バレーに対する姿勢を見ていればわかる。けど初めて参戦したサバゲーで、
この圧倒的不利な状況下でも…どうしてそんなに余裕そうな、自分が殺られることは“絶対“にないと言い切るような顔をしている?
偶々かもしれないが、私は今自分に覆いかぶさるようにしている侑のちょうど心臓辺りに銃口を当てている
何でそんな、平気な顔している?遊びだとしても一応設定上撃たれたら…
“死ぬ“。それがこの、模擬戦争ごっこ。いわゆる“サバイバルゲーム“というものだ。そこに存在する殺気も策略も全ては本物。
ただ唯一、“撃たれても実際には死なない“というだけなのだ。誰かに狙われ撃たれたら、少なくとも一瞬“死んだ感じ“はする。
なのにこいつは…さっきなんて自分から押し当ててきた。
私が…侑のことを撃てない..?ゲームだけじゃなく本物の戦場だったとしても…?
“安全第一に“、試合を控えた大事な正セッターを…選手らに怪我させてはいけないから…
だから撃たない。あるいは直には狙わない。そう決めてゲームに臨んでいた
だから殲滅ではなくあえてフラグ取る方を選んだのもある。
けど…私は相手が“侑だから“撃てない、のか..?そんなもの、実際の戦場なら尚更甘えにしかならないだろ
けどもし…
カチャッ
流石にこの時代では到底ありえない、あって映画やフィクションの中でしか起こらないような突拍子のない出来事に対する行動までも
当てられてしまうのなら、もうこのあとどう頑張ってもこの状況は覆らないだろう
サバゲーは頭脳戦でもあるが、同時に心理戦でもあるのだ…
最後の一人に侑というのは読みどおりではあったが、最悪だったのかもしれない
団長が言っていた“侑なりの殺り方“とはこういう事だったのか…
カチャッ
そう言いながら侑はもう一度私にハンドガンを握らせて自分の手でそれを私の耳上のとこまで持っていき
私が自分で自分の頭に銃口を押し当てるような姿勢にした
あぁ..流石だな。分かってるじゃん。そうだね、そう思うと確かに私は貴方の事を撃てないのかもしれない
そう言って私からハンドガンを取り上げた侑の表情は、装備越しからでも分かるくらいに歪んでいた
グイッ
そう言って侑は装備越しからでも不機嫌が伺える口調で喋りながら私の手を掴み、フィールド外へと向かう方向へと引っ張っていった
私が引っ張られる形で侑の後ろを歩いていると、急に立ち止まった侑の背に思いきり衝突した
は…?今なんて…
グイッ
私が反論しようとすると、顔ごとボールを掴むかのように両頬を掴まれた
いや…痛い
団長に…始まる前にすでに言ってある…だと…?
最初からそれが目的だったなっ!?
やっぱ不意打ちで後ろから刺しておくんだったっ
先に逃げるようにフィールド外へと出ていった侑と、何かで盛り上がっているバレー部一同を横目に一人和んでいるおっさんに私は声をかけた
ガシッ
いや…どんどん話が大きくなってる気がする。誰がいつ辞めるなどといった?
そ、卒業までって言ったかっ!?どうせ数週間とか、春高までとかそれくらいかと思ってた…
というかそれだと遠回しに行かせないつもりじゃないか..
団長も”やっぱ”って何だっ!こうなることが分かってて受け入れたというのかっ!?あんたも”そっち側”かっ
プツッ
そんなこと言われなくても分かってる。前線張っても演奏に影響が出る範囲の怪我さえしなければ問題ないだろ
今までだってそうだった。気を付けて戦って今までだって何とかしてきたんだ。これからだって…当たり前に続けていけると思っていたのにっ
卒業までとか…そんなのもう絶対に参加できないじゃないか…。北さんまで、そっち側なのかよ…
侑の言うことも北さんの言うことも何もかも…全て自分のことを想って言ってくれていることだと、その上正論すぎて何も言い返せないことに一周回って悲しくなってきた
私は本当に…サバゲー、好きなのかな…何も、言い返せない…本当にこのまま…
ギュッ
タッタッタッタッ
倫が何かを察して治に何か言ったのか、撃ちたりなかった治のただの気まぐれか
私は治に引っ張られるようにして、ちゃんとした返事もしないままその場を後にした
-侑side-
ほんまにそうや。正直バンドの演奏がーとかそういうことまで考えていったわけやないけど…
あくまで俺個人として嫌なだけであって、そこまで深くは考えとらんかった。
けどよく考えたらそうやん。流石北さんや!こいつがサバゲー中に腕とか手首を怪我したら?LIVE出れへんやん。ドラムも、ついでにギターも弾けへん
リーダーがいないバンド何かLIVEする意味あるんか?こいつの参謀代わりなら団長さんが居る
けどバンド内でのこいつの代わりなんて他に居らんやろ
ギュッ
北さんの正論パンチを喰らったあとそいつは、苦虫を噛み潰したような顔をしながら何も言わずスナの服を掴んでいた
こいつがスナに頼るときは大抵弱っている時だ。今の北さんの正論パンチは相当来たんだろう
何やねん、その顔…。お前がどれだけサバゲー好きなんかくらい俺だって分かっとるわ
せやけど嫌なもんは嫌なんや、たまには俺の言うこと素直に聞けや
タッタッタッタッ
あいつ…サムのせいやけど何も言わへんでどっか行ったで..
