キーンコーンカーンコーン
-昼休み-
ガヤガヤ
ガヤガヤ
バタバタバタ
午前中の授業が終わり、チャイムが鳴るのと同時に侑が離れた席から自分たちの席の方への飛んできて
あなたの下の名前に昼の確認をするとさっさと学食へと連れて行ってしまった
昼休みに入った直後早々に学食へ向かうために出ていった(片方は半拉致されてった)二人をみて
自分たちもついていこうと話していたところにちょうど隣も終わったのか美琴達が声をかけてきた
話しながら学食へ向かい、各々好きなものを選び目的の人物らを探した
そういってあなたの下の名前が侑のジャージを脱ごうとしたとき
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~昨日~
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ガタンッ!
唯一その場にいた二人だけ、その動きを咄嗟に止めた
侑とスナの必死な静止に疑問を浮かべながらも、埒が明かないからかめんどくさくなった為か
当の本人は脱ぐために動かそうとしていた手をおろした
侑があなたの下の名前に抱く好意についてはよく聞いていたし
みていても馬鹿でも分かるくらいには分かりやすかった
しかしその反対は言われるまで全く気付かないほどに”普通”だったのだ
いつからあなたの下の名前の中で侑が”特別な存在”になったのかは分からないが
まさか本人まで、何処が好きだとかそういう肝心な所を知らないとは…
そういってあなたの下の名前は真剣な顔をして考える素振りをした
シーン
そのあまりに真っ直ぐで、純粋すぎる理由に
その場は一度静まり返った
-侑side-
ギュ~
『”離れたくないな”って思ったのは…侑だったってだけ』
ホンマに、コイツは…
少しでも不安に思った自分が馬鹿みたいだ。あなたの下の名前は良くも悪くも、”本当に思ったこと”しか言わない
意味のないことは、言葉にしないやつだ
だからこれは、本当に”そう思っている”ということで
真っ直ぐに片割れの瞳を捉え、ただ事実を語るように話すそいつに
今更ながら、とんでもない奴を好いてしまったと思うと同時にあなたの下の名前の直球の告白に自分が恥ずかしくなり
恥ずかしさを隠すようにそいつを抱き寄せて顔を埋めた
いやそれは俺やろ…。もうツッコム気力も残っとらんわ…
たしかに今はこの場でこいつが1番カッコええ。それはそうや…俺でも勝てへんわこんな真っ直ぐ過ぎるやつ
こいつが女子にもモテる理由…なんとなく分かったわ
もう引っ付いても、何も言って来ぉへんのな
好きな奴から自分の匂いすんの…何かええな
首も身体も…相変わらずほっそいなぁ。髪短いのも、これはこれでええかもな
あぁ、何か……
腹…減ってきたなぁ?
いつも俺だけお預けを食らって、それ以上のことができずに終わってしまう
自分の匂いと自分にも纏わりついているコイツの匂いが鼻をかすめ
それは、今の自分の欲を湧き立てるのには十分すぎるものだった
ガシッガシ
俺が機嫌よくそういうと思い切り誰かにケツを蹴られた
そう、コイツはいつも何かあるとことある毎に先に脚が出るのだ
武器扱えて、格闘できてって…なんやバケモンかコイツっ!
いやでも単純なパワーなら勝てるしな?ただ痛いとこを的確に当ててくるだけであって
力自体はそこまで強くはないし、少なくとも前にサムに飛び蹴りされた時よりはマシや
なんや無駄に蹴られてもうたけど、一応泊まる許可は得た(半ば強制的にだが)
過去数回俺だけお預け食らったままなんや
覚悟しときぃ、あなたの下の名前?
これで今日一日はたとえ席が端から端やったとしても乗り切れるなと思いながら
自分の座っていた位置のすぐ横にある下げ口に食べ終わったトレーを下げる為に一度席を外した
席に戻るとサムにそう意味深なことを言われて、差された方を見ると
スナがあなたの下の名前の口に何かを入れていた。おまけにそいつは無防備に目なんか瞑って待ちの姿勢やった
あげかたっちゅうもんを知らんのかっ!!
普通に手渡しであげればええやろぉが!わざわざあ~んすんなやっ!
わざとやなっ!?わざとやろ!!お前、自分がこうしたらあなたの下の名前はこうするって分かっとるもんな!?
こいつ…ずっとマウント取ってくるつもりなん?いや…勝てへんて。強すぎやんこいつ…
つかそのドヤ顔やめぇやっ!!
今なんかスナのやつ"眠たそう"とか言わんかったか?
こんなとこであんな質の悪い癖出されたらたまったもんやないわ…
ちゅーかコイツさっきからどこ見て話しとんねんっ!!俺はこっちやっ💢反対や反対!!