せめて何か言ってからにせぇや。
あぁ、そうやった。何か呼ばれとったんやった
というか普通にいつも譲らなくてもいいはずなんだが、さすが幼馴染ということか大抵こいつの言う事は的確で、いつも何だかんだ俺が折れている
だが今回ばかりはあの北さんもこっち側や。折れる必要もないし、そもそも間違ったこと言っとらんし譲る必要もない
何か向こうは向こうで身内みたいに和んどるし…
なんでそうなるんっ!?こいつの言うことやからホンマにそうなる気がして嫌なんやけど…
けど今回ばかりは折れるわけにはいかへんねんっ!約束は約束や、守ってもらわんと勝った意味がないやろっ!
いや…それは……俺やって頑張れば…頑張れば…無視くらい…余裕で…でき…
っ…やっぱこいつには敵わへん…けど折れるわけやないからなっっ
何がおもろいんやっ!一大事や一大事っ!!
サムのことは別に今どーでもええんや、アイツのことよりも今は俺のメンタルが持たへんことが問題やっ
あなたの下の名前が戻ってくる前になんとかせな違う意味で死ぬっ
それからスナが北さんたちに事の経緯を説明するとそれぞれ納得したような返答が返ってきた
そう、北さんの言うとおり今日は初心者である俺らとのチーム戦というのもあったからか
そこまで過激なゲームにもならず、怪我をするような場面もなかった
あいつ自身の身のこなしがすごいというのもあるにはあるんやけど…けど普段なら
”ゾンビ相手の時”…ゾンビって確か..
良い意味でも悪い意味でも顔を知られとるて…
確かに良い意味でなら、”強い”とか”頼れる参謀”とか…何かそういうのやろうけど
悪い意味でなら…
それなら尚更続けるのは反対や。
ゾンビ行為とかいう悪意あるもののせいなら、あん時ありえへんとこにまで青あざ出来とったことの辻褄も合う
こいつは俺の意見に反対なわけやないって言っとった。今の聞いて尚更そうやろ
確かにゲームにさえ参加しなければいい話だ。何も暗にサバゲー自体辞めろとまで言う必要ないやん…
俺も着いてくれば変に絡まれたとしても、守れるし..それでええやんっ!
せやっ、あいつ悪い意味でも顔広いんやった!サムおっても絡まれたらあいつ絶対乗るやんっ..しかも一緒におるのサムやしっ…
ゾンビ…まだサムがおっただけマシやったみたいやな..けど
何やら目を離した隙に案の定売られた喧嘩を見事に買いゲームをおっぱじめていたという話を聞き
先程の妥協策も話さなければならない上急いで様子を見にそちらへ向かった
ーーーーーーーーー
-治side-
パンッパンッ
ダダダダダダッ
スナに言われてあの場から連れ出しはしたけど、撃ちたりなかったから試射しに行きたかったっちゅーのも本音や
ただ撃ってるだけも楽しいけど、やっぱスリルとかそういうんを求めとるんかな…?
さっきのあなたの下の名前、LIVEの時みたいに活き活きしとったし。
それに比べてツムと北さんに遠回しにサバゲー辞めろって言われたあとのあなたの下の名前は何か…
グイッ
何や、彼奴等…もしかしてさっき団長さんが言うてたやつか..?
グイッ
なんやこいつ…人のことジロジロ見やがって。何や、気に食わへん
一戦て…まさかゲームやるつもりなん?
すまんツム…けど絶対守るから一戦だけ許してや。
ルールを、破る…?それって…
毎回?毎回そんなの相手にしとるんか…?ツム…お前知っててあぁいう事言ってたん?
どっちにしろ撃つだけならまだしも
こいつがある意味”強者”である限り、あいつも守りたくても守りきれへんやろ
一回せめてゲームからだけでも離れさせな。
ゾンビしてくるんなら俺も当たったからと言ってわざわざ外出る必要ないしな。どうせ戦い方もセコいんやろ。胸くそ悪い…
そういったあなたの下の名前が纏う空気にいつもの暖かさはそこにはなく、凍えるような冷たさを放っていた。
感情的になるなら..あくまで”冷酷”に…
ーーーーーーーーーーーーーーー
どうも作者😑ですっ。このサバゲーの話は完全に、もう”完全に”自己満足の、もう私にしかもろ需要ないだろっなんやねんその武器っ!っていう話ですが…まぁ、脱線ですはい。
どうしてもバレー以外のことで勝負している、男子高校生している稲荷崎が(特に北さん)が書きたかったんです。許してください…
~補足~
妬みや逆恨み、そういうのってありますよね。多分きっと宮兄弟もそういうのあったんじゃないかって思います(アニメの回想シーンでもちらっとありましたが…”ツム、嫌われとるで?”てやつ)。けど本気で向き合っているからこそ気にならない。夢主にとってはサバゲーや楽器がそれに当たるという話です。
だから団長も北さんも無理には止めない。
けど本気で向き合っているからこそ侑はこのままだと守りきれないと思い止める。夢主も侑の気持ちはわかってはいるつもりでも好きなものは好きなんです。それもわかって欲しいという..
まぁそういうことを先に察知して教えるのはスナなんですけどね(笑)どっちの事もよく知るスナだからこその役割です。大体夢主優先ですけど…侑はついで的な。
次でこのサバゲー編は終わりです!
その後結構飛ばしていきます。冬休み前→冬休み(ユースとか)→春高→3年になってから…という感じで進めていこうと考えています。
では…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。