そう思い、先程から自分がいる方向とは真逆の方向を見て話しているそいつの顔を
無理やり自分の方へ向き直させ、そのまま半分開いていた口に舌を押入れた
そしてそのまま…
おっまだあるやん
あなたの下の名前が大事そうに味わって舐めていた飴を奪った
何やこの飴…むっちゃ甘いやんけ。こいつ甘いもん好きなんか?
『え、今の見た?』
『あそこって付き合っとるん?』
『いつからなん?』
『つか何、見せつけとん?(笑)』
『えぇ、俺地味に柊さん狙ってたんに…』
『でも侑に落ちるんやったら案外…』
ガヤガヤ
ガヤガヤ
治に言われてようやっと我に返った
やってしもうた…。だがやってしまったことは変えることはできず、周囲で今のを目撃していた人らは好き放題言っている
どないしよ…この際はっきり宣言でもしてしまうか?
そう思いあなたの下の名前の方を見ると、そいつは怒っているような、恥ずかしがっているような
複雑な表情をしていた
俺がやりすぎたと謝るため声をかけようとすると、あなたの下の名前は近くにいたサムの影に行ってしまった
『あぁ〜(笑)ありゃ侑が悪いやつか』
『ここどこやと思っとるんや〜(笑)』
『彼処二人くっつくと目の保養やな..』
『あいつから行ったってことなん?』
『それはそれで__』
二人のおかげでなんとかその場の空気は動き始めた
神崎はそう言い放ってさっさと行ってしまった
前までの..あなたの下の名前やったら…?
確かに前までのあいつやったらそもそもの話、貸してなんて言ってこんかった
何だかんだ貸していることは多かったように思うが、いつも自分で勝手に貸していた
さっきの、嫌ってわけじゃ…なかったん…?
たとえ偶々近くにいただけだったとしても
それでもわざわざあいつんとこやなくてええやろ…
ガシッ
唐突な片割れの爆弾発言に怒りを覚え、勢いよくそいつの胸ぐらを掴んだ
何、言っとるんやコイツっ
そんなん…お前に言われなくてもわかっとるわ
ちゅーか堂々とってなんやねん…
キーンコーンカーンコーン
俺が思っとることと違う..
あいつは..何を考えてたんや。けど、次面と向かって顔を合わせるときには、何も無かったかのようにしれっとした顔しとるんやろうな…
スナに意味深なことを言われて考え込んでいると予冷が鳴った
ポコッ
後で聞いてみるしかあらへんか…
今更考えたって無駄やし
せやからあいつら先行ったんかっ!?
あの先生めんどくさいねんっ!!言い訳も何も聞いてくれへんねんっ!!
しかもなぜか何かしらにつけて『北に言うで?』って脅してくるから更にめんどいんやっ
ガラッ(教室のドアを開ける音)
もう誰も居ないやんっ!?誰かは残っとってくれてもええやろっ!!揃いも揃って薄情もんかっ!!
使う教科書類など今探している時間もないため適当に筆記用具だけを持ち
今度は授業のある教室へ向かってダッシュした
一方
-あなたの下の名前side-
倫から飴をもらい、初めて食べるような味だったため
言われたとおり目を閉じてしっかり味わってなんの種類か考えていると
向いていた方向と反対側にいた侑に無理やり顔を捕まれ
そのまま入ったきた侑の舌が口内を弄るようにして飴を取っていった
でもあの顔は…
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クチュッ…
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学校という場であれをされて怒っているのは確かだ。
けどどちらかというと莉の言うとおり..恥ずかしさのほうが勝っていたのではないかと”思う"
自分で言うのもなんだが目に見えない"感情"というものに、"気持ち"というものに何かと理由や根拠をつけるのが苦手だ
そんなことしてもなんの意味も無いから。例えば"悲しい"出来事に対して"無関心"と認識してしまえばそれは"悲しく"ないのだ
たとえ"楽しい"と感じても本当にそれが正しい感情なのかは分からない。目に見えないものに"正解"なんてないと思う
だからさっきの侑の行動に対する自分の感情も、何が正しいのかが分からないでいる
"怒"なのか"哀"なのか、それとも"喜"なのか…
侑は…咄嗟にあんな態度を取ってしまった自分に、どの感情を抱いたのだろう
"怒"..かなぁ…。偶々近くにいたからだけど、治の影に隠れたのは事実だし…
放課後の部活に顔を出す以前に、席が離れたからといってクラスが一緒なのは変わりない為
どのみちこのあとも一日顔を合わせなければならない
しかもその上あの感じ本気で家に泊まるつもりだ…
どうしよっかなぁ。
私がそうこのあとも続く今日一日のことを考えていると、横から美琴が急に引っ付いてきた
うちのリーダーかわええな〜♪ギャップの塊やぁ〜(ナデナデ
そういって美琴はひっつきながら私の頭を撫で回してきた
何を言ってるんだ美琴は…全く。
でもこれは使えるんじゃないか?ゴメン美琴、ちょっとくらい仕返しさせて
キーンコーンカーンコーン
さっきのことは…とりあえず今は考えるのやめよう
授業受けてたら自然と忘れるだろう。あ、そういえばギター…家に無かったけど
どこ置いたのか聞くの忘れてたな。もし部室とかなら都合がいい。
どうせ待ってないとまた煩いだろうしギター触ってよう…
そう思いながら私達は午後の授業を受けるため教室へ向かった
~現在~
-移動教室-
この授業の先生は毎時間きちんと全員いるか確認するために出席を取るため
遅刻したら一発でアウトである。さらに出席を取ることは事前に知っているはずのため言い訳も通らないのである。
まぁ現に一人遅刻してるけどな…
いちいち小言を挟むから長いんだよ..たかが出席確認なのに
ガタッ
ウトウトしてついには軽く眠りに入ろうとしていた時、流れるように自分の出席確認の番が回ってきていて
先生が出した大声で反射で目が覚めた
あぶな..椅子から落ちるとこだったじゃん
ん〜何か落ち着く匂い…
よし..これで良い。ジャージのサイズが無駄に大きくて助かった
私は捲っていた袖口を全部おろして、両肘を付き、おろした身丈に合わない長い袖口で自分の顔を隠した
何って…
どうせこんな人がいっぱいいる所でなんて寝れないし、まず第一この謎のプレッシャーの中普通に寝れるわけがない
ただこの無駄な時間を有意義に使いたいだけだ
ダンッ
先生がその場に唯一侑が居ないことを認識した時、タイミング良く本人が息を切らしながら入ってきた
遅れてきた言い訳をしようとした侑に、問答無用で説教を開始しようとした先生に、大多数からブーイングが起こった
まぁ、皆早く帰りたいしね。さっきの男子はこの後の授業はサボることを宣言しているようなもんだな…
…次自習だしサボってもいいのか
なんだか侑がこちらをみてから一歩も動かず固まっている気がするが
そんなのは置いといて、
先生に紛らわしいからちゃんと着ろと言われたため、下ろしていた袖口を元の長さまで捲り上げた
袖口を直し終わり前を見ると、そこには先程まで固まっていた侑はおらず
その代わり横を見るとそいつはむくれ顔で隣の席に座っていた
謝らないとな..さっきのこと
タンッタンッタンッ…(板書の音)
よし、言うことは言った。あとはもう侑次第だな…
そう思いとりあえず授業を聞こうと意識を前に持っていった
グイッ
完全に意識を侑から一度そらして前へ持っていこうとしたのがバレたのか
ブカブカのジャージの裾を引っ張られ少し身体がそちらへと傾いた
ギュ
引っ張られた侑の方へ身体が傾き、結果的に引っ張った本人に体重を預け反対側の肩を押さえられよし掛かる状態となった
私はとりあえずその場で先程から何も言わずにただ黙って此方を観察している二人に助けを求めた
今一応授業中なんだけど…
正論だ。言っていることはごもっともなんだが…何かやけに
ほら怒られた..
てか何言ってるんだ…どう見ても一方的に絡まれてるだけだろ。私は何もしてないんだって
ガタッ
くそっ跳ね返ってバランス取れなっ…
クラスメート(あそこなんか…"尊い"特に柊さんが)
貧弱つったか..こいつっ
こいつ…
私は侑に掴まれている片手を軸に思い切り回し蹴りをお見舞いしてやった
なんか言ってるけど怒られた原因はあんただって、侑…
そういえば…
昨日あの後教室に置いていったのかと思ったら教室のどこにも置いていなかった
侑はこう見えて案外気が利く、もしかしたらと思っていたため聞いてみることにした
"似てる"。結が言ったのは恐らくケースについているストラップのことだろう
ギターケース単体だけではわざわざ本体を出して確認しなければ誰のものかまでは分からないだろうし
過去何度か、玲奈が一々持ってくるのも面倒だし
軽音部でもない自分が軽音部室に置いておくのもあれだしという理由で
倫と北さんに頼んでバレー部の部室にギターを置いていたことがあったのだ
本来ギターは私の担当ではないし、見分けるものがなければ玲奈のだと思っただろう
これでひとまず安心だな...暇だしギターやろう
アイツとも..蹴りつけないとな
きっとあのまま教室に置いて帰って誰かにいじられたりしたら嫌だとか色々考えてくれたのだろう
本当に、咄嗟の行動ほど気が利くやつだ
カキカキ…
ちゃんと、自分で蹴りつけないと前に進めないから
私もこの気持ちに、嘘はないから。
今度こそ、あんたの方ちゃんと向くから
待っててよ、侑
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